夢現新星譚

富南

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【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第3章:狂った時間と狂わせる科学

34 隊員達の不思議な体験

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 夢羽は実は他の人には見えていないという疑念が出てきたが、後部座席に他の局員が乗っているので、先に星間郵便局へ帰還することにした。
 局へ着き、逮捕した局員は軍部警察隊へ。
 そして救助した局員は検査するために病院へと搬送された。

「(てか、死後の世界に病院ってあるんだね……)」
「病気とかは無いけど、怪我とかすると魂がどんどん減っていくからね。最終的に今の形が保てなくなって、霧散するらしいわよ」
「(……死体すら残らないのか……恐ろしいな)」

 そんな事を夢羽と話しながら、軍部部長室に入った。

「「「おかえりなさい! 隊長!」」」
「うわ!? ……びっくりした」

 無人だと思っていた部長室には、救助班のメンバーが勢揃いだった。

「いやなんで全員いるんだよ……。誰かの救助とか行ってないの?」
「行ったぜ。お嬢が戻るって聞いたから、皆パパっと終わらせて集合したんだよ、さっきな」
「終わらせられる救助なんだ……無茶はしないでよね」

 私がそう言うと、全員敬礼した。
 私は机の方へと移動する。

「えっと、隊長の仕事って何?」
「報告を受ける、くらいか?」

 タツロウがそう言うと、他の隊員からに冷やかな目で見られている。

「副隊長は置いといて、隊長報告です!」
「はい、何でしょう」

 1人の隊員が机の前に来た。

「救助に行った後帰還したら、遅いという苦情を受けました」
「……遅かったの?」
「いえ。爆速です!」
「爆速だったのね……なのに遅いという苦情を受けた……どうして?」

 私はタツロウを見た。
 タツロウは、さあ? と言いたげな顔をしている。

「そういえば桜と椛の星で、そんなに長い時間あの星にいなかったのに、ゲンが何日も連絡をしなかったって怒っていたね。もしかしてだけど、夢の星と地球って時間の流れ違う?」

 私がそう聞くと

「そんな事ないと思うんですけどね。でも、ここ最近よく聞く話ですよ」
「たしかにな。帰還が遅くなって、救助対象者になる局員が増えている気がするな」
「最近救助に行ったら、ゆっくり配達していたっていうパターンが多いよね」
「今の所ありませんが、本当に救助が必要な局員を助けられない事が1番怖いですよ」

 ほとんどの人が時間の流れに変化を感じている?

「(夢羽、これどうなの?)」
「時間の流れが遅いってことかな? それとも早すぎるか、だろうね」
「うーん……一旦保留で」

 私がそう言うと、隊員全員が一斉に「りょーかい」と言った。
 その後全員から、話を聞きながら報告書を受け取り、解散となった。

 そして部長室には、私とゲンとタツロウの3人が残った。
 ゲンは後から来た形だ。
 一応夢羽はいるが、こっちに戻ってから姿が見えない状態になってもらっている。

「それで、報告ってなんだ?」

 ゲンが私の机の椅子に座り、ふんぞり返っている。

「タツロウが不思議な体験をしたって言ってたよね。なんだったの?」

 私はタツロウに話を振る。
 ゲンもタツロウに視線を移した。

「前、戦場の星で救助妨害をしてきた胡散臭い科学者が、今回行った雲の星にもいたんだよ」

 胡散臭い科学者って……あ! 邪教のマッドサイエンティストの事かな?

「そいつと戦っていたら、火炙りの刑にされて死んだ。元々死んでるんだがな」

 はははと笑うタツロウ。

「いやもうそのネタはいいよ。火炙りの刑って、自分で起こした火事に巻き込まれたとか?」
「そんな感じだ! だが実は死んでなくて、同じ出来事が起きたから回避してやったぜ!」
「いや、そんな自信満々に言われても……それで、ゲンどう思う? ゲン?」
「…………」

 ゲンは真剣な顔で考えている。
 その隣で夢羽も真剣な顔をしている。

「(ねえ、夢羽も関係すること?)」
「……ん? いやいや、あたしが関係する事って決めつけないでよ……でも、少し気になるわね」
「(……そうなんだ。)ゲンー? 聞いてる?」

 私はゲンの前で手を振る。

「ああ、すまん。思い出していた」
「昔にもこんな現象があったの?」
「んー……というか、たまにどこかであるだろ?」
「え?」

 何のことだ? テレビでたまにやる予言とかそういう類のことかな?

「知らんのか? 予言だよ予言。現世のテレビってやつでたまにあるだろ?」
「違うのかと思ってたけど、それの事!?」
「何だと思ってたんだよ」
「何かしらの神のシステムなのかなって……」
「んー?」

 そう言うとゲンは唸り、再び何か考える顔をし始めた。

「予言ね……あたしは違うと思うんだよね」

 横から夢羽がそう呟く。

「(というと?)」
「風羽の銃にも憑いてるでしょ」
「(え? つくちゃん?)」
「あくまでも予想だけどね。別の付喪神がいるんじゃないかなってね。時計好きの」

 私は銃の入ったホルスターを見た。

「お嬢!」
「ん? ああ、ごめん。ちょっと考え事してた。どうしたの?」

 タツロウはなぜか荷物を持っている。

「不思議探しの旅、行きましょう!」

 なぜか突然、旅のお誘いをされた。
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