化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏

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第3章 裏世界

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「わたしの、知りたかったこと……?」


 美玲みれいちゃんのいぶかしげな視線をまっすぐに見返して、シショウがこたえる。

「きみのお父さんの研究……。女王蜂じょおうばち理論りろんについて」

 その言葉を耳にした瞬間、美玲みれいちゃんの表情が一変いっぺんした。
 わずかなおどろきのあと、わき上がる怒りをけんめいにおさえているような、いままで見せたことがない不思議な表情ーー。

 何事なにごとなのか、ぼくがたずねようとしたそのとき、一階からママさんの声が聞こえてきた。


美玲みれい、お友だちよ~。丁度ちょうどいいから、みんなで勉強を教えてもらいなさ~い」


 気が抜けるほど明るいママさんの声で、緊張した部屋の空気が一気に日常に戻った。
 続いて、どやどやと放課後ほうかご怪奇かいきクラブの面々めんめんが部屋に入ってくる。

「あら、美玲みれいちゃん、その方が家庭教師かていきょうしのお兄さんなの? うらやましぃ~!」
 シショウを見るなり、ひとみがハートマークになるもえちゃん。

「なんや、一緒に勉強せえって言われたけど、今日の約束はワイらが先やねんから、あんさんは、そこで待っとき」
 油ぎったメガネをずり上げながら、細い目でにらむチャーシュー。

「ぼくはかまわないけどね。タダで勉強を教われるなんて、とってもおとくじゃない? かれは綾小路あやのこうじ かおるくん。ぼくは蜂谷はちや 優斗ゆうとです。よろしく」
 わりとがめついことを言いながら、優斗ゆうとくんもシショウに頭を下げる。

「いや、きみたちの自己紹介はんでいる。それに約束したのは、ぼくが先だ」

 シショウはチャーシューたちにそう言うと、もえちゃんの手を取り挨拶あいさつをした。
「四聖《シショウ》 進《ススム》です。もえさん、元気になってよかったね」


「シショウ~?」


 チャーシューと優斗ゆうとくんが同時に叫んだ。

「あんさん、あのヒゲのおっさんか? あの夜と全然ちがうやないけ!」
 チャーシューが、メガネをずり上げシショウにめよる。

「そうなのよ。ストーカーなのよ。変装へんそうして家にまで押しかけて、協力しろとか頭おかしいのよ。もえも気をつけなさいよ」
 いまだシショウの手をはなさないもえちゃんに、美玲みれいちゃんが忠告ちゅうこくをした。


「やだなぁ、誤解ごかいしてるよ」



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