二条姉妹 篇 人間界管理人 六道メグル

ひろみ透夏

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第13話 確信にも近い信頼感

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 うっすらと覚醒し始めたメグルの耳に、金山と木下が話し込む声が聞こえた。

 「おかしいじゃないか。予定では昨夜、小野寺から納品されるはずだった子どもだぞ。なんで今夜、お前が納品してくるんだ?」

 「さあ……。おれと一緒に誘拐した加藤誠司も未納ってことは、小野寺さん、そろそろやばいと思って逃げたんじゃないですか? それで坂田さん、この子をおれの所に寄越したんじゃ……」

 「まったく根性なしばかりだな、みんな長続きせず辞めちまう」

 メグルはストレッチャーの上に寝かされていた。
 体を起こそうとするも、体がロープで括られていて思うように動かない。
 肌身離さず抱えていた肩掛けカバンも見当たらなかった。


 「気が付いたかい?」

 スマートフォンに視線を落としていた金山が、メグルに目を向けた。

 「牧場で育てられたきみは、いま屠殺場とさつじょうにいるんだ。わかる? きみはこれからメスとノコギリで体をバラバラに解体されるんだ」

 落ち着いた様子で辺りを見回すメグルを見て、木下が奇妙な笑い声をあげた。

 「まだ事態が飲み込めないんじゃないですか。高校生だと目を覚ましたとたんにぶるぶる震えて、お漏らしするほど怖がりますけど……」

 金山も歪んだ笑みを浮かべている。

 「おまえが納品した昨日の女の子も、まったく怖がってなかったもんな。知らぬが仏とはまさにこのことだ」

 その言葉を聞いて、メグルが口を開いた。

 「もしかして紬ちゃんのこと? ここにいるの?」

 「……あとで会わせてあげるよ」

 金山はぶっきらぼうにこたえると、木下に笑顔を向けた。

 「しかしお前、雨宮香澄を駄目にしてからツイてるな。今月二人も納品できたじゃないか!」

 「あれは金山さんの麻酔薬が薄かったせいですよ。移送するまえに目を覚ましちゃって、すっかり観念してたからトイレにも行かせてやったんですけど、洗面所にあったカミソリで手首を切っちゃって……」

 「やっぱりエトレンよりセボフルランの方が良かったか。経費ケチったらいい仕事はできないな。……ところで雨宮香澄の死体はきっちり処理したんだろうな?」

 木下がおどおどと目を泳がせながらこたえた。

 「ああはい、もちろん……、大変でしたけど……」

 再びスマホをのぞいた金山は、ぱんっと景気良く手を叩くと、

 「よし、今夜〇時に解体手術を始める。お前はもう帰っていいぞ。金は振り込んでおくよ」

 と言って木下を送り出し、メグルに目を向けた。


 「手術の準備が整うまで、きみは特別個室で待機だ」

 メグルを乗せたストレッチャーを押して部屋を出る。
 月明かりが差し込む長い廊下に、キルキルとタイヤの転がる音が響いている。


 「いい夜だな……今夜は満月だ」


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