夢現新星譚

富南

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【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第5章:邪神教団

66 元凶

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「デス! あたいの狂猫達と遊ぶがいいデス! 行くデス!」

 紺色の髪に裏側がピンクと特殊な色をしたおかっぱ長髪の、黒一色に白の印字で模様を描かれたパンク風に改造された局員用制服を着た子が、狂猫と呼んだ様子のおかしい猫達に命令をしている。
 よく見ると、首や膝などの間接にわれた痕が残っている。
 あとやたらと袖が長く、腕が出ていない。袖口が、手があると思われる部分で折れ曲がった状態で着ている。

「教祖様。ここはあちし達に任せてご準備するですよー」

 髪の中央から黒と赤と分かれたおかっぱ長髪で、こちらは改造されていない局員用制服を着ているが、所々に機械のような物が飛び出ていて、その機械から煙のような物が出ている。
 そのスチームパンク風の子が、片手で1枚ずつ持っていた大きな両開きの扉の1つを傍に投げて捨てた。
 やはり力んだタイミングで煙を撒き散らしている。
 隣の子がその煙を吸っても無反応なので、おそらく蒸気とか無臭の類の物なのだろう。

「クヒヒ……。お前達ーはルイーの最高傑作ーだ。くれぐれーも無茶ーはしないようーに」
「お気遣い感謝します」

 ルイと呼ばれた邪教の団長が、クロードに頭を下げる。そして、奥の扉に手をかけた。

「待て! 逃げるな!」

 私は、ルイが開けようとした扉の金具を撃ち抜いた。
 ルイは扉を引いたが、ピクリともしなかった。

「やりましたね……鬼の軍部部長……ヒヒヒ。シャリー!」

 ルイは後ろの2人のどちらかを見ている。

「任せろですよー」

 ツートンカラーの子が反応し、手に持っているもう片方の大きな扉を持ち上げ、振りかぶってルイの方向へ投げた。そしてその扉が、私が壊した扉を破壊した。
 そのシャリーと呼ばれた子の右腕の肘と下半身から、蒸気が噴出される。
 クロードは破壊された扉を抜け、出て行ってしまった。

「ヒヒヒ……ナイスですよ、シャリー。あと、そっちの方達は捕まえようとしない事です。手強いですよ」

 そう言いルイは、クロードを追いかけて出て行った。

「キキキ……ここが誰の夢の星なのか、忘れているみたいね~。風羽、そっちの2人を頼むわね~」

 アイリスは白猫の姿に変わり、クロード達が出て行った扉から出て行った。

「頼むって言われてもね……。えっと、初めましてって感じしないけど、初めまして。知っての通り、星間郵便局の軍部部長の風羽だよ」

 狙撃銃を散弾銃に変えてもらい、それの弾を確認する。

「デス! 初めまして! あたいはミャリーと申すデス」

 パンク風の子が前に出てお辞儀をした。
 その子の周りに、ヨダレを垂らした猫達が集まっている。

「初めましてですよー。あちしはシャリーですよー」

 次にスチームパンク風の子がお辞儀をした。
 動く度に機械が動くのか、少しだけ蒸気が出ている。

「私とツクモ様を見逃してくれるのなら戦わないけど、どう?」
「それはできない相談デス。あのお方をここから逃さないといけないので、あたい達は足止めをしないといけないデス」
「姉さんの言う通り、ルイ様をお守りするのがあちし達の役目なのですよー。なので、姉さん頑張ってくださいですよー」

 シャリーはどこから出したのか、いつの間にか持っていた旗で応援を始めた。

「デス!? シャリーは戦わないデスか! でも、あたいも直接は戦わないデス。行くデスみんな!」

 ミャリーは、袖口の折れ曲がった腕をビシっと前に出した。おそらく私達を指したのだろう。すると、周囲にいた猫達がのそのそと動き始めた。
 私は散弾銃を構えた。

「風羽。気づいていないようだから言うが、この猫達狂化しているからな。あと、オレの事はつくちゃんでいい」

 ツクモの近くに、先程召喚したロボット2体が集まってきた。
 あー、そういえばさっき、ミャリーもそんな事を言っていたような。

「みゃー!!」

 大きなトラ猫が1匹私に目掛けて猫パンチをしてきた。
 私はそれを避け、散弾銃のストックで殴った。
 猫は少し怯んだが、何事も無かったかのように、のそのそと近づいてきた。

