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第2章 ライオン☆ハート
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しおりを挟むきゃあああああああっ!
とつぜん響いた悲鳴に、ぼくらはパニックにおちいった。
バランスを崩したチャーシューが、階段から足を踏みはずしたのをきっかけに、うしろにいた美玲ちゃんと優斗くんが、雪崩のように転がり落ちてくる。
なんとか二人を避け切ったぼくも、最後に転がり落ちてきたチャーシューからは逃げ切れず、その巨体の下敷きになってしまった。
「なななんや! 黒崎はん、どした?」
「わわ、わたしじゃないし! いま叫んだの、優斗くんでしょ?」
「ぼ、ぼくじゃない! 女の人の悲鳴だったよ!」
「はやくどいてよ~。痛いよ、潰れちゃうよ、内臓が口から飛び出るよ~」
「だれや、誰の声や? 蜂谷やないんか? 内臓ってなんやねん?」
「ぼくじゃないってば! ぼくはここにいるよ! な、内臓?」
「痛いよ、苦しいよ~。どけってば、この焼き豚~」
「みんな、落ち着いて! とりあえず立ち上がりましょう!」
みんなが立ち上がって、ようやくぼくはチャーシューの下敷きから逃れることができた。
優斗くんとチャーシューが、お互い、凍り付いたような顔を見合わせている。
「いったい、誰の声やったんや?」
「わからない……。なんか、子どもみたいなかわいい声で、痛いとか、苦しいとか……」
チャーシューが、すかさず電磁波センサーを見つめる。
「ヤバい、数値が乱れとる……。出おったで!」
その数値の乱れは、きっとぼくのせいだと思うけど、ぼくは踏みつぶされて腰が痛いから、もうその場から離れることもしなかった。
「みんな落ち着いて! さっきも数値は乱れたんでしょ? きっとその機械、壊れているのよ!」
美玲ちゃんが、必死にみんなを落ち着かせようとした。
「それより、さっきの悲鳴、ほんとに優斗くんじゃないの?」
優斗くんがこわばった表情で、顔をぶるぶると横にふった。
そのとき、そいつはまた現れた。
「あなたたち、生きている……人間なの……?」
階段の上から聞こえた、か細い声に、みんなが体を硬直させながら見上げる。
暗闇の中に、高校生くらいのお姉さんが、ひとり立っていた。
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