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3. 日記1
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次に目を覚ました時、時刻は午前1時を過ぎていた。
私はソファから起き上がり、テレビを見た。
画面は歯磨き粉のコマーシャルだった。精悍な顔立ちの男が、真っ白な歯を煌めかせている。
私はテレビをぼんやりと眺めながら、残ったホットミルクを飲んだ。
ホットミルクは冷めきっていた。私はぐいと飲み干し、足をふらつかせてバスルームへ向かった。
シャワーを浴びた後、私はローテーブルの上に置かれた日記を手に取った。
15歳の時からつけている日記で、辞書のように分厚い。表面はすっかり古ぼけている。
24歳になった今、私は最初のページを振り返る。
冒頭には、『2015年 6月1日』と書かれており、私はその続きを読んだ。
『家のコピー機が壊れた。コピー枚数が多すぎるあまり、オーバーヒートしてしまったのだ。
冷却装置が稼働した。次の印刷まで10分かかる。待っている間に、ホットミルクを飲もう』
9年前の私が何をしたか、よく覚えている。
パソコンで本の感想を書き、300枚のコピー用紙を刷ったのだ。
昔から、本の感想を書くのが好きだった。タイピングを進めているうちに、いつの間にか膨大な枚数になったのだ。
学校の課題ではなく、単に書き溜めることが好きだった。
今はそのような習慣はないが、毎日日記を書くことは忘れなかった。
私は最新のページをめくり、ペンを手に取った。
『2024年 10月6日 午前1時半
昨晩、チャンネル8にて"NATEー謎の存在を語る"が放送された。
社会心理学者アンドリュー・カーライルは、NATEの噂について、根拠のないものとして否定。
さらに、噂が広がる原因を、人間の感情と知性の働きから説明した』
私はペンを止め、買いた文字をじっと見つめる。
少し考えてから、続きを書き始めた。
『NATEについては、カーライルの言う通り不明点が多い。
NATEとは何なのだろうか。私はそれをどう解釈すればいいのか、わからない。
専門家も気にかけている、謎の存在だ。カーライルの言うように、やはり単なる噂に過ぎないのだろうか。
彼はNATEを"目視できない"ものと言った。
捉えようのないものを扱うのは難しい。ウィルはNATEについて、どう思っているのだろう?
明日にでも訊いてみようか。彼なら何か知っているかもしれない』
ペンが止まり、日記に一区切りがつく。
私は日記をばたりと閉じ、息をついた。
書き終えた日記をローテーブルに置く。
その直後、隣に置かれたスマートフォンの画面が光る。
私はスマートフォンを覗き込み、通知を見た。
『今日は午後からで構わない。今晩の作業が遅くなりそうだ』
メッセージはウィルからのものだった。私は『了解です』と返信し、そのままスマートフォンを伏せた。
ローテーブルには、スマートフォンと分厚い日記が置かれている。その2つを眺めているうちに、再び眠気に誘われた。
私は部屋の明かりを消し、ソファに寝転がった。数分後に体が重くなり、夢も見ぬほどの深い眠りについた。
私はソファから起き上がり、テレビを見た。
画面は歯磨き粉のコマーシャルだった。精悍な顔立ちの男が、真っ白な歯を煌めかせている。
私はテレビをぼんやりと眺めながら、残ったホットミルクを飲んだ。
ホットミルクは冷めきっていた。私はぐいと飲み干し、足をふらつかせてバスルームへ向かった。
シャワーを浴びた後、私はローテーブルの上に置かれた日記を手に取った。
15歳の時からつけている日記で、辞書のように分厚い。表面はすっかり古ぼけている。
24歳になった今、私は最初のページを振り返る。
冒頭には、『2015年 6月1日』と書かれており、私はその続きを読んだ。
『家のコピー機が壊れた。コピー枚数が多すぎるあまり、オーバーヒートしてしまったのだ。
冷却装置が稼働した。次の印刷まで10分かかる。待っている間に、ホットミルクを飲もう』
9年前の私が何をしたか、よく覚えている。
パソコンで本の感想を書き、300枚のコピー用紙を刷ったのだ。
昔から、本の感想を書くのが好きだった。タイピングを進めているうちに、いつの間にか膨大な枚数になったのだ。
学校の課題ではなく、単に書き溜めることが好きだった。
今はそのような習慣はないが、毎日日記を書くことは忘れなかった。
私は最新のページをめくり、ペンを手に取った。
『2024年 10月6日 午前1時半
昨晩、チャンネル8にて"NATEー謎の存在を語る"が放送された。
社会心理学者アンドリュー・カーライルは、NATEの噂について、根拠のないものとして否定。
さらに、噂が広がる原因を、人間の感情と知性の働きから説明した』
私はペンを止め、買いた文字をじっと見つめる。
少し考えてから、続きを書き始めた。
『NATEについては、カーライルの言う通り不明点が多い。
NATEとは何なのだろうか。私はそれをどう解釈すればいいのか、わからない。
専門家も気にかけている、謎の存在だ。カーライルの言うように、やはり単なる噂に過ぎないのだろうか。
彼はNATEを"目視できない"ものと言った。
捉えようのないものを扱うのは難しい。ウィルはNATEについて、どう思っているのだろう?
明日にでも訊いてみようか。彼なら何か知っているかもしれない』
ペンが止まり、日記に一区切りがつく。
私は日記をばたりと閉じ、息をついた。
書き終えた日記をローテーブルに置く。
その直後、隣に置かれたスマートフォンの画面が光る。
私はスマートフォンを覗き込み、通知を見た。
『今日は午後からで構わない。今晩の作業が遅くなりそうだ』
メッセージはウィルからのものだった。私は『了解です』と返信し、そのままスマートフォンを伏せた。
ローテーブルには、スマートフォンと分厚い日記が置かれている。その2つを眺めているうちに、再び眠気に誘われた。
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