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第13話 確信にも近い信頼感
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しおりを挟む「ったく、何してるんだあいつは! このままじゃ本当に解体されちゃうじゃないか~っ!」
メグルは閉じ込められた特別個室のなかで、いつまでたっても迎えに来ないモグラにひとり苛立っていた。
ロープで括られた体を芋虫のように動かして、ストレッチャーから派手に落ちる。
その様子を見て、ベッドに座った如月紬がころころと笑った。
「メグルくん、イライラしてるね。誰かと喧嘩したの?」
「紬ちゃん、このままだとぼくらは、そのう……大変な目にあってしまうんだ。何とかしてぼくのロープを解いてもらえないかな?」
「うん、いいよ」
紬がベットからひょいと降りて、メグルの背中のロープの結び目をいじり始めた。
「どう、解けそう……?」
「ちょっと待って……えいっ!」
「うぎゃ!」
メグルは息が詰まりそうになった。
「紬ちゃん……きつくなってる……」
「あはは、冗談だよ。……えいっ!」
「かはっ……」
さらにロープがきつく締まり、メグルは声も出なかった。
そのとき、特別個室の引き戸が開いた。
現れたのは、白衣を着て口にマスクをはめた金山だった。
「そろそろ始めるぞ」
床でぐったりしているメグルをストレッチャーに乗せ、部屋を出る。
すると如月紬が、面白そうに後をついてきた。
「……にげろ……にげろっ!」
ついてくる紬になんとか声をかけようとするも、ロープで体が締めつけられて思うように声が出ない。
何もできないまま、とうとうメグルは廊下の突き当たりにある手術室へ運ばれた。
非常用の蓄電池を電源としたライトが手術台を明るく照らしている。
ベッドの脇に置かれた開創器や大量のメスが鈍い光を反射している。
そのなかで金山は注射の用意をしていた。
「……本当にやる気か? 解体手術なんかしたら……契約違反だぞ。魔鬼は直接人間に……手を出してはいけないんだ!」
声を振り絞るメグルに、金山は注射器のシリンジを指で弾きながら眉をひそめる。
「マキ……誰だいそれは? おれは手術の準備をして、きみたちを仮死状態にする注射を打つまでが仕事。臓器を取り出す手術は他の者がやるはずだ。この先はおれも見たことはない」
如月紬が、メグルの真似をしてとなりの手術台に寝転がる。
あまりに無邪気な行動に、メグルはめまいがした。
「ふたりで四千万……、確かに振り込まれている。子ども食堂の経営資金を差し引いても、お釣りがくるほど儲かる仕事だ」
スマートフォンの画面を見ながら金山が目を細めた。
「……あなた、スマホで誰かから……指示を受けてますね?」
不気味な笑みを浮かべているのが、マスク越しにでも伝わる。
「冥土の土産に教えてあげよう。おれも人身売買の依頼者は知らないし知る必要もない。メールの指示通りに動けば金が振り込まれるからね」
金山は躊躇なくメグルの腕に注射を打つと、体を括っているロープを解いた。
「ほら、きみの大事な肩掛けカバンはここに置いておくよ。次は……」
メグルのカバンを枕元に置くと、如月紬に目を向けた。
「きみは本当に変わった子だね。恐怖という感覚がないのか……?」
手術台の上でころころと笑う如月紬の口に、麻酔薬を染み込ませたガーゼをあてがい眠らせる。
スイッチを切られたように寝息を立てる如月紬の腕にも注射をして、金山は手術室を後にした。
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