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第9章 捜索
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しおりを挟む「お父さまからよぅ」
メグルは走りながら電話に出た。
「メグルか? トモルの母ちゃんのケータイからかけてるんだけどよ、お前さん、いま何処《どこ》だ?」
「何処《どこ》って……。どこだろう?」
広い川に架かる橋を走っていたメグルは、ぐるりと辺りを見渡した。背後に珍妙なデザインのビルが見える。
と、そのビル群の隙間からUFOが現れた。機体の側面に白い光を走らせながら夜空に浮かんでいる。
「ああ、あれは……。スカイツリーが見えるよ……」
「あほっ! そんなどっからでも見えるデカいもんじゃなくて、もっと目印になるもんねぇのかよ?!」
すると前方に、ライトアップされた巨大な提灯が見えてきた。
「わかった……。雷門……浅草寺だ」
「浅草か。ずいぶん走り回ったなぁ。よし、いまそっちへ行くからな!」
「待てモグラ、トモルは見つかったのか?」
「まだだ。だが新しい情報をつかんだぜ。例のサイトをハッキングしてわかったんだが、ほとんどが携帯電話からのアクセスだった。
スマホやガラケーはIPアドレスがコロコロ変わるから足取りが掴みにくいんだが、そのなかで唯一、固定IPでアクセスしていた奴がいる。ウチの学校のパソコンからだ」
「学校のパソコンから……?」
走りながらメグルは前髪を指に絡ませた。
(アクセスしてたのは大人ばかりと思っていたが、生徒の誰かが学校のパソコン室に忍び込み、書き込みをしたんだろうか……?)
「さらにそこから書き込んだやつのOSとバージョンがわかった。おいメグル、落ち着いて聞けよ? トモルたち家族への誹謗中傷を書き込んでいたのは、桜子先生だ!」
メグルは、前を走る桜子先生の背中を見つめながら聞き返した。
「……間違いないのか?」
「ああ、残念だが間違いねぇ……。この学校で最新のOSが入ったパソコンを使っているのは、最近、赴任して来たばかりの桜子先生だけだ。いじめを助長するようなコメントを、休み時間のたびに書き込んでいる。他のやつが桜子先生のパソコンを頻繁に使っていたら、目立ちすぎるぜ」
メグルは携帯電話をカバンに押し込むと、突然走るのをやめた。
「こらぁ、メグルくんどうしたのぉ? がんばってぇ!」
桜子先生がふり返りもせずに叫ぶ。
しかしメグルは走らなかった。
「桜子先生、すごい体力ですね? とても人間とは思えない」
桜子先生はその場で足踏みをしながら、何もこたえなかった。
「学校裏サイトを知っていますよね。大鏡の幽霊話をみんなにふれまわる前に、トモルを救うことは考えなかったんですか?」
桜子先生がぴたりと立ち止まり、ふうっと大きく息を吐いた。
「考える訳ないか。学校裏サイトにトモルたち家族のデマを書き込んだのは、桜子先生、あなたなんですから」
桜子先生は背を向けたままだ。
「それから、トモルをみんなで無視しようと書き込んだのも、先生ですね?」
桜子先生は黙っている。
「それだけじゃない! 学校裏サイトを作ったのも、アドレスとパスワードを保護者たちに意図的に流したのも、桜子先生ですよね!」
「……それがどうかした?」
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