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【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第4章:解放
62 解放
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タツロウが捕縛してくれた邪教徒を軍部警察班へ護送し、局長室へと戻ってきた。
「それで風羽、何があったの?」
「うん、実は……」
夢羽に、体験したような感覚に陥った夢の主とその相方の記憶の話をした。
「そう……風羽もこの問題を知ったのね。たしかに、2人の力が合わさって子は大きくなり、やがて生まれるわ。神はそうやって後継者の準備をするわ。だけど、これを人間にも強引に組み込んだのが霊神なのよ」
「……え? いつものようにはぐらかさない?」
「はぐらかす理由が無くなったから、かしらね」
夢羽は周囲を確認する。
「ってことは、夢羽の周りの邪気が無くなった!?」
「うん。さっきの方の思いのチカラはすごかったわ……複雑な気持ちだけど」
「やった! やっと夢羽が解放された! ……嬉しいけど、複雑」
私は夢羽の両手を握る。
「でも問題だらけね。そして現状は深刻よ」
「というと、さっきの?」
「うん。現世では急激に人口が減っているわ。ニュースとかで少子化問題を持ち上げているでしょ?」
「たしか、そんな話あったね」
私の現世の記憶は実際は夢羽の記憶なので、夢羽が忘れていない限り憶えている。
「そりゃ、片方がいなくなったら子が生まれなくなる世界だと、人口なんて増えないわよ」
夢羽は呆れた顔をしている。
「え、でも、人間の歴史って結構長いよね?」
「あれも霊神達に作られた紛い物の歴史よ。今の人間って1000年も生きてないわよ。技術の知識も霊神が植え付けた物だし」
「1000年……」
私は局長室の窓に近づき、外を見る。そこで走っていたり飛んでいたりする人達は、この1000年で亡くなった人達なのだろうか。長い歴史があるのに、死後の世界であるここの人口が少ないなと思ったのは、気のせいではなかったのかもしれない。
「ところで夢羽って何者? 霊神じゃないの?」
「霊神じゃないわよ。あたしは人神。んで、そっちが物神ツクモの思念体よ。別名、土の……鎚の神ね」
刀から出てきた火の玉のつくちゃん改めツクモが、刀身の上で踊っている。
「ええ!? 人神って何よ!? 物神? 付喪神じゃないの!? 霊神じゃないってことは、霊神ソラはどうしたのよ!」
「すごい質問攻めね。1つずつ答えてあげたいけど、そろそろ起きるわね。続きはまた今度よ。少しの間あたしは出てこないから、1人か3人であの子達がまとめた書類の中から行く場所決めて」
夢羽は、机の上に置かれている書類を指した。
「そうか! 邪気が晴れたら現世で起きられるようになるって言ってたね!」
「うん、そうよ」
「じゃあ、次はいつ会えるの?」
「夜ね」
そう言い、夢羽はカバンの中から懐中時計を出して、渡してきた。
「夜? ああ、そういうことか」
私は懐中時計を受け取り、それを見る。
夢羽がいる地域の時刻なのだろうか。昼の12時辺りを指していた。
「私が寝たら会えるわ。あ、でも強く念じてくれたら起きている時も気づけるから、何かあったら念じてね」
「うん、わかった」
私がそう言うと、夢羽は姿を消していなくなった。
「本当にいなくなっちゃった……。さて、夢羽が起きている間に行ける所に行ってくるか……」
私は局長の机のイスを引き、それに座った後目の前の書類を取って読み始めた。
---
しばらく書類を読んでいると、入り口の扉が開いた。
「お! お嬢! ここにいたのか!」
「あ、タツロウさん。護送お疲れ様です」
タツロウが入ってきて右腕を上げた。その後ろにサトウもいる。
「お嬢! この星で行方不明者が出ているらしいぞ」
タツロウは1枚の書類を見せてきた。
