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第5話 つながり
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しおりを挟む杏香と美華のことを考えながら何処へともなく歩いていたふたりは、やがて市内にある比較的大きな公園に行き着いた。身を寄せ合うように、ベンチで背中を丸くして座る。
しだいに西の空が赤く染まり、公園を囲む木立を黒く浮き立せていく。
目の前の芝生広場で走り回っていた子どもたちも、いつのまにか姿を消していた。
「へっくしょい……うう寒みい……。陽が落ちて一気に冷えてきたなぁ……。メグルよ、とりあえず東京にもどって、お前さんのアパートに行かねぇか?」
コウモリのようにマントにくるまったメグルが、頑なな表情で首を振った。
「駄目だ。まだ近くに二条美華がいるはずだ。杏香の魂が入った魔捕瓶も奪われているし、探し出してふたりの行動の目的をつきとめたい……。とはいえ、探偵事務所にも戻れないし、文無しだし、こうなったら本当にマンホールの中に潜るしかないか……」
「金がねえのは辛えもんだな……。せめてマンホールに潜るまえに、何か温ったけぇもん食いてぇけど……」
すると芝生広場の向こうから、ダウンコートを着た女性が歩いてきた。
恐る恐る様子を伺いながら、ふたりに声をかけてくる。
「あの……さきほどからずっとそこに居ますけど、何かお困りですか? もしよかったら、温かいごはんを食べませんか?」
*
女性が連れてきてくれたのは、公園の芝生広場に隣接する駐車場の一角に建てられたプレハブの平屋だった。
引き戸を開けて中ヘ入ったとたん、寒さで縮こまっていた体が一瞬で解けるほどに暖かい。
「さあどうぞ、そこにかけて」
石油ストーブの懐かしい香りがするなか、女性が席に座るよう促す。
室内は十二坪ほどの広さで、長テーブルが四つ置かれていた。
壁には動物の折り紙が貼ってあり、書棚には絵本や漫画、教科書などがたくさん並んでいる。
奥のカーペットが敷かれた子どもスペースでは、小学校低学年くらいの子どもたちが、頭を寄せ合いながら携帯ゲーム機で遊んでいた。
「ここって……?」
メグルが女性を見上げる。
「ここは『つながり』っていう、いわゆる子ども食堂です」
「いいんですか? おいらみたいな大人が一緒でも……」
モグラが申し訳なさそうに訊ねると、女性は自分のコートを壁のハンガーにかけながら笑顔でこたえた。
「全然構わないんですよ、むしろ親子で来てください! ここには年齢制限がありません。子ども一人で来てもいいし、親子でも、一人暮らしの高齢者の方でも、食事に困っている方がいっぱい来てくれた方が、みんなで楽しくご飯を食べれるじゃないですか」
女性が奥の厨房に入った。
カウンター越しに、女性が鍋を火にかける姿が見える。
まだ三十代前半くらいだろうか、優しい微笑みをたたえた膨よかな体型の女性は、まさにモグラ好みにぴったりだな……。と思いながらメグルが見上げると、予想通りモグラの瞳はキラキラと輝いていた。
「メグルよ、世の中にはこんなありがてえ場所があるんだな……。おいら感動したよ」
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