「狂化しているね……。でも、それを操っている……あれ? そんな事が何度かあったような?」

 走ってきた狂猫の足を狙い、散弾銃で撃った。
 狂猫はその場に倒れる。それを私は、至近距離でとどめを刺した。

「さすが、鬼の軍部部長デス。猫相手にも容赦ないデスね。あ、ちなみに、あたいの能力は『狂化』デス。狂化した動物や夢の住民を操る事もできるデス」

 能力? それより……

「ってことは……今まで私が行った夢の星の狂人は、全部貴方がやった事なの?」

 私はミャリーを睨みながら静かに聞く。

「そうデス。全ては教祖様とルイ様の計画の為デス」

 あの邪神が何を考えているのかわからないけど、狂人をたくさん作れる能力? はここで封じておかないとな。
 私は刀も抜き、前にツクモが改造してくれた帯電装置も動かした。
 刀が青白く光る。

「そうなんだね……。それじゃ、夢の主とか他の局員の被害を抑えるため、ここで貴方を逮捕させていただくね!」

 ミャリーに向けて駆ける。そして、あと少しという所まで近づけた。

「みゃー!!!」

 私とミャリーの間に別の狂猫が入り込んだ。そして、ワンパターンな猫パンチを繰り出した。
 私はそれを避けて、すぐに散弾銃で足を撃ち転ばせ、とどめを刺した。

「猫ちゃんごめんね。でも、そのままだと苦しいと思うから、楽にさせるよ。それと……」

 私はミャリーに詰め寄る。そして、ミャリーの眼前に刀の刃先を向けた。

「今まで、たくさんの夢の主と局員を間接的に怪我させた罪、軽くないよ」
「これも全て、ルイ様の為デス!」

 ミャリーはニヤリと笑った。
 私はそれを見てミャリーを睨み、刃先をそのまま足元に振り下ろした。

「あちしを忘れていないかな? ですよー」

 プシューという音が鳴り響く。
 その直後、私とミャリーの間に、旗の部分の空気抵抗なんて関係ないくらいの速さで、シャリーが振っていた旗が飛んできた。そして、大きな扉が私が避けた位置に落ちてきた。

「やば」
「おっと! その扉、貰うぜ」

 別の狂猫を相手していたツクモが私の前に立ち、大きな鎚で落ちてきた扉を叩いた。
 叩かれた扉はバラバラになり、そして狂猫と同じくらいの大きさのロボット数体に変化した。

「姉さん、ここは一旦引くですよー。ルイ様の言う通り、手強すぎですよー」
「デスデス。ルイ様に心配かけさせないように、この辺りでおいとまするデス!」
「では、生きていたらまたお会いしましょうですよー」

 シャリーはそう言い蒸気を撒き散らしながら、サトウが隠れていた柱を殴り、へし折った。

「ひぃ! 崩れます!」
「あの扉からなら逃げられる」

 サトウがこっちに向かって走ってきた。
 私は刀を鞘に収め、散弾銃をカバンにしまった。
 ツクモは小さな姿に変わり、私の肩に飛び乗った。

「このままだとこの部屋も危ないな。サトウさん、タツロウさんにヘルプできた?」
「それが、気流がすごくてここまで上がれないそうです……」
「うーん……」

 私はサトウの手を取り、アイリス他2名が出て行った扉に向けて走り出す。

「それなら風羽がクルマを出せばいいんじゃないか?」

 肩の上に座っているツクモが首を傾げている。

「え? 気流で落ちない?」
「いや。この辺りは穏やかだぜ。下の雲がすごいだけだ」
「それなら!」

 サトウを引っ張りながら扉を抜けた。
 それと同時に、後方から崩れた音と土埃がこちらまで飛んできた。
 そんなのお構いなしで廊下を走り抜けると、そこはバルコニーになっていた。
 そこでクルマを呼び出すために、端末を取り出すと

「すまねぇ! 遅くなった!」
「うわ!? タツロウさん!? どうやってここまで来たの?」

 目の前にタツロウが乗ったクルマが現れた。

「一旦上がって、また降下した。ここに直でな」
「うわ……無茶したな。でもまあ、ありがと。助かったよ」
「ああ。それより、降りてくる途中でやり合ってたあれは何なんだ?」
「……え? 空中で?」
「ああ。すごかったぜ」
「そこに向かって!」
「何かわからんが、りょーかい」

 私達はクルマに飛び乗り、アイリス達が戦っていると思われる空域まで急いだ。
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