二条姉妹 篇 人間界管理人 六道メグル

ひろみ透夏

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第12話 紬の家

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 「紬ちゃん来なかった?」

 窓から差し込む夕日が食堂のなかをオレンジ色に染める頃、雨宮香澄が『つながり』に顔を出した。
 落ち着かない表情で辺りを見回している。

 「二条美華、まだその体を返していないんですか? ちなみに仇討あだうちは後日にしてください。いまぼくらは慣れない仕事で忙しくて……」

 危なっかしい手つきでキャベツの千切りをしているメグルに、苛々いらいらした様子で香澄が怒鳴った。

 「いいからこたえて! 昨日も来てなかったんだから!」

 「そういや、おいらも昨日の朝に会ったのを最後に見てねぇな……」

 しゃがんでじゃがいもの皮を剥いていたモグラが、ひょっこりと顔をのぞかせた。


 「あの子、きょうは小学校にも行ってないみたいなの。さっき紬の同級生に訊いたから確かよ」

 前髪を絡ませようとした指で、三角巾を巻いたおでこを掻きながらメグルが思案する。

 「まさか……いや、そんな……」

 「どうしたの?」
 急かすように香澄が訊ねた。


 「坂田佐和子が、一昨日の夜は金山に支援を打ち切られるって取り乱してたんだけど、昨日の朝は、もう吹っ切れたと言ってたんだ……」

 要領を得ないメグルの回答に、香澄が問いただす。

 「わかるように話して、どうゆうこと?」

 「坂田佐和子が昨日とつぜん、ぼくに配達を頼んできたんだ。あれだけ高校生にならないと配達させなかったのに……。まさか出荷の年齢制限をなくしたんじゃないかと……」

 雨宮香澄の顔が蒼ざめる。

 「まてまて慌てるな! あんな小さな子に配達させるなんて、流石さすがにそれはねぇだろ。ましてや家出もあり得ねえ小学二年生だぜ? とつぜん失踪なんかしたら、それこそ親が捜索願いを出して大騒ぎになっちまう」


 メグルも安堵したようにうなづく。
 「……だよな、あり得ない」

 しかし雨宮香澄の顔は、ますます蒼くなっていた。

 「あの子の家なら……まさかでも……。わたし、紬ちゃんの家に行ってくる。きみは……」

 雨宮香澄は厨房のメモに、地図を走り書きした。

 「わたしが自殺した家。子どもを誘拐する配達先はいくつかあるみたいだけど、わたしがわかるのは其処そこだけだから、とりあえず行ってみて!」


          *


 雨宮香澄は如月紬が住む二階建てのアパートにやってきた。


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