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第7章 クラスメイト
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しおりを挟む「ちょっと顔貸しな、転校生」
それは放課後、メグルが帰り支度をしているときだった。
顔を上げると、タカシが数人の男子を引き連れまわりを取り囲んでいた。みな揃いのお面でも被っているかのように、尖った目をメグルに向けている。
適当にあしらうこともできたが、トモルと理解し合えなかったことに落ち込んでいたメグルは、そんな気分にもなれず言われるまま従うことにした。
タカシのあとについて雑草がうっそうと茂った体育館の裏道を歩く。うしろには数人の男子が、メグルが逃げ出さないよう見張りながらついて来ていた。
開け放たれた体育館の窓から、バスケットボールの跳ねる音や子どもたちの掛け声が響いている。もう部活動が始まっている時間なのだ。
と、そのとき、メグルの背後を歩いている男子たちが騒ぎだした。
「超でかいバッタ発見!」
「うわでけえ! 手の平ぐらいあるぞ」
「バカ! ぼさっとしてないで、さっさと捕まえろ!」
タカシの命令で一斉にバッタに飛びかかる男子たち。しかしバッタは、男子たちの股のあいだを器用にすり抜け、跳ねまわる。
放ったらかしにされたメグルは、ひとり溜め息をついていた。
「おーい、きみたち、早く用件を済ませてくれないか? バッタどころか、ぼくにまで逃げられちゃうぞ……」
散々追いかけ回してバッタ一匹捕まえられなかった一同が、息も切れ切れ、もとの配置へ戻っていく。
そして誰よりも息を切らしているタカシが、体育館の裏扉に続く石階段をよろよろと上がった。クラスのなかでも一段と背が低いタカシでも、ここならメグルより目線が高くなるのだ。
「え~……。おっほん!」
バッタ捕獲作戦の失敗をごまかさんばかりの派手な咳払いをしてから、メグルを見下ろして怒鳴る。
「さっきはよくもやってくれたな! お前、新入りのくせに生意気だ! 目立ち過ぎだぞ!」
さすがにメグルも、その言葉には納得せざるを得なかった。
クラスの女子と授業をさぼったり、ガキ大将に説教したり、確かに目立ち過ぎている。こっそり生徒になりすまして潜入捜査をする者のふるまいではない。
しかし、だからと言っていじめを見逃す道理もない。ましてや前世での関係とはいえ、我が子が標的になっているとなればなおさらだ。
「トモルも生意気だから、仲間外れにしたって訳か?」
メグルの言葉に、タカシたちは顔を見合わせ、ぷっと吹き出した。
「別にアイツは、生意気ってわけじゃないけどな」
「おれたちが手に入れた情報によると、あいつとはとても仲良くできないよなぁ」
男子たちが口々に言った言葉を、メグルは聞き逃さなかった。
「情報ってなに? ぼくにも教えてくれ!」
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