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第2章 ライオン☆ハート
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しおりを挟む窓の外に、白み始めた空が広がる。
ユキさんは、小さなライオンのぬいぐるみを見つめながら、話してくれた。
「七歳の頃のわたしは、内気で泣き虫で、いつもひとりで部屋にこもりきりだった。
そんなわたしに勇気をくれたのが、近所に住んでいた高校生のシホ姉ちゃん。
このライオンのぬいぐるみ越しに話しかけて、わたしを外に連れ出してくれたの。
シホ姉ちゃんは、とってもきれいでやさしくて、いつもみんなから慕われていて、わたしの憧れのお姉さんだった。
だからシホ姉ちゃんが病気で入院したときは、とっても寂しかったけれど、わたしはシホ姉ちゃんの快気を願って、退院するのを指折り数えて心待ちにしていたの。
だけどある日とつぜん、亡くなったと知らされて……。
ショックを受けたわたしは、またひとりで部屋にこもるようになった。
でも、そんなわたしとそっくりな、内気で泣き虫な弟ができたとき、わたしは弟のシホ姉ちゃんになると決めたんだ。あの元気で、やさしくて、みんなに慕われるシホ姉ちゃんみたいになるんだって……」
ユキさんは、かつてシホ姉ちゃんにもらった小さなライオンのぬいぐるみを両手で胸に押し当てて、改めて誓いを立てるように、そう言った。
ユキさんが続ける。
「数日前、廃病院の幽霊話をはじめて耳にしたとき、とっても嫌な胸騒ぎがした。
そんなはずがないと信じながらも、ひとりで確かめに行ったの。絶対に、あのやさしいシホ姉ちゃんのはずがないって……。
でも幽霊は、シホ姉ちゃんだった。
わたしはショックで、昔のように部屋に引きこもるようになり、ずっと立ち直れずにいた。
そしたらあなたが、優斗が敵討ちに行くって、教えてくれたから……」
ぼくは美玲ちゃんの頭の上で、腰を抜かすほど驚いてしまった。
「えっ、ユキさんって、優斗くんのお姉さんだったの?」
「いまごろ気付いたの?」とでも言うように、美玲ちゃんは素っ気なくうなづいた。
ユキさんが、美玲ちゃんと握手をする。
「あなたのおかげで、わたしはまた、憧れのシホ姉ちゃんのようにもどれた。いえ、もうシホ姉ちゃんも卒業ね。これからはみんなに慕われる、ユキ姉さんにならなくちゃ」
「ユキ姉ちゃん!」
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