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【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第2章:現れる脅威と新たな力
21 少女アイリスとの戦い①
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「……キキキ!」
蹴り損ねてバランスを崩した私を、アイリスが蹴り飛ばした。
「……くっ!」
辛うじて後ろに身体を反らし、痛みを軽減させる。
「なに……その大剣……」
「これ~? キキキ……さあ~? なんでしょうね~?」
アイリスはギザギザの歯を見せながら笑う。
そしてまた大剣を両手で持ち上げて構え、今にも飛びかかる体勢になった。
「(どうしたらいい!?)」
「……あの子……もしかして……」
夢羽は何か考え事をしているようで、私の呼びかけを聞いていないようだ。
そうこうしている内に、アイリスはまた私に大剣を振り下ろした。
私はまたナイフで受け流し、今度はアイリスの身体を蹴ろうとした。
しかしアイリスは、大剣が地面に刺さった勢いで空中に飛び上がる。
私は体勢を戻し、着地する前に攻撃しようとナイフを構える。
「……キキキ!」
アイリスの何も持っていなかったはずの手から真っ黒のナイフが突然現れ、それを投げつけられた。
「……!! 大剣だけじゃないのか!」
飛んできた黒いナイフを、自分のナイフで弾く。
そして、落下の勢いを乗せた蹴りを繰り出してきたアイリスを避けた。
「キキキ……やるじゃない~。本当に最近この世界に来た子~?」
「そうだけど……なんで私の事を知ってるの!?」
アイリスは右手で大剣の柄を握る。
「あら~? 貴女、自分がどれだけ有名なのかご存じじゃないのかしら~?」
「……え? あ!」
おそらく、初日にゲンに連れ去られたのをたくさんの人に見られていたせいだろう。
あと、髪が長い少女という点でも有名かもしれない。
「それ言ったら、貴女も髪長いじゃない」
「それもそうね~」
握っていた大剣が、いつの間にか消えて無くなっていた。
「何か物音がする! カメラを壊した奴が残ってるかもしれん! 気をつけろ!」
後方から数人の兵士の声が聞こえてきた。
足音と声が大きくなってきているので、こちらに向かってきているのだろう。
「そろそろ頃合いかしら~。じゃあね~。また会おうね~ムウ」
そう言いアイリスはその場から姿を消した。
「おい! お前昨日入った囚人だな!」
どうやら兵士達に追いつかれたようだ。
私はカバンの紐にぶら下げている煙幕を取り、それをその場に投げて前に走った。
「な! ごほごほ! 待ちやがれ! ごほごほ!」
煙を吸った兵士達は咳込み、動きが遅くなった。
私はその隙に、兵士との距離を離した。
---
地下監獄の出入口近くまで逃げることができた私は、外に出る前にカバンの中に入ったままの装備を整えていた。
「ナイフホルスターはそのままでいいかな……あとは拳銃用のホルスターを着けて、手榴弾と煙幕を下げて、あ! そういえば、つくちゃんを小銃に憑かせてって言ってたよね?」
「……髪は白銀だったわ……髪も長かったし……」
「夢羽? 大丈夫?」
「あ! ごめんごめん、考え事していたわ。それで何かしら?」
夢羽はようやく私の声に気づいたようで、慌てている。
「どうしたの? アイリス見てから様子がおかしいけど……」
「ううん……大丈夫だよ。それよりどうしたの?」
「うん……つくちゃんを小銃に憑かせるんだよね? 今ナイフについているけど……」
ナイフを抜き、それを見る。
ナイフから青い火の玉の付喪神つくちゃんが出てきて、刃先で踊っている。
「うん。つくちゃんの得意技、1度見ているよね」
「えっと……模様替え?」
「うん、そうそうそれ。百聞は一見に如かずって言うし、移動させてみて」
ナイフを自動小銃の横に置いた。
すると、つくちゃんは小銃が気になったようで、ピョンとその上に飛び乗った。
私はナイフをホルスターにしまう。
「……うん、いつもの住居の内見だね」
「でもすぐに終わると思うわ」
「……どうして? あ、終わった」
「つくちゃんは機械が好きなのよ」
つくちゃんは小銃の中に入った。
見た目は変わっていないが、頑丈になったのだろうか?
