有機庭園

1-2 加速する有機化

8. 衣服の有機化

　リビングやキッチンが一通り木製化した所で、俺の中で1つの案が生じた。
　それは衣食住の住だけでなく、他の全てもオーガニック化してはどうかという案だった。

　ありとあらゆる人工物を廃し、自然本来のあり方に回帰する。それは夢のような生活に思われた。
　しかし、叶えられなくもない生活だった。不要なものは手放すことができ、必要なものは店やオンラインで買い揃えられた。

　要は行動次第で何とでもなるということだった。俺は自然に囲まれた生活を実現するため、衣服や食事も見直すこととなった。


　俺はクローゼットを開け、早速衣服の素材を確認した。
　タグを見ると、スーツはポリエステル100パーセントで出来ていた。
　ワイシャツは半分が綿、半分がポリエステルで出来ているものが見られた。
　私服も見てみると、やはりポリエステルの混じったものが多く見られた。

　これは由々しき事態だった。俺はタグを一つ一つ目で確かめ、ポリエステルと綿の製品を分別した。
　そして、ポリエステルの山を紙袋に詰め込み、近場のリサイクル箱に入れることにした。

　あまり使っていない服は古着屋で売却し、有機製品を買い足すための資金に変えた。
　そして俺は、天然繊維100パーセントの衣服を買い揃えるため、急いで洋服屋へ向かった。


　洋服屋で羊毛のスーツが見つかった。
　ポリエステルに比べてかなり高額だったが、俺は意を決しそれを購入した。 

　羊毛のスーツは生地が柔らかく、着心地が良さそうだった。また吸湿性と保温性に優れているため、夏でも冬でも活躍が期待できた。

　幸い、綿100パーセントのワイシャツも私服も容易に見つかった。ポリエステルに比べてやや生地が分厚かったが、安価で伸びも良かった。
　こうして、無事全ての衣服を自然由来のものに買い換えることができた。

　俺は安堵し、家に帰った。両手はオーガニック製の衣服がたっぷり詰まった紙袋で塞がっていた。