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6章: 回想
51. 先端
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カードは全部で53枚だった。
僕の手元には17枚、エスとトド頭の手元には18枚のカードがあった。
クリップに挟まれたカードを見る。すると、早速僕の手元に『エス』があった。
僕は唾を飲み、そのカードをじっと見る。その間、エスが僕に向かって言った。
「カードはお前から引いてくれ。順番は、お前からトド、トドから俺、俺からお前だ」
どうやら、順番は時計回りに引いていくらしい。
僕は斜め前のトド頭に顔を向けてから、相手の整列したカードを見た。
「左から4番目」
僕はそのカードに目を移し、1回目のカードを引いた。
トド頭が立ち上がり、僕のクリップスタンドにカードを挟む。見ると、カードは「2」だった。
同じカードがあったので、僕はそのカードをクリップスタンドから外すように、トド頭に伝えた。
トド頭は不満げな顔をしながら、僕の2枚のカードを地面の中央に落とした。
ゲームが始まってから、次々とカードが削られていった。
数十回、順番が回った所で、ついにトド頭の手持ちのカードがなくなった。
「この野郎!」
トド頭が地団駄を踏み、怒りをあらわにする。
ババ抜きなら、声を上げて喜んでいるところだが、今回のルールは『エス残し』だ。
最後に『エス』のカードが残った者が勝つ。トド頭は悔しそうに鼻息を出し、拳をぎっと握りしめた。
「あとは、お前と俺だな」
エスがにやりと笑い、僕のクリップスタンドからカードを取る。
エスは口笛を吹き、そのカードを手持ちに加える。
『エス』を取られてしまった。僕はがっくりとしながら、エスがカードをシャッフルするのを眺めていた。
ゲーム開始から数十分後、カードの枚数は大幅に減り、いよいよ手持ちのカードが4枚になった。
エスの手持ちのカードは、3枚だった。そして、僕はついに『エス』のカードを取り返した。
僕の手元には、3、7、11、そして『エス』のカードがある。一方のエスのカードは、ほぼ3、7、11で確定だ。
「次は俺の番だ」
エスは椅子に座りながら、僕の顔をじっと見る。
エスが一番左のカードに手をかける。僕は息を殺し、できるだけ内心を悟られないように無表情を心がける。
エスが、すっと隣のカードを引く。僕はごく僅かに唾を飲み、心の中でほっと息をついた。
エスの手持ちのカードが揃い、11のカードが地面に振り落とされる。
残りは3と7だ。どちらのカードを引いても、僕の手元には2枚のカード、エスの手元には1枚のカードしか残らない。
「左」僕はほとんど機械的にその合図を送った。そして、カードはついに3と『エス』のみが残った。
エスがこちらに射抜くような視線を向ける。
僕の口から血が流れ落ち、床にぽたぽたと血痕を作る。
エスが僅かに口角を上げ、右のカードを取る。そして、手に取ったカードを床にひらひらと落とした。
「こいつは祝福ものだな」
エスが僕に向かってゆっくりと拍手した。僕の手元には、『エス』が残っていた。
エスが立ち上がり、ポケットから何やら光るものを取り出す。見ると、それは正真正銘のアイスピックだった。
エスが、長らく退屈していたトド頭の方へ歩み寄り、アイスピックを相手に渡す。
トド頭はにっこりと笑い、体を左右に揺らしながら、僕に近づく。
「僕は勝った。そうだろう?」
僕は2人に向かって、震え声で言う。
「そうだ。お前はゲームに買った。だから、約束通りトド頭の正体を教えてやるよ」
エスは椅子を正面に向き直し、足を組んで座る。
トド頭がアイスピックを握りしめ、その先端を愛おしそうに眺める。
「止めろ」僕はほとんど動揺を隠さず、トド頭に懇願する。
「止めるんだ」
しかし、トド頭はもう僕の言葉を聞いていなかった。トド頭は、まるで一人音楽でも聴いているかのような、陶酔した目つきをしていた。