「んー? ……あ! この星、夢羽がまとめた書類の中にもある!」
その書類をタツロウに見せた。
「さすが姉御! ん? 姉御はどうしたんだ?」
「えっとー……別行動ってやつかな」
はははー、と苦笑する。
「珍しいな! いつもお嬢にべったりな姉御だがな」
「これから少し忙しくなるみたい」
「なるほどな。それじゃ、俺達がその穴埋めをしないとな!」
タツロウが後ろのサトウを見る。
サトウも私を見て頷いている。
「2人で行ってきてもいいのよ? 私と行動したら、危険な星とかいっぱいあるだろうし」
「その辺りは問題ない。慣れているからな」
「そうなのね……たしかに、助かった場面多々会ったし、お願いしようかな」
局長のイスから立ち上がる。
「任せておけ! じゃあ、早速この行方不明者が出ている星に行くぜ!」
---
「か、帰っていいか?」
タツロウが目の前の動物を見て、かなり引いている。
タツロウが意気込んだ後、買い出しなどをし準備を済ませ、ターミナルでクルマを借りた後に夢の星に到着した。
現在、クルマが着陸することができた草原と森の境目にいる。
「えー! 可愛いじゃないですかー! こんなに大きくてもふもふでー!」
サトウが、その動物の首元を撫でながら、もふもふを堪能している。
「それにしても大きいな……。こんなに大きいと、パンチもライオン並みじゃないの?」
「そうなんですか?」
「にゃー?」
その動物もとい、ライオンくらいの大きさの白猫とサトウが首を傾げる。
「俺は猫が苦手なんだよ! 今回はクルマの中から援護するぜ」
そう言い、タツロウはクルマに乗り、逃げていった。
「ありゃりゃ……。まあ、苦手だったら無理強いしない方がいいね」
「そうですね……私達だけで行きましょうか」
「おっけー」
「にゃー」
白猫も一緒に返事をし、スタスタと私達より前に進んだ。そして森の入り口で止まり、振り向いた。
「案内してくれるの?」
「え! かしこーい!」
サトウが目を輝かせている。
「にゃー」
白猫が返事をし、歩き始めた。
「ついて行こうか」
「はい!」
私とサトウは白猫の後を追い、森の中へと入っていった。
「それで風羽、何があったの?」
「うん、実は……」
夢羽に、体験したような感覚に陥った夢の主とその相方の記憶の話をした。
「そう……風羽もこの問題を知ったのね。たしかに、2人の力が合わさって子は大きくなり、やがて生まれるわ。神はそうやって後継者の準備をするわ。だけど、これを人間にも強引に組み込んだのが霊神なのよ」
「……え? いつものようにはぐらかさない?」
「はぐらかす理由が無くなったから、かしらね」
夢羽は周囲を確認する。
「ってことは、夢羽の周りの邪気が無くなった!?」
「うん。さっきの方の思いのチカラはすごかったわ……複雑な気持ちだけど」
「やった! やっと夢羽が解放された! ……嬉しいけど、複雑」
私は夢羽の両手を握る。
「でも問題だらけね。そして現状は深刻よ」
「というと、さっきの?」
「うん。現世では急激に人口が減っているわ。ニュースとかで少子化問題を持ち上げているでしょ?」
「たしか、そんな話あったね」
私の現世の記憶は実際は夢羽の記憶なので、夢羽が忘れていない限り憶えている。
「そりゃ、片方がいなくなったら子が生まれなくなる世界だと、人口なんて増えないわよ」
夢羽は呆れた顔をしている。
「え、でも、人間の歴史って結構長いよね?」
「あれも霊神達に作られた紛い物の歴史よ。今の人間って1000年も生きてないわよ。技術の知識も霊神が植え付けた物だし」
「1000年……」
私は局長室の窓に近づき、外を見る。そこで走っていたり飛んでいたりする人達は、この1000年で亡くなった人達なのだろうか。長い歴史があるのに、死後の世界であるここの人口が少ないなと思ったのは、気のせいではなかったのかもしれない。
「ところで夢羽って何者? 霊神じゃないの?」
「霊神じゃないわよ。あたしは人神。んで、そっちが物神ツクモの思念体よ。別名、土の……鎚の神ね」
