夢現新星譚

富南

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【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第2章:現れる脅威と新たな力

20 奇妙な笑い方をする少女

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 牢の前を通過したネズミが自動小銃付き監視カメラに発見され、はちの巣にされてしまった。

「(うわ……あれをどうにかしないといけないのね……)」

 私は小銃を構え、撃って壊そうとした。

「待って! 壊したら兵士が集まってくるわ!」
「(じゃあどうしたらいいの?)」
「どこかにある電源施設を破壊するしかないわね」
「(どこにあるの?)」
「うーんと……」

 どうやら夢羽は、電源施設を探し始めたようだ。

 てか、こんな所に監視カメラがあるくらいだから、電源施設にもあるよな……。ここの方が、そこでバレるよりはいいかもしれないな。

 そう思い、夢羽からの返事を待っている間に、私は兵士から盗んだ煙幕を遠くに投げた。
 爆発して煙幕が発生し始めると、監視カメラがそっちを気にしだし、カメラが固定された。
 そして、煙幕に向かって乱射し始めた。

「(よし今だ)」
「あたしが探している間に何してるのよ」
「(煙幕を投げただけだよ。)よし開けたよ! こっちに来て!」

 2つの牢の鍵をピッキングで開け、局員2人の腕を掴んだ。
 そして、自分の近くにも煙幕を張り、2人をカメラの死角まで引っ張った。
 監視カメラは狂ったように乱射しだした。

「ありがとう。助かったよ」
「これで、あの訳が分からない労働から解放されるんだね!」

 2人共大人の局員で、1人は女の人で、もう1人は中性だった。

「逃げる途中でまた捕まらなければですけどね……はい、これのどれかがご自身のカバンだと思います」

 私は3つのカバンを出した。
 それぞれ、自分のカバンと思われる物を取り、そのポケットから例の如く配達予定の手紙を取り出した。

「あ、それとこれも受け取ってください!」

 女の人から、携帯食料を受け取った。

「食べ物! ありがたいです」

 それをカバンに入れる。

「僕からはこれを……」
「……これは?」

 なぜかサバイバルナイフを渡された。

「僕の師匠から譲り受けた物です」
「え? 大事な物じゃないの?」
「いえ、僕はもう必要ないですから……」
「そうですか……ありがたくいただきますね」

 ナイフホルスターも一緒だったので、早速右脇の方に装着した。

「囚人の脱獄だ! 煙を払え!」

 どうやら兵士が集まってきたようだ。

「それじゃ、僕達は行きます」
「ありがとうございました」

 2人の局員はペコリと頭を下げ、そして端末を取り出してそれを見ながら走って行った。

「(なんで端末見ながら走っていくんだろ……)」
「開いているの、地図みたいよ」
「(え? 地図あるの?)」

 端末を開いたが、それらしき物はない。

「ほら、あるじゃないの。マッピング機能よ」
「(そんな機能あるの!? ……起動すらしてない)」
「夢の世界は迷子になりやすいからね。歩いた所を自動で記録する便利なアプリらしいよ」
「(そんなの教えてくれなかったんだけど……)」
「まあ、忙しい身だからね……気にしないであげて」

 端末をカバンにしまう。

「(まあいいや……まずはここから離れないとね)」
「すぐ近くまで来てるよ。ほんと、無茶しちゃって……」

 それを聞き、離れるために適当に歩き始める。

「(ごめんごめん。電源設備を壊したらカメラも止まるんだったら、そこにも同じようなカメラが設置されてないかなって思ってね)」
「あ……失念していたわ。たしかにあるわね……しかも2台」
「(ここより厳重だな……まあ、終わったし最後の局員はどこ?」
「うーんとね……」

 夢羽は再び探し始めた。
 私はその間に、貰ったナイフの確認をした。

「思ったより長いな……でも扱いやすいかも」

 右脇のホルスターから抜刀して、一振りした。

「さすが風羽ね。器用だわ」
「(いや、器用では普通こんな事できないからね。何かしらの理由がありそうだけど……特別な力とか?)」
「いずれわかる時が来るわ……風羽は器用だからね」
「……」

 私はナイフをホルスターにしまう。

「(それで? 最後の局員はどこ?)」
「あの交差点を左に曲がって、ひたすら真っ直ぐよ」
「(りょーかい)」

 最初の交差点を左に曲がり、そして進んでいると

「待って! そこの左から兵士が2人。対処して!」
「(そんな簡単に言わないで……よ!)」

 左から出てきた兵士の足を蹴り、うつ伏せに転ぼうとしていた所、顎に小銃のストックを当てた。
 転んだ勢いでストックに顔をぶつけた兵士は、そのまま気絶したようでピクピクと動いている。
 そして1人目が倒れたので、2人目も1人目に引っかかり、そのまま倒れて気絶したようだ。

「風羽、銃使うより棒使った方がよくない?」
「(発泡したらバレるでしょ。それに、人の形をした者に撃つのは抵抗あるんだよ……」
「あーなんかわかる気がする」

 1人目と2人目の兵士から物資を抜き取り、カバンに入れる。

「(さて、そろそろ着くんじゃない?)」
「うん、そうだね。あ、ここにも監視カメラあるから気をつけて」
「(はいはい……)」

 私は局員が閉じ込められていそうな牢を見る。

「……は?」

 監視カメラは破壊されており、そして1番の驚きは、牢が何かでぶった切られた後があったことだ。

「……風羽。つくちゃんをナイフに移動させて」

 夢羽の真剣そうな声を聞き、私はリュックを下ろし、そこからつくちゃんを呼んだ。
 そして、サバイバルナイフを見せて、ここに移動できるか聞くと、すごく嬉しそうにしながら移動してくれた。
 ナイフをまたホルスターに戻した。

「(……一体何がこれをやったの?)」
「こんな芸当できるのは、普通の局員ではないよ」
「(あ……局員なのは確定なんだ)」
「うん。おそらく……」

 夢羽が何かを言いかけると、

「あら~? 早い到着ですね~……キキキ」

 切られた牢の中から、大きくて長い黒い板のような剣を軽々と片手で持ち、それを肩に乗せて出てきた白銀の髪の少女が出てきた。
 髪は長く、そして見たことのない形をしていた。
 服は局員の制服だが、なぜかゴスロリ風に改造されていた。
 奇妙な笑い声と共に、ギザギザの歯がチラつく。

「ヘアゴムを使って髪を縛ってるのよ。あれはツインテールね」
「(いや待って。私以外に髪の長い子、初めて見たんだけど……)」
「そうだよねー……」

 私はホルスターに入れてあるナイフを左手で握り、目の前の少女を警戒する。

「そんなに警戒しなくてもいいわよ~? お話しましょう~? って言っても、話す余地は無さそうね~キキキ」

 銀髪の少女は、背丈より大きい黒い剣をブンブンと振り回した。
 すると、周囲の鉄格子の牢がいとも容易く切れ、金属音が鳴り響いた。

わたくしは、アイリス・ネフィリアよ~」
「私はムウ!」

 アイリスは、大きな黒い剣を私に振り下ろす。
 私はそれをナイフで受け流し、剣を蹴ろうとした。
 しかし

「うわ!? え? なになに!?」

 大剣を蹴ることができず、通過してしまった。
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