「それで、模様替えはするの?」
「勝手にはしないよ。さっきのリュックの場合、風羽が迷彩柄が好みではないという思いが強かったから、それを汲み取ってくれたのよ」
「へえ……たしかに、局員用カバンも取り出すのがめんどいって事も考えていたね……それで、銃の場合ってもしかして?」
「うん? ……わかったの?」
「たぶん、こうかな?」
私は小銃のグリップを握った。
「拳銃」
そして、そう言葉に出すと、自動小銃が拳銃へと姿を変えた。
「そうそう、その通り! 銃という名前が付く物はほとんど変身できるわよ」
「……それってすごすぎない? つくちゃんすごい!」
右手に持った拳銃を見ながら褒めると、照れているような気がした。
「あ、なんだろう……小銃よりこっちの方が使いやすい気がする……」
右脇のホルスターからナイフを左手で引き抜き、拳銃と一緒に構える。
「お、何か様になってる気がするわ」
「へへー」
頬が緩む。
「あ、ちょうど兵士がこっちに向かってるわよ」
「いやちょうどって……あまり人の形した者に銃は使いたくないんだけどな……」
「大丈夫よ。夢の主には影響はしないわ」
「……私の気持ちの問題だけど……りょーかい」
ナイフと拳銃を一旦ホルスターに入れ、隠れる。
そして、廊下の先を見た。
「どわぁぁぁ!?」
右側の奥の方で、爆発音と崩れる音が同時に聞こえた。
「どひゃぁぁぁ!?」
左側の奥の方からも同じように、爆発音などが聞こえた。
「……よし」
自称雑誌爆弾が効果あったようで、左右どっちにも設置した物が爆発した。
「ついでに囲まれないように左右の道も潰すって、考えたわね……それにしても、間接的には人の形した者とやり合ってるよね……」
「言わないで! 一応気にしてるんだから!」
「いたぞー! 新人囚人確保ー!」
「夢羽のせいでバレたじゃん! 新人囚人って変な呼び方されてるし……」
右腰の拳銃をホルスターから抜き取り、真ん中の廊下から走ってくる兵士を見る。
そして、
「じゃあね、兵士さん達。貴方達との鬼ごっこ楽しかったよ」
天井にぶら下げた、エタノールの入った瓶を撃ち抜いた。
「おわぁぁぁ!?」
瓶の中のエタノールに引火したのか、予想以上の爆発が起き、天井まで崩れてしまった。
兵士達がどうなったかは土埃のせいで見えない。
「……ごめんなさい!」
両手を合わせた後、私は出口へと急いだ。
蹴り損ねてバランスを崩した私を、アイリスが蹴り飛ばした。
「……くっ!」
辛うじて後ろに身体を反らし、痛みを軽減させる。
「なに……その大剣……」
「これ~? キキキ……さあ~? なんでしょうね~?」
アイリスはギザギザの歯を見せながら笑う。
そしてまた大剣を両手で持ち上げて構え、今にも飛びかかる体勢になった。
「(どうしたらいい!?)」
「……あの子……もしかして……」
夢羽は何か考え事をしているようで、私の呼びかけを聞いていないようだ。
そうこうしている内に、アイリスはまた私に大剣を振り下ろした。
私はまたナイフで受け流し、今度はアイリスの身体を蹴ろうとした。
しかしアイリスは、大剣が地面に刺さった勢いで空中に飛び上がる。
私は体勢を戻し、着地する前に攻撃しようとナイフを構える。
「……キキキ!」
アイリスの何も持っていなかったはずの手から真っ黒のナイフが突然現れ、それを投げつけられた。
「……!! 大剣だけじゃないのか!」
飛んできた黒いナイフを、自分のナイフで弾く。
そして、落下の勢いを乗せた蹴りを繰り出してきたアイリスを避けた。
「キキキ……やるじゃない~。本当に最近この世界に来た子~?」
「そうだけど……なんで私の事を知ってるの!?」
アイリスは右手で大剣の柄を握る。
「あら~? 貴女、自分がどれだけ有名なのかご存じじゃないのかしら~?」
「……え? あ!」
おそらく、初日にゲンに連れ去られたのをたくさんの人に見られていたせいだろう。
あと、髪が長い少女という点でも有名かもしれない。
「それ言ったら、貴女も髪長いじゃない」
「それもそうね~」
握っていた大剣が、いつの間にか消えて無くなっていた。
「何か物音がする! カメラを壊した奴が残ってるかもしれん! 気をつけろ!」
後方から数人の兵士の声が聞こえてきた。
足音と声が大きくなってきているので、こちらに向かってきているのだろう。
