8 / 61
第1章 萌の部屋にいたものは
7
しおりを挟む
『……ウ・ル・サ・アァァァァァァイッ!!!』
目玉お化けは風船のようにほっぺたをふくらませると、とがらせた口からタバコ臭い息を吹き出した。
強烈な風が吹き荒れて、部屋中の物がガタガタと音を立てて震える。
風の直撃をくらった美玲ちゃんは、吹き飛ばされて尻餅をついてしまった。
しかもスカートがめくれて、パンツ丸見えという大失態。
「きゃああああ~! やめろ、このド変態ストーカーお化け! ミッケも、そんなところでかくれてないで、なんとかしなさいっ!」
美玲ちゃんに怒鳴られて、ようやくぼくは我に返った。
ぼくは人見知りで恥ずかしがり屋さんだから、ついついベッドの下から、お話が合うお化けさんかどうかの観察に、没頭してしまったらしい。
決して、怖くてかくれていたんじゃないよ。
「あああの、はじめまして! ぼぼぼく、化け猫のミッケと申します。どうぞ、よろしく……」
ただ、どういうわけか、声がぶるぶる震えているけど……。
「ばか! なに自己紹介なんかしてんのよ! こいつは悪いお化けなんだから、飛びつきなさいっ! かみつきなさいっ! 目ん玉を、引っかいちゃいなさぁ~い!」
「えええ? ぼく、お化けと戦うなんて話、聞いてないよ~」
目玉お化けは、さらにほっぺたを巨大にふくらませ、一気に息を吹き出した。
竜巻のような風が部屋の中を渦巻いて、ランドセルや帽子、目覚まし時計や筆記用具、枕やクッションなど、ありとあらゆる物がぐるぐると宙を舞う。
ぼくは洗濯機に入れられたぬいぐるみのように部屋中を飛び回り、美玲ちゃんは頭を抱えて部屋のすみにうずくまった。
と、いきなり風が弱まってきた。
ぼくは風に舞う木の葉みたいにゆらゆらと床に着地すると、酔っぱらいのような足取りで、美玲ちゃんに駆けよった。
「大丈夫? 美玲ちゃん」
「んん~。平気……かな?」
美玲ちゃんが、ゆっくりと顔を上げて辺りを見回す。
つられてぼくも見回すが、いつのまにか目玉お化けの姿はどこにもなかった。
「どうして消えちゃったんだろう?」
立ち上がった美玲ちゃんが、床に散乱した色々な物の中から、何かを拾い上げた。
「竜巻みたいな風にかき回されて、部屋中の物が宙を舞ったでしょ? わたし、ケガしないように、すかさずうずくまったら、ベッドの下にこれを見つけて……。
無我夢中で、あのお化けめがけて、投げつけちゃったのよね」
美玲ちゃんの手には、ガラスの割れた写真立てが握られていた。
「きっと、割れたガラスが、あの大きな目玉に刺さったんだね……。なんでベッドの下に写真立てがあるのか知らないけど、助かったね……」
目玉お化けは風船のようにほっぺたをふくらませると、とがらせた口からタバコ臭い息を吹き出した。
強烈な風が吹き荒れて、部屋中の物がガタガタと音を立てて震える。
風の直撃をくらった美玲ちゃんは、吹き飛ばされて尻餅をついてしまった。
しかもスカートがめくれて、パンツ丸見えという大失態。
「きゃああああ~! やめろ、このド変態ストーカーお化け! ミッケも、そんなところでかくれてないで、なんとかしなさいっ!」
美玲ちゃんに怒鳴られて、ようやくぼくは我に返った。
ぼくは人見知りで恥ずかしがり屋さんだから、ついついベッドの下から、お話が合うお化けさんかどうかの観察に、没頭してしまったらしい。
決して、怖くてかくれていたんじゃないよ。
「あああの、はじめまして! ぼぼぼく、化け猫のミッケと申します。どうぞ、よろしく……」
ただ、どういうわけか、声がぶるぶる震えているけど……。
「ばか! なに自己紹介なんかしてんのよ! こいつは悪いお化けなんだから、飛びつきなさいっ! かみつきなさいっ! 目ん玉を、引っかいちゃいなさぁ~い!」
「えええ? ぼく、お化けと戦うなんて話、聞いてないよ~」
目玉お化けは、さらにほっぺたを巨大にふくらませ、一気に息を吹き出した。
竜巻のような風が部屋の中を渦巻いて、ランドセルや帽子、目覚まし時計や筆記用具、枕やクッションなど、ありとあらゆる物がぐるぐると宙を舞う。
ぼくは洗濯機に入れられたぬいぐるみのように部屋中を飛び回り、美玲ちゃんは頭を抱えて部屋のすみにうずくまった。
と、いきなり風が弱まってきた。
ぼくは風に舞う木の葉みたいにゆらゆらと床に着地すると、酔っぱらいのような足取りで、美玲ちゃんに駆けよった。
「大丈夫? 美玲ちゃん」
「んん~。平気……かな?」
美玲ちゃんが、ゆっくりと顔を上げて辺りを見回す。
つられてぼくも見回すが、いつのまにか目玉お化けの姿はどこにもなかった。
「どうして消えちゃったんだろう?」
立ち上がった美玲ちゃんが、床に散乱した色々な物の中から、何かを拾い上げた。
「竜巻みたいな風にかき回されて、部屋中の物が宙を舞ったでしょ? わたし、ケガしないように、すかさずうずくまったら、ベッドの下にこれを見つけて……。
無我夢中で、あのお化けめがけて、投げつけちゃったのよね」
美玲ちゃんの手には、ガラスの割れた写真立てが握られていた。
「きっと、割れたガラスが、あの大きな目玉に刺さったんだね……。なんでベッドの下に写真立てがあるのか知らないけど、助かったね……」
13
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理なギャグが香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる