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第7話 あしながおじさんと女の子
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しおりを挟む「けっ! なぁにが出資者だよぅ、白いスーツなんて着てスカしやがって! 世の中の金持ちなんて大概が汚ねえことして儲けてんだからよ!」
モグラの愚痴に付き合いつつ、メグルはメモ書きを見ながらカートに食材を入れた。
ふたりは近くにある激安スーパーに買い出しに来ていた。
午前中だからか、客足はまばらだ。
「とんでもない偏見だな。でもまあ、あの金山って男に関しては言い当ててるかも知れない。星見鏡で星を数えてみたけど……。驚くなよ? 成就星が二つ、試練星が二十三個だ」
「に、に、にじゅうさんこ……? 確実に来世は堕界じゃねえか……」
「ああ、日常的に悪事や犯罪に手を染めていないと、ここまで試練星が増えることはない。あいつ、とんでもない悪党だぞ。……そこのもやし、取ってくれ」
モグラが一袋十五円の特売もやしを両手でつかみ取り、力任せに握りつぶす。
「そんな男に純情な佐和子さんは騙されて……。おいら絶対に佐和子さんを守るぞ! あの男の尻尾を掴んで、ぎゃふんと言わせてやるっ!」
「……とまあ、意気込んでみたのはいいものの、何から手をつければいいのか全くわからねぇな……」
手伝いもひと通り終え、何もすることがなくなったメグルとモグラは、公園のベンチにだらりと寝転んでいた。
高く晴れた青い空に、細い雲がたなびいている。
「金山の試練星が異常に多いのは確かだけど、子ども食堂で悪事を犯してるとは限らないしな……」
天気が良くて風もなく、十二月にしては暖かかな昼下がり。
目のまえの芝生広場には、レジャーシートを広げた若い母親が、幼い子どもと一緒にお昼ご飯を食べている。
「確かに……。こんな平和な公園のそばで悪事が繰り返されてるなんて、ちょっと考えられねぇよなあ……」
温もりのある陽ざしを全身に浴びながら、うとうとと睡魔に襲われそうになったとき、
「きみたち、昼間っから随分とだらしないんじゃないの?」
目を開けると、眩しい太陽を背にした雨宮香澄が、ふたりを見下ろしていた。
「……二条美華!」
あわてて体を起こして警戒するモグラを手で制して、メグルが訊ねた。
「あなたこそ学校に行かなくていいんですか? 雨宮香澄はいま高校生のはずでしょう?」
「そう、高校一年生。香澄でいいよ」
雨宮香澄はメグルのとなりに腰を下ろした。
「人間界の学校って、なんか非効率で義務的で……惰性で集まってる感じよね。つまらないから抜けてきた」
「香澄さん、学校に友だちはいました? その……本物の雨宮香澄に……」
メグルは子ども食堂に通い、自殺に至った雨宮香澄から何か掴めるのではないかと質問した。
「うん、わたし結構人気者みたいよ。学校では陽キャラを演じてたみたい」
「家庭はどうでした? 家には帰っているんでしょ?」
レジャーシートを広げた幼い子ども連れの親子から、楽しげな笑い声が聞こえる。
雨宮香澄はその光景を遠い目で眺めながら、ぽつりとつぶやいた。
「家庭はあんまり……しあわせとは言えないわね……」
それから雨宮香澄は黙ったまま、広場の親子を見つめていた。
その寂しそうな横顔に、メグルもそれ以上は何も訊けずに口を閉じた。
警戒していたモグラも、無言でベンチに横になる。
すると、広場の向こうから歓声をあげて走ってくる小さな女の子が現れた。
「……あっ、紬ちゃん」
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