刀から出てきた火の玉のつくちゃん改めツクモが、刀身の上で踊っている。
「ええ!? 人神って何よ!? 物神? 付喪神じゃないの!? 霊神じゃないってことは、霊神ソラはどうしたのよ!」
「すごい質問攻めね。1つずつ答えてあげたいけど、そろそろ起きるわね。続きはまた今度よ。少しの間あたしは出てこないから、1人か3人であの子達がまとめた書類の中から行く場所決めて」
夢羽は、机の上に置かれている書類を指した。
「そうか! 邪気が晴れたら現世で起きられるようになるって言ってたね!」
「うん、そうよ」
「じゃあ、次はいつ会えるの?」
「夜ね」
そう言い、夢羽はカバンの中から懐中時計を出して、渡してきた。
「夜? ああ、そういうことか」
私は懐中時計を受け取り、それを見る。
夢羽がいる地域の時刻なのだろうか。昼の12時辺りを指していた。
「私が寝たら会えるわ。あ、でも強く念じてくれたら起きている時も気づけるから、何かあったら念じてね」
「うん、わかった」
私がそう言うと、夢羽は姿を消していなくなった。
「本当にいなくなっちゃった……。さて、夢羽が起きている間に行ける所に行ってくるか……」
私は局長の机のイスを引き、それに座った後目の前の書類を取って読み始めた。
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しばらく書類を読んでいると、入り口の扉が開いた。
「お! お嬢! ここにいたのか!」
「あ、タツロウさん。護送お疲れ様です」
タツロウが入ってきて右腕を上げた。その後ろにサトウもいる。
「お嬢! この星で行方不明者が出ているらしいぞ」
タツロウは1枚の書類を見せてきた。
「んー? ……あ! この星、夢羽がまとめた書類の中にもある!」
その書類をタツロウに見せた。
「さすが姉御! ん? 姉御はどうしたんだ?」
「えっとー……別行動ってやつかな」
はははー、と苦笑する。
「珍しいな! いつもお嬢にべったりな姉御だがな」
「これから少し忙しくなるみたい」
「なるほどな。それじゃ、俺達がその穴埋めをしないとな!」
タツロウが後ろのサトウを見る。
サトウも私を見て頷いている。
「2人で行ってきてもいいのよ? 私と行動したら、危険な星とかいっぱいあるだろうし」
「その辺りは問題ない。慣れているからな」
「そうなのね……たしかに、助かった場面多々会ったし、お願いしようかな」
局長のイスから立ち上がる。
「任せておけ! じゃあ、早速この行方不明者が出ている星に行くぜ!」
---
「か、帰っていいか?」
タツロウが目の前の動物を見て、かなり引いている。
タツロウが意気込んだ後、買い出しなどをし準備を済ませ、ターミナルでクルマを借りた後に夢の星に到着した。
現在、クルマが着陸することができた草原と森の境目にいる。
「えー! 可愛いじゃないですかー! こんなに大きくてもふもふでー!」
サトウが、その動物の首元を撫でながら、もふもふを堪能している。
「それにしても大きいな……。こんなに大きいと、パンチもライオン並みじゃないの?」
「そうなんですか?」
「にゃー?」
その動物もとい、ライオンくらいの大きさの白猫とサトウが首を傾げる。
「俺は猫が苦手なんだよ! 今回はクルマの中から援護するぜ」
そう言い、タツロウはクルマに乗り、逃げていった。
「ありゃりゃ……。まあ、苦手だったら無理強いしない方がいいね」
「そうですね……私達だけで行きましょうか」
「おっけー」
「にゃー」
白猫も一緒に返事をし、スタスタと私達より前に進んだ。そして森の入り口で止まり、振り向いた。
「案内してくれるの?」
「え! かしこーい!」
サトウが目を輝かせている。
「にゃー」
白猫が返事をし、歩き始めた。
「ついて行こうか」
「はい!」
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