「そろそろ頃合いかしら~。じゃあね~。また会おうね~ムウ」
そう言いアイリスはその場から姿を消した。
「おい! お前昨日入った囚人だな!」
どうやら兵士達に追いつかれたようだ。
私はカバンの紐にぶら下げている煙幕を取り、それをその場に投げて前に走った。
「な! ごほごほ! 待ちやがれ! ごほごほ!」
煙を吸った兵士達は咳込み、動きが遅くなった。
私はその隙に、兵士との距離を離した。
---
地下監獄の出入口近くまで逃げることができた私は、外に出る前にカバンの中に入ったままの装備を整えていた。
「ナイフホルスターはそのままでいいかな……あとは拳銃用のホルスターを着けて、手榴弾と煙幕を下げて、あ! そういえば、つくちゃんを小銃に憑かせてって言ってたよね?」
「……髪は白銀だったわ……髪も長かったし……」
「夢羽? 大丈夫?」
「あ! ごめんごめん、考え事していたわ。それで何かしら?」
夢羽はようやく私の声に気づいたようで、慌てている。
「どうしたの? アイリス見てから様子がおかしいけど……」
「ううん……大丈夫だよ。それよりどうしたの?」
「うん……つくちゃんを小銃に憑かせるんだよね? 今ナイフについているけど……」
ナイフを抜き、それを見る。
ナイフから青い火の玉の付喪神つくちゃんが出てきて、刃先で踊っている。
「うん。つくちゃんの得意技、1度見ているよね」
「えっと……模様替え?」
「うん、そうそうそれ。百聞は一見に如かずって言うし、移動させてみて」
ナイフを自動小銃の横に置いた。
すると、つくちゃんは小銃が気になったようで、ピョンとその上に飛び乗った。
私はナイフをホルスターにしまう。
「……うん、いつもの住居の内見だね」
「でもすぐに終わると思うわ」
「……どうして? あ、終わった」
「つくちゃんは機械が好きなのよ」
つくちゃんは小銃の中に入った。
見た目は変わっていないが、頑丈になったのだろうか?
「それで、模様替えはするの?」
「勝手にはしないよ。さっきのリュックの場合、風羽が迷彩柄が好みではないという思いが強かったから、それを汲み取ってくれたのよ」
「へえ……たしかに、局員用カバンも取り出すのがめんどいって事も考えていたね……それで、銃の場合ってもしかして?」
「うん? ……わかったの?」
「たぶん、こうかな?」
私は小銃のグリップを握った。
「拳銃」
そして、そう言葉に出すと、自動小銃が拳銃へと姿を変えた。
「そうそう、その通り! 銃という名前が付く物はほとんど変身できるわよ」
「……それってすごすぎない? つくちゃんすごい!」
右手に持った拳銃を見ながら褒めると、照れているような気がした。
「あ、なんだろう……小銃よりこっちの方が使いやすい気がする……」
右脇のホルスターからナイフを左手で引き抜き、拳銃と一緒に構える。
「お、何か様になってる気がするわ」
「へへー」
頬が緩む。
「あ、ちょうど兵士がこっちに向かってるわよ」
「いやちょうどって……あまり人の形した者に銃は使いたくないんだけどな……」
「大丈夫よ。夢の主には影響はしないわ」
「……私の気持ちの問題だけど……りょーかい」
ナイフと拳銃を一旦ホルスターに入れ、隠れる。
そして、廊下の先を見た。
「どわぁぁぁ!?」
右側の奥の方で、爆発音と崩れる音が同時に聞こえた。
「どひゃぁぁぁ!?」
左側の奥の方からも同じように、爆発音などが聞こえた。
「……よし」
自称雑誌爆弾が効果あったようで、左右どっちにも設置した物が爆発した。
「ついでに囲まれないように左右の道も潰すって、考えたわね……それにしても、間接的には人の形した者とやり合ってるよね……」
「言わないで! 一応気にしてるんだから!」
「いたぞー! 新人囚人確保ー!」
「夢羽のせいでバレたじゃん! 新人囚人って変な呼び方されてるし……」
右腰の拳銃をホルスターから抜き取り、真ん中の廊下から走ってくる兵士を見る。
そして、
「じゃあね、兵士さん達。貴方達との鬼ごっこ楽しかったよ」
天井にぶら下げた、エタノールの入った瓶を撃ち抜いた。
「おわぁぁぁ!?」
瓶の中のエタノールに引火したのか、予想以上の爆発が起き、天井まで崩れてしまった。
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