次の瞬間、アイスピックが勢いよく振り上げられた。その先端が眼球に触れた瞬間、僕の中で鍵が開いたように、古い記憶が一気に流れ出した。
僕の手元には17枚、エスとトド頭の手元には18枚のカードがあった。
クリップに挟まれたカードを見る。すると、早速僕の手元に『エス』があった。
僕は唾を飲み、そのカードをじっと見る。その間、エスが僕に向かって言った。
「カードはお前から引いてくれ。順番は、お前からトド、トドから俺、俺からお前だ」
どうやら、順番は時計回りに引いていくらしい。
僕は斜め前のトド頭に顔を向けてから、相手の整列したカードを見た。
「左から4番目」
僕はそのカードに目を移し、1回目のカードを引いた。
トド頭が立ち上がり、僕のクリップスタンドにカードを挟む。見ると、カードは「2」だった。
同じカードがあったので、僕はそのカードをクリップスタンドから外すように、トド頭に伝えた。
トド頭は不満げな顔をしながら、僕の2枚のカードを地面の中央に落とした。
ゲームが始まってから、次々とカードが削られていった。
数十回、順番が回った所で、ついにトド頭の手持ちのカードがなくなった。
「この野郎!」
トド頭が地団駄を踏み、怒りをあらわにする。
ババ抜きなら、声を上げて喜んでいるところだが、今回のルールは『エス残し』だ。
最後に『エス』のカードが残った者が勝つ。トド頭は悔しそうに鼻息を出し、拳をぎっと握りしめた。
「あとは、お前と俺だな」
エスがにやりと笑い、僕のクリップスタンドからカードを取る。
エスは口笛を吹き、そのカードを手持ちに加える。
『エス』を取られてしまった。僕はがっくりとしながら、エスがカードをシャッフルするのを眺めていた。
ゲーム開始から数十分後、カードの枚数は大幅に減り、いよいよ手持ちのカードが4枚になった。
エスの手持ちのカードは、3枚だった。そして、僕はついに『エス』のカードを取り返した。
僕の手元には、3、7、11、そして『エス』のカードがある。一方のエスのカードは、ほぼ3、7、11で確定だ。
「次は俺の番だ」
エスは椅子に座りながら、僕の顔をじっと見る。
エスが一番左のカードに手をかける。僕は息を殺し、できるだけ内心を悟られないように無表情を心がける。
エスが、すっと隣のカードを引く。僕はごく僅かに唾を飲み、心の中でほっと息をついた。
エスの手持ちのカードが揃い、11のカードが地面に振り落とされる。
残りは3と7だ。どちらのカードを引いても、僕の手元には2枚のカード、エスの手元には1枚のカードしか残らない。
「左」僕はほとんど機械的にその合図を送った。そして、カードはついに3と『エス』のみが残った。
エスがこちらに射抜くような視線を向ける。
僕の口から血が流れ落ち、床にぽたぽたと血痕を作る。
エスが僅かに口角を上げ、右のカードを取る。そして、手に取ったカードを床にひらひらと落とした。
「こいつは祝福ものだな」
エスが僕に向かってゆっくりと拍手した。僕の手元には、『エス』が残っていた。
エスが立ち上がり、ポケットから何やら光るものを取り出す。見ると、それは正真正銘のアイスピックだった。
エスが、長らく退屈していたトド頭の方へ歩み寄り、アイスピックを相手に渡す。
トド頭はにっこりと笑い、体を左右に揺らしながら、僕に近づく。
「僕は勝った。そうだろう?」
僕は2人に向かって、震え声で言う。
「そうだ。お前はゲームに買った。だから、約束通りトド頭の正体を教えてやるよ」
エスは椅子を正面に向き直し、足を組んで座る。
トド頭がアイスピックを握りしめ、その先端を愛おしそうに眺める。
「止めろ」僕はほとんど動揺を隠さず、トド頭に懇願する。
「止めるんだ」
しかし、トド頭はもう僕の言葉を聞いていなかった。トド頭は、まるで一人音楽でも聴いているかのような、陶酔した目つきをしていた。
次の瞬間、アイスピックが勢いよく振り上げられた。その先端が眼球に触れた瞬間、僕の中で鍵が開いたように、古い記憶が一気に流れ出した。
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