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終章:進むべき道

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 土手の上を歩いていると、草むらに空いた穴から、ひょっこりとモグラが顔を出した。

 じっとメグルを見つめている。

 「すごいなモグラ。とうとう本当に穴を掘るまでにいたったか。さっさと『畜生ちくしょう界』を卒業して『土竜モグラ界』に行ったらどうだ」

 メグルは目も合わさずにモグラの前を通り過ぎた。

 「バカを言うなメグル。親子の別れを邪魔したくなかったから、こうしてくぼみに隠れて見守っていたのだ。……旅に出るのかね?」

 のそのそと穴からい出てきたモグラが、メグルの背中を追いかける。

 「そうだ。『人間界』はまだまだ闇だらけ。片っ端から光を当ててやる!」

 「豪気だな。しかしお前さん、もう魔界の王である『天魔』に目ぇ付けられているだろうぜ。おいらの情報がなけりゃあ、どっから狙われるかわかったもんじゃないね。仕方ねぇから、このドリュウ様もついてってやらあ。……文句は言わせねぇぜ」

 そっぽを向きつつも、ぴんっと指でヒゲを弾きながら宣言するモグラ。

 これ以上、迷惑をかけたくなかった。
 何も言わずに出かけるつもりだった。

 しかし危険な道であることがわかってもなお、自分に協力すると言い切ったモグラの言葉に、メグルが反論できる訳もなかった。


 「……好きにしろ」 

 精一杯の、感謝の言葉――。


 モグラは満足げにうなずくと、メグルのそばに駆け寄り、その顔をのぞき込んだ。

 「よし! そうと決まりゃあ、ひとつ、しっかりと決めておかなくてはならんことがある。よいかメグル? これからはおいらのことをモグラじゃなくて、ドリュウ様と呼びたまえ」

 メグルがモグラに笑顔を向ける。

 「わかったよ、モグラ様」

 大声で笑いながら走り出したメグルを、モグラはあわてて追いかけた。

 「ドリュウだってのに! おいこら、聞いてるのかよ? 人間界管理人、六道リクドウメグル!」


 ふたりの行く手に、一本の道がのびている。
 この道の先に何があるのか、それはふたりにもわからない。
 ただ進むべき道と信じて、歩むのみである。




人間界管理人 六道リクドウメグル 輪廻メグル土竜モグラ 篇 完
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