夢現新星譚

富南

文字の大きさ
上 下
47 / 69
【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第3章:狂った時間と狂わせる科学

47 危険な石と骸骨顔の正体

しおりを挟む
「お嬢! 今だ!」

 タツロウが投げたキラキラ鉱石と距離を離すために、猛ダッシュで退いている。
 私はカバンからサイリウムを取り出し、それを折った後キラキラ鉱石に目がけて投げた。
 サイリウムの中の薬剤が上手く混ざったようで、キラキラ鉱石の近くで光る。
 そして、

「うわ! あっつ! まぶし!」

 全てのキラキラ鉱石がオレンジ色に光り輝き、そして熱を発し始めた。
 狂人達は突然の暑さに耐えきれなくなったのか、ガクンと膝から落ちる。
 そして、狂人が燃えて無くなってしまった。

「とんでもない石だなおい。お嬢! これは危険すぎるぜ」
「たしかにそうだね……。でもこれ邪教の目的と一致しないから、使われなさそうな気がするんだけど?」
「邪教って、あのいけ好かねぇ仮面野郎がいる教団か」

 タツロウは拳をわなわな震わせる。
 あれ? そういえばさっきから夢羽が大人しいような?
 そう思い、夢羽を見る。

「これってあれよね……いやでも、これを作る為には……」

 夢羽はいつもの如く、何か考え事をしながらブツブツと呟いている。

「夢羽、聞こえてるよ」
「わあ!? 何かあたし言ってた?」

 物陰に隠れた後、こちらを見た。

「うん、これを作るとかどうこう」
「忘れてー!」

 夢羽はまた顔を引っ込める。

「いや忘れてって言われてもなー……てか、夢の星で生まれた物だと思ってたけど、作られた物なの?」

 私はタツロウが持つ袋の中に手を入れる。
 触った感触は普通のゴツゴツした石という感じだ。
 表面はツルツルしている。

「聞かれたのならしょうがないわね。言える事は2つ。人為的にしか作れないという事と、材料は霊気だけという事だけかな」
「霊気!?」

 私が驚いている横で、タツロウとサトウは首を傾げる。
 私は霊気やそれに関係する邪気について、タツロウとサトウに話す。

「その霊気と邪気が、俺達の魂に1対1の比率で混ざっているってことだな」
「まあそんなとこかな」
「あのー……私聞いてもよかったのでしょうか?」
「まあ、巻き込まれたと思っておけ」
「は、はあ……」
「それで?」

 私は夢羽が隠れている民家の外壁の内側を見る。

「その霊気で何を作ったって?」
「えーっと……見ての通りです。あ! 誓って言うけど、あたしじゃないからね!」

 夢羽は手をぶんぶんと振っている。
 すごく怪しいけど、夢羽が犯人ではないようだ。

「でも作成方法は知っていると……情報が漏れたんじゃない?」
「え? どうやって?」
「……たしかにどうやって漏れるんだろ」

 私と夢羽が首を傾げたので、タツロウとサトウも一緒に首を傾げる。
 そうしていると、なぜかサトウが後ろを指して顔を引きつらせた。

「……うわぁ」

 気になったので振り返る。

「うん? ……また来たのね」
「はは、ほんと懲りない奴だな」
「な、何で皆さん落ち着いているんですか!?」

 私の一言で夢羽も振り向き、タツロウも奥の方に気づいて笑い出した。
 サトウは声が震えている。

 そこには、大鎌を持った骸骨顔が重い足取りでこちらに近づいてくる。

「お嬢! こいつ、火が弱点だぜ」
「うん。いいよ、やっちゃって」
「あいよ!」

 タツロウはカバンから瓶を取り出し、それの先端についている布に火を点けようとした。

「おわ!? 割られただぁ!?」
「キキキ……ごめんなさいね~。私の戦闘の邪魔になるので、投げないでね~」

 空中に閃光弾が放たれ、辺りが昼間のような明るさになった。
 それと同時にタツロウが持っていた瓶が黒いナイフに割られ、骸骨顔に大きな黒い剣を叩きつけた少女が現れた。
 アイリス・ネフィリアだ。

「な! アイリス!? 何しに来た!」
「あらご挨拶ね~。こいつを作った本人に用があるから来たのよ~」

 大鎌と黒い大剣が交わり、金属音が鳴り響く。

「え? 夢の主じゃないの?」
「あら~。夢羽様ご機嫌麗しゅう~。ええ、この死神もどきはロボットですわ~」
「ロボット!?」

 アイリスが大鎌を真っ二つにした後、骸骨顔の胴を叩き斬った。
 その切り口から、部品のような物が飛び散る。
 骸骨顔はその場に倒れて機能停止した。

「本当ね……これ、ロボットだわ」
「夢の住民じゃなかったんだ。じゃあ、今までのって夢のイベントとかではなかったってこと?」
「今までどういう事があったか知らないけど~、結構前から目撃されていたみたいよ~」

 アイリスは大剣を手放すと、それが消えてなくなった。
 それと同時に、閃光弾の光が消えた。

「ってことは、この星の時間かなり遅いってことかな?」
「最近報告が増えている、例の時差が出ている件か」

 服にかかったアルコールを拭き終えたタツロウが、私の横に立つ。

「あ~この事ね~。邪教が目撃された星は、だいたい遅く帰って来るわね~。何かあるのかしら~?」
「邪教が関係している? あの仮面のマッドサイエンティストが作った物ってこと?」
「いや、時を操る物って、いち個人が作れていい物じゃないわよ!」

 なぜか怒っている夢羽。

「怒っている夢羽様も素敵~。まあ、私が用があるのはこれだから~、その時間関係は任せるわ~」

 アイリスは、骸骨顔の胴体の中に手を入れ、小さな機械を取り出した。
 そしてそれを別の機械に接続した。

「あっちね~。私は行きますが、どうします~?」

 接続した機械のモニターに赤い点が表示されている。
 発信源が特定できたのだろう。

「うん、ついていくよ。夢の主の手がかりにもなるだろうし」
「時を操る物も持っているかもしれないからね」

 私と夢羽は頷く。

「じゃあ俺は、サトウさんを送り届けるぜ」
「あ、それだったら私のクルマ使って。他の局員も乗せたままだから」

 そう言い、端末を操作してクルマを呼び寄せた。
 空で待機していたクルマはすぐに降りてきた。

「お嬢と姉御、2人も助けたか! さすがだぜ!」

 クルマの中を覗き込むタツロウ。

「待って。姉御って誰?」
「誰って姉御は姉御だ。よく考えたら総長はおかしいと思ってな。んで、お嬢の姉って聞いたから姉御だなと」
「え? いつ言ったの?」
「この星に行く前のクルマの中で、姉御がポロっと言ってたぜ」
「よく憶えていたな……」

 そして、クルマに乗り込むタツロウとサトウ。

「そろそろ行くわよ~」
「おっと、ごめん。それじゃ、タツロウさんよろしくお願いします」
「りょーかい! 任されたぜ!」

 そう言い、タツロウ達が乗ったクルマはあっという間に星の外へと飛んで行った。

「お待たせ」
「遅いわよ~! 夢羽様の金魚のフンじゃなかったら置いて行ったわ~。あ、フンだったら置いて行ってもよかったわね」
「誰が金魚のフンだ! 私は風羽ふうだ!」
「似たようなもんよ~。いずれ私が夢羽様の隣に立つわ~」

 アイリスはモニターを見ながら歩き出す。

「誰にも譲らないよーだ」
「ふふふ。誰にも譲れないから大丈夫よ。てかあたし、霊神ソラじゃないしね」
「それは嘘ね~。私の目は誤魔化せませんわ~」
「どうしたら信じてくれるのやら……」

 そんな事を話しながら、住宅街の中へと進んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...