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第3章 裏世界
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しおりを挟む「やだなぁ、誤解してるよ」
シショウが困ったように肩をすくめ、笑いながら続ける。
「きみたちの勇気と結束力にはぼくも脱帽している。すばらしいよ。
だが、言わせてもらえば、とてもあぶなっかしい。はだか同然で、敵陣に乗り込んで行くようなものだからね」
「ええやんけ! 日本人は昔っから、ふんどし一丁で勝負するもんや!」
チャーシューがおなかをぱんっと叩いて、相撲の四股を踏んだ。
「いままではいいだろう。だが、いつまでもそうはいかない。あの交差点で思い知ったはずだ」
シショウの言葉に、部屋の空気が一気に五度は下がったかと思うほど、みんなの顔が神妙になった。
シショウが、さらに続ける。
「ぼくはきみたちに、幽霊『対峙』、つまり幽霊と相対する時に必要とされる、自分の身を守る方法を教えるために来た。そのかわり、みんなには、ぼくの仕事に協力してもらう」
「わたしたちに、何をしろって言うの?」
美玲ちゃんの質問に、シショウがめずらしくまじめな表情でこたえた。
「美玲さん、きみは裏世界を見て何を感じた?
怒り、恨み、憎しみ。そして、ありとあらゆる絶望……。
この世に強い執着を残したまま死んだ者の魂が、迷い込んでしまう裏世界。この現実世界に現れるバグ、つまりお化けや幽霊などのいくつかは、重なり合って存在する、彼ら裏世界の住人だと言われている。
それだけじゃない。この世界はじつに不完全で、ありとあらゆる場所に狭間があり、迷い込んだ魂を救う道の存在も、いまだ解明されていない……。
ぼくらが救うしかないんだ。ぼくの目指す革命は、その先にある」
シショウは視線を落とすと、テーブルの上で身構えているぼくにささやいた。
「ぼくの考えが正しかったことは、じき証明される……。ね、ミケーレ」
美玲ちゃんもぼくも、シショウを胡散臭いと感じている。
お化けや幽霊以上に、怖ろしいやつなのかもしれない。
でも、美玲ちゃんに霊が見える力がある限り、そして、天使のように慈愛あふれる心を持っている限り、これからも美玲ちゃんに試練が訪れるのはまちがいないと思う。
シショウは、そんなぼくらの運命を知っているのかもしれない。
もしかしたら、ママさんも……。
だけど、ぼくたちが進むべき道は、ぼくたちが最後に決める。
その道をゆくのなら、どんな困難が待ち受けようと後悔はないよ。
美玲ちゃんと一緒なら、きっとね。
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