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第1話 再始動
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「なんだ、今日は大忙しだな」
メグルが席を立つ。
「だから言ったろ? こうやってオカルト探偵事務所の看板を掲げておけば、越界者や魔鬼の情報なんて座して得られるって訳よ。 ドリュー様の天才的な頭脳に恐れ入ったかね? ええ? ん?」
腰を押さえながら自画自賛するモグラを無視して、メグルはドアを開けた。
そこには、セカンドバックを小脇に抱えた小太りの中年男性が、眉間に深いシワを刻んで立っていた。
「さあさあ、こちらへ……。ほらメグル、茶ぁ出しなさいよ、茶を!」
モグラに促されて、小太りの中年男性がソファに腰をかける。
「……で、ご相談は何ですか? そんな怖い顔をなさって、さぞかし怖ろしい体験をされたんでしょう? 場所や状況など詳しくお聞かせください」
仏頂面で部屋を見回していた男が、まっすぐにモグラを見つめて静かに口を開いた。
「おまえら、俺のビルの倉庫で何やったんだ?」
「あ、」←メグル
「う、」←モグラ
しばし静寂の時間が流れる。
「二週間ほど前から誰だか知らん奴らが俺のビルに出入りしてると連絡があって来てみれば、勝手に粗大ゴミのような家財道具を持ち込んで、変な看板まで掲げて怪しげな商売始めやがって……」
「いやいや『大家』さぁ~ん、ちょっと話を聞いてくださいよ~」
モグラはすばやく中年男性の横に座ると、間髪入れずに弁明を始めた。
「使い道がなくて放置されてた倉庫に勝手に借り手ができたんですよ! わかります? 勝手に借り手! なんて素敵な言葉なんでしょう! それからさきほど怪しい商売とおっしゃいましたけどね、ついさっきもお客が来てたんですよ! これからドンドン儲かっちゃいますから、そうだ! 特別に売り上げのテンパーを上納しちゃいましょう!」
中年男性の肩をしきりに揉みながら、モグラが続ける。
「家賃は一月一万……いや、一・五万でどうです? 使い道のなかった倉庫が金を産むんです、悪い話じゃないでしょう? あぁそうだメグル、さっきの男の相談料、とりあえず敷金として大家さんにお渡しして……」
「え?」←メグル
「ん?」←モグラ
「ぼくは貰ってないぞ? お前が貰ったんじゃないのか?」
口をあんぐりと開けたモグラが、中年男性の首根っこを掴んで叫ぶ。
「……あんの野郎、このドリュウ様にタダ働きさせやがって! おい、おっさん、あんたも一緒に探しに行くぞ、ついて来い!」
猫のように首根っこを掴かまれた中年男性が、そのままの態勢で叫んだ。
「いいからおまえら、一刻も早くここから出て行け~っ!」
中年男性の剣幕に気圧されたふたりは、湖南オカルト探偵事務所(実はただの倉庫)から、一切の荷物を持ち出せぬまま一目散に退散した。
メグルが席を立つ。
「だから言ったろ? こうやってオカルト探偵事務所の看板を掲げておけば、越界者や魔鬼の情報なんて座して得られるって訳よ。 ドリュー様の天才的な頭脳に恐れ入ったかね? ええ? ん?」
腰を押さえながら自画自賛するモグラを無視して、メグルはドアを開けた。
そこには、セカンドバックを小脇に抱えた小太りの中年男性が、眉間に深いシワを刻んで立っていた。
「さあさあ、こちらへ……。ほらメグル、茶ぁ出しなさいよ、茶を!」
モグラに促されて、小太りの中年男性がソファに腰をかける。
「……で、ご相談は何ですか? そんな怖い顔をなさって、さぞかし怖ろしい体験をされたんでしょう? 場所や状況など詳しくお聞かせください」
仏頂面で部屋を見回していた男が、まっすぐにモグラを見つめて静かに口を開いた。
「おまえら、俺のビルの倉庫で何やったんだ?」
「あ、」←メグル
「う、」←モグラ
しばし静寂の時間が流れる。
「二週間ほど前から誰だか知らん奴らが俺のビルに出入りしてると連絡があって来てみれば、勝手に粗大ゴミのような家財道具を持ち込んで、変な看板まで掲げて怪しげな商売始めやがって……」
「いやいや『大家』さぁ~ん、ちょっと話を聞いてくださいよ~」
モグラはすばやく中年男性の横に座ると、間髪入れずに弁明を始めた。
「使い道がなくて放置されてた倉庫に勝手に借り手ができたんですよ! わかります? 勝手に借り手! なんて素敵な言葉なんでしょう! それからさきほど怪しい商売とおっしゃいましたけどね、ついさっきもお客が来てたんですよ! これからドンドン儲かっちゃいますから、そうだ! 特別に売り上げのテンパーを上納しちゃいましょう!」
中年男性の肩をしきりに揉みながら、モグラが続ける。
「家賃は一月一万……いや、一・五万でどうです? 使い道のなかった倉庫が金を産むんです、悪い話じゃないでしょう? あぁそうだメグル、さっきの男の相談料、とりあえず敷金として大家さんにお渡しして……」
「え?」←メグル
「ん?」←モグラ
「ぼくは貰ってないぞ? お前が貰ったんじゃないのか?」
口をあんぐりと開けたモグラが、中年男性の首根っこを掴んで叫ぶ。
「……あんの野郎、このドリュウ様にタダ働きさせやがって! おい、おっさん、あんたも一緒に探しに行くぞ、ついて来い!」
猫のように首根っこを掴かまれた中年男性が、そのままの態勢で叫んだ。
「いいからおまえら、一刻も早くここから出て行け~っ!」
中年男性の剣幕に気圧されたふたりは、湖南オカルト探偵事務所(実はただの倉庫)から、一切の荷物を持ち出せぬまま一目散に退散した。
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