二条姉妹 篇 人間界管理人 六道メグル

ひろみ透夏

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第6話 雨宮香澄

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「四聖に住まうほどの魂が自ら進んで魔界に……。その飛鳥ってひとが、ぼくが封じた魔鬼ってわけですか……?」

 「三ヶ月前、飛鳥の魂の気配が失われていくのを強く感じた杏香とわたしは、最後に気配を感じた人間界へやってきた。わたしたちには魂の感情や記憶が読めるから、飛鳥の魂の消失がきみに関係してることも、すぐにわかった」

 「それでジムで魔鬼紳士をぶつけて、ぼくを殺そうとしたわけですね」

 ふたたび椅子に腰掛けながら、メグルが訊ねた。

 「殺すというより色々知りたかったの。管理人が魔鬼と争うなんて信じられなかったし、飛鳥の仇がどんな思考で魔鬼と対峙たいじしてるのかを……」

 二条美華は申し訳なさそうに言葉を続けた。

 「飛鳥が奪った体の魂が、きみの大切なひとになったのは知っている……。飛鳥にかわって謝るわ」

 頭を下げることさえしなかったが、二条美華の謝罪にメグルが沈痛な面持ちでこたえる。

 「……サヤカは自ら命を絶とうとした。それは魔鬼のいざないもあったろうけど、彼女が持つ因縁のせいだと後から知った」

 メグルがテーブルの上に置いた拳をぎゅっと握りしめる。

 「魔鬼が体を奪い、操っていたことはやっぱり許せない……。だけどそれで、ぼくがサヤカと出会えたのも事実なんだ……」

 強く握りしめたメグルの拳に、二条美華がそっと手を添えた。

 「辛い思いさせたよね。ごめんなさい」


 はっとして、メグルが訪ねる。

 「……そういえば、林美沙衣の体はどうしたんですか?」

 「もちろん、新しい体を手に入れたとき、林美沙衣の体は彼女に返した。体を出たとたん苦しそうに死にかけたけど、あの程度ならわたしの力で蘇生できる」

 「そうか……良かった……。彼女のお姉さんと約束したんだ。絶対に生きて連れ戻すって……」

 二条美華が不思議そうにメグルの瞳を覗き込む。

 「本心で喜んでいる……なんで他人の人生に、そこまで感情移入できるの?」

 「じゃあ彼女、もうお姉さんのところに帰ったろうね?」 

 二条美華はパイプ椅子の背もたれに寄りかかりながら、興味なさそうにこたえた。
 
 「そんなことまで知らない。またどこかで首を吊ってるかもしれないし、ビルから飛び降りてるかもしれない。でも彼女の体に憑依してたとき、彼女の魂はすごく後悔してたから、たぶん自殺せずに家に帰ったんじゃない?」

 「体を奪っておきながら、ずいぶんと無責任じゃないか!」

 メグルの怒りも意に介さず、少女が飄々ひょうひょうとこたえた。

 「彼女が自殺したのはわたしの責任じゃない。彼女の自由意思。そうゆう世界でしょ、人間界は」

 とがめるような厳しい目つきでメグルが訊ねる。

 「……その新しい体も、自殺者のものなのか?」

 二条美華はとたんに目を輝かせて、自分の胸に手をあてた。

 「可愛い子でしょう? これは雨宮香澄あまみやかすみ、生徒手帳に名前が載ってた。昨日の夜、とても黒いオーラを感じる家に行ってみたら、洗面所で手首を切って自殺してた」

 たまらずメグルはテーブルを叩いた。

 「あっけらかんと言うな! ちょっとは止めようとしないのか!」

 「わたしは人間界に干渉するつもりはない。何度も言うけど、人間界は何をするのも自由な世界。ただそのことで、ちょっときみに伝えときたいんだけど……」

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