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プロローグ
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みんなにモグラと呼ばれる男が諦め顔でソファに深く身を沈めたところに、メグルと呼ばれた少年がやってきて黒縁眼鏡を回収した。
「相変わらず愛想がない助手だねぇ、お前さんは。挨拶くらいしなさいよ、みっともない!」
するとメグル少年は、慣れた手つきでジャケットの内ポケットからさっと名刺を取り出し、わたしに差し出した。
「人間界管理局日本支部担当、管理人の六道輪廻(リクドウ メグル)です、どうぞよろしく」
そして得意満面の笑顔で付け足した。
「人間界を一度の人生で卒業した、二五〇〇年ぶりの超エリートです!」
「はあ、人間界の管理人……ですか」
するとモグラ男がわたしの手から即座に名刺を奪い取り、クシャリと丸めて口に放り込んだ。
「管理人のことは忘れてください! こいつは漫ふぁの読みすぎふぁんですよ、漫画ぁの! ほらアレです、 中二病とかなんとか……」
噛み砕いた名刺をごくりと飲み込んで続ける。
「このヘンテコな名刺も、わたしに憧れて真似して作ったんでしょう。ごっこなんですよ! まったく子どもなんだから……」
するとメグル少年が鬼の形相でモグラ男の襟首をつかんだ。
「調子にのるなよモグラ、探偵ごっこはお前だろ! だいたいなんでぼくが助手なんだ! それに管理人の名刺は煉獄長からもらった正式なものだ! お前の真似なんかじゃない!」
「ばかやろう! ジジイに気に入られてるからって、おめえこそ、いい気になってんじゃねぇぞ! 管理人の名を気軽に出すんじゃねえやい! おいらたちはもう魔鬼に狙われてるんだぜ!」
だいの大人が小学生くらいの少年と、訳のわからないことを口走りながら取っ組み合いの喧嘩をしている。
わたしはとたんに背筋が寒くなり、荷物をまとめて事務所から飛びだした。
裏路地を一気に走り抜けると、吹きすさぶ木枯らしに身を丸めながら、ふと振り返る。
もしかして、あれはわたしの幻覚か?
あの部屋はやはり倉庫で、もともと人なんて居なかったんじゃ……?
ぶるぶると頭を振って、ふたたび足早に歩き出す。
いや居たとしても、あまりにも浮世離れしたおかしな連中を見てしまった。奇怪というより哀れみを感じる。きっと自分を馬鹿にしていた連中も、こんな気分だったに違いない……。
薄暗い裏路地から、陽のあたる賑やかな大通りに出て、わたしは大きく伸びをした。
「完全に夢から覚めた! あの夜の不気味な出来事は、やっぱりおれの幻覚だったんだ。一切を忘れてしまおう!」
結局、当初の希望通り、わたしは二度とあの夜の話をすることはなく、あの夜の出来事に悩まされることもなくなった。
あの怪しげな二人組は、わたしの『悩み』をあざやかに解決してくれたのだ。
「相変わらず愛想がない助手だねぇ、お前さんは。挨拶くらいしなさいよ、みっともない!」
するとメグル少年は、慣れた手つきでジャケットの内ポケットからさっと名刺を取り出し、わたしに差し出した。
「人間界管理局日本支部担当、管理人の六道輪廻(リクドウ メグル)です、どうぞよろしく」
そして得意満面の笑顔で付け足した。
「人間界を一度の人生で卒業した、二五〇〇年ぶりの超エリートです!」
「はあ、人間界の管理人……ですか」
するとモグラ男がわたしの手から即座に名刺を奪い取り、クシャリと丸めて口に放り込んだ。
「管理人のことは忘れてください! こいつは漫ふぁの読みすぎふぁんですよ、漫画ぁの! ほらアレです、 中二病とかなんとか……」
噛み砕いた名刺をごくりと飲み込んで続ける。
「このヘンテコな名刺も、わたしに憧れて真似して作ったんでしょう。ごっこなんですよ! まったく子どもなんだから……」
するとメグル少年が鬼の形相でモグラ男の襟首をつかんだ。
「調子にのるなよモグラ、探偵ごっこはお前だろ! だいたいなんでぼくが助手なんだ! それに管理人の名刺は煉獄長からもらった正式なものだ! お前の真似なんかじゃない!」
「ばかやろう! ジジイに気に入られてるからって、おめえこそ、いい気になってんじゃねぇぞ! 管理人の名を気軽に出すんじゃねえやい! おいらたちはもう魔鬼に狙われてるんだぜ!」
だいの大人が小学生くらいの少年と、訳のわからないことを口走りながら取っ組み合いの喧嘩をしている。
わたしはとたんに背筋が寒くなり、荷物をまとめて事務所から飛びだした。
裏路地を一気に走り抜けると、吹きすさぶ木枯らしに身を丸めながら、ふと振り返る。
もしかして、あれはわたしの幻覚か?
あの部屋はやはり倉庫で、もともと人なんて居なかったんじゃ……?
ぶるぶると頭を振って、ふたたび足早に歩き出す。
いや居たとしても、あまりにも浮世離れしたおかしな連中を見てしまった。奇怪というより哀れみを感じる。きっと自分を馬鹿にしていた連中も、こんな気分だったに違いない……。
薄暗い裏路地から、陽のあたる賑やかな大通りに出て、わたしは大きく伸びをした。
「完全に夢から覚めた! あの夜の不気味な出来事は、やっぱりおれの幻覚だったんだ。一切を忘れてしまおう!」
結局、当初の希望通り、わたしは二度とあの夜の話をすることはなく、あの夜の出来事に悩まされることもなくなった。
あの怪しげな二人組は、わたしの『悩み』をあざやかに解決してくれたのだ。
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