59 / 61
第3章 裏世界
22
しおりを挟む「やだなぁ、誤解してるよ」
シショウが困ったように肩をすくめ、笑いながら続ける。
「きみたちの勇気と結束力にはぼくも脱帽している。すばらしいよ。
だが、言わせてもらえば、とてもあぶなっかしい。はだか同然で、敵陣に乗り込んで行くようなものだからね」
「ええやんけ! 日本人は昔っから、ふんどし一丁で勝負するもんや!」
チャーシューがおなかをぱんっと叩いて、相撲の四股を踏んだ。
「いままではいいだろう。だが、いつまでもそうはいかない。あの交差点で思い知ったはずだ」
シショウの言葉に、部屋の空気が一気に五度は下がったかと思うほど、みんなの顔が神妙になった。
シショウが、さらに続ける。
「ぼくはきみたちに、幽霊『対峙』、つまり幽霊と相対する時に必要とされる、自分の身を守る方法を教えるために来た。そのかわり、みんなには、ぼくの仕事に協力してもらう」
「わたしたちに、何をしろって言うの?」
美玲ちゃんの質問に、シショウがめずらしくまじめな表情でこたえた。
「美玲さん、きみは裏世界を見て何を感じた?
怒り、恨み、憎しみ。そして、ありとあらゆる絶望……。
この世に強い執着を残したまま死んだ者の魂が、迷い込んでしまう裏世界。この現実世界に現れるバグ、つまりお化けや幽霊などのいくつかは、重なり合って存在する、彼ら裏世界の住人だと言われている。
それだけじゃない。この世界はじつに不完全で、ありとあらゆる場所に狭間があり、迷い込んだ魂を救う道の存在も、いまだ解明されていない……。
ぼくらが救うしかないんだ。ぼくの目指す革命は、その先にある」
シショウは視線を落とすと、テーブルの上で身構えているぼくにささやいた。
「ぼくの考えが正しかったことは、じき証明される……。ね、ミケーレ」
美玲ちゃんもぼくも、シショウを胡散臭いと感じている。
お化けや幽霊以上に、怖ろしいやつなのかもしれない。
でも、美玲ちゃんに霊が見える力がある限り、そして、天使のように慈愛あふれる心を持っている限り、これからも美玲ちゃんに試練が訪れるのはまちがいないと思う。
シショウは、そんなぼくらの運命を知っているのかもしれない。
もしかしたら、ママさんも……。
だけど、ぼくたちが進むべき道は、ぼくたちが最後に決める。
その道をゆくのなら、どんな困難が待ち受けようと後悔はないよ。
美玲ちゃんと一緒なら、きっとね。
12
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ベンとテラの大冒険
田尾風香
児童書・童話
むかしむかしあるところに、ベンという兄と、テラという妹がいました。ある日二人は、過去に失われた魔法の力を求めて、森の中に入ってしまいます。しかし、森の中で迷子になってしまい、テラが怪我をしてしまいました。そんな二人の前に現れたのは、緑色の体をした、不思議な女性。リンと名乗る精霊でした。全九話です。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
とじこめラビリンス
トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】
太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。
いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。
ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。
ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

【奨励賞】花屋の花子さん
●やきいもほくほく●
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 『奨励賞』受賞しました!!!】
旧校舎の三階、女子トイレの個室の三番目。
そこには『誰か』が不思議な花を配っている。
真っ赤なスカートに白いシャツ。頭にはスカートと同じ赤いリボン。
一緒に遊ぼうと手招きする女の子から、あるものを渡される。
『あなたにこの花をあげるわ』
その花を受け取った後は運命の分かれ道。
幸せになれるのか、不幸になるのか……誰にも予想はできない。
「花子さん、こんにちは!」
『あら、小春。またここに来たのね』
「うん、一緒に遊ぼう!」
『いいわよ……あなたと一緒に遊んであげる』
これは旧校舎のトイレで花屋を開く花子さんとわたしの不思議なお話……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる