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第6話 雨宮香澄
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しおりを挟む「わたしは人間界に干渉するつもりはない。何度も言うけど、人間界は何をするのも自由な世界。ただそのことで、ちょっときみに伝えときたいんだけど……」
雨宮香澄の体に憑依した二条美華が、身を乗り出してささやく。
「この食堂、楽しそうにしてる子どもが沢山いるけど、黒いオーラの子も何人か出入りしてる。ここへくるほど黒くなるのよ。本当にこの食堂が子どもたちの助けになる場所なら、少しはオーラが明るくなるはずでしょ?」
さらに小声で、メグルに耳打ちした。
「とくにあの女性……坂田さんを見るときオーラがとても黒くなる。この雨宮香澄の魂も、虚無感と絶望を合わせたような痛々しいオーラを出している」
メグルも小声で訊き返す。
「……どうして?」
「教えない」
「はあっ? 教えてよ!」
思わずメグルは声をあげてしまった。
「魂の記憶も読めるんでしょう?」
「わたしは一切干渉しない。でもきみ、こんな話を聞いたら助けたくて仕方ないんでしょ……? この小瓶からお姉さまを出してくれたら手を貸してあげるわ」
そのとき、厨房から満面の笑みで女性がやってきた。
「会ったばかりなのに、ずいぶん仲良くなったのね。何の話をしてるのかな?」
モグラもデレデレしながら金魚のフンのようについてくる。
「メグルよ、この菩薩様のような女性は坂田佐和子さんっていうんだ。ほとんど一人で子ども食堂を切り盛りして、もう六年にもなるんだって~」
「ドリュウさんは子どもたちに大人気だし、お手伝いも沢山していただけるから、ずっとここに居て欲しいくらいだわ」
「本当ですか? おいら子どもが大好きですから、ここで一生働こうかなぁ~なんてっ! いや、わたくしを必要としている部下たちが会社に沢山……」
モグラの妄言には聞く耳を持たず、坂田佐和子は雨宮香澄に話しかけた。
「香澄ちゃん、昨日は配達のお手伝いありがとうね。何も問題なかった……?」
「別に……。今日の配達は、そのおじさんに頼めば?」
モグラが授業中の小学生のように、ぴんっと真っ直ぐに手を挙げた。
「はいっ! 佐和子さんのためなら、おいらどこへでも配達に行きますっ!」
「う、う~ん……。ドリュウさんには食堂の手伝いが一番助かるわ。みんなもそれがいいわよね?」
子どもたちが一斉に歓声をあげた。
「……じゃあメグルくん、お姉さまのこと考えといてね」
雨宮香澄はコートのポケットに手を突っ込んで、盛り上がる子ども食堂をひとり後にした。
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