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第2章 ライオン☆ハート
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「ここが問題の廃病院の裏手や。見えるやろ? あの廊下の割れた窓から中に入るんや」
そう言ってチャーシューは、懐中電灯の光を下げて、一階の割れた窓を指し示した。
「幽霊が出ると噂されとる場所は、四階の診察室。
この病院は山の斜面に建てられとるから、正門からだと四階が入り口なんやけど、ワイらは裏の一階から入って、階段で四階まであがる」
「ど、どうして正門から入らないの? こんな廃墟の中を四階まで上がるだなんて……」
暗闇に青白くそびえる廃病院を見上げながら、優斗くんが震える声で言った。
「無理や。正門はぎっちり閉鎖されとるからな。
心配すんな、蜂谷。ワイは何度か一人で、ここから四階まで忍び込んだことがある」
「うそ、マジで? すごいじゃんチャーシュー!」
チャーシューの雪だるまのような丸い背中をばしばしと叩きながら、美玲ちゃんがほめたたえる。
そんなふたりを見て、優斗くんが首をかしげた。
「チャーシュー……?」
「もちろん昼間にやで。それもよく晴れた日限定でな。
四階は病院の裏手を囲む木々より高い場所にあるから、以外と日当りがええねん。のんびりしたもんや」
「昼間なら幽霊は出ないの? なら、昼間に出直さない?」
優斗くんの提案を、チャーシューがぴしゃりと却下する。
「アホか! 幽霊が出なきゃ、退治もできへんやんけ!
昼間に行ったのはただの偵察。それに、昼間なら幽霊が出ないという訳やない。ワイがひとりで、あっこの現場まで行けた理由は、ほかにあんねん。それは……」
ぎゃぁあああああっ!
とつぜん聞こえた悲鳴に、ぼくたちは、塩をぶっかけられたナメクジのように体を縮めた。
動画でも聞きえのある、瓦礫だらけの廊下を走る足音が聞こえる。
やがて廃病院の一階の窓から、大学生くらいの男がふたり、飛び出してきた。
「だ、誰か、誰か助けてくれ!」
そう言ってチャーシューは、懐中電灯の光を下げて、一階の割れた窓を指し示した。
「幽霊が出ると噂されとる場所は、四階の診察室。
この病院は山の斜面に建てられとるから、正門からだと四階が入り口なんやけど、ワイらは裏の一階から入って、階段で四階まであがる」
「ど、どうして正門から入らないの? こんな廃墟の中を四階まで上がるだなんて……」
暗闇に青白くそびえる廃病院を見上げながら、優斗くんが震える声で言った。
「無理や。正門はぎっちり閉鎖されとるからな。
心配すんな、蜂谷。ワイは何度か一人で、ここから四階まで忍び込んだことがある」
「うそ、マジで? すごいじゃんチャーシュー!」
チャーシューの雪だるまのような丸い背中をばしばしと叩きながら、美玲ちゃんがほめたたえる。
そんなふたりを見て、優斗くんが首をかしげた。
「チャーシュー……?」
「もちろん昼間にやで。それもよく晴れた日限定でな。
四階は病院の裏手を囲む木々より高い場所にあるから、以外と日当りがええねん。のんびりしたもんや」
「昼間なら幽霊は出ないの? なら、昼間に出直さない?」
優斗くんの提案を、チャーシューがぴしゃりと却下する。
「アホか! 幽霊が出なきゃ、退治もできへんやんけ!
昼間に行ったのはただの偵察。それに、昼間なら幽霊が出ないという訳やない。ワイがひとりで、あっこの現場まで行けた理由は、ほかにあんねん。それは……」
ぎゃぁあああああっ!
とつぜん聞こえた悲鳴に、ぼくたちは、塩をぶっかけられたナメクジのように体を縮めた。
動画でも聞きえのある、瓦礫だらけの廊下を走る足音が聞こえる。
やがて廃病院の一階の窓から、大学生くらいの男がふたり、飛び出してきた。
「だ、誰か、誰か助けてくれ!」
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