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第13話 アユムの正体
02
しおりを挟む地下の泉の前でトモミはようやく足を止めた。
じっと泉を見つめている。
「まさかトモミ、この泉の中に……」
「大丈夫。何が起きても息を止めていれば平気だから、わたしのあとに続いて」
そう言うなり、トモミは地下の泉へ飛び込んだ。
以前、ここで溺れかけた記憶がよみがえる。しかしトモミの姿が水中に消えるのを見て、わたしも急いであとに続いた。
泉の中を進んでいくと、とつぜん足元に穴が空いたように、いきおいよく水底に吸い込まれる。わたしはトモミに言われた通り、ぎゅっと目をつぶり息を止めた。
しばらくして目を開けると、わたしは気を失うことなく神殿に立っていた。神殿は、以前のように暗闇に包まれてはいない。
ふいにわたしは手をにぎられた。いつのまにか、トモミがとなりに立っていたのだ。
「驚いた? これが龍の玉の正体よ。本当にあったのよ」
わたしはトモミが龍の玉と呼んだ、紅く輝くキリ星の攻撃船を見上げた。
見上げながら考えた。
なぜトモミは神殿の場所を知っているのだろうか?
なぜこれが龍の玉の正体だと、知っているのだろう……?
困惑するわたしの手を引いて、トモミが神殿の長い階段をかけ上がる。
階段を上りきると、直径一キロメートルもある巨大な攻撃船イヴは、すぐ目の前だ。
壁のように立ちはだかるその船体に、トモミが手をかざした。
「我はキリ星人の血を引く者なり。我を導け」
すると目の前に、人が入れるほどの大きさの穴が、するっと口を開けた。
「さあ入って。大事な話があるの」
まるで自分の家にでも招待するかのようにそう言うと、トモミは暗闇に包まれた船内に、ためらうことなく足をふみ入れた。
おそるおそる、トモミの後に続く。
暗く長い通路が、ドーム状の広間に通じていた。
ここが船体の中心なのだろうか。天井、壁、床、すべてに張りめぐらされたスクリーンの光で、広間全体がぼんやりと明るくなっている。
「龍の玉は宇宙からやってきた宇宙船だったの。ここがこの船のコントロールルームだよ」
何もかも知っているような口ぶりで、トモミが説明した。
ふとわたしは、部屋の中心にある船の操舵輪のようなハンドルの前に、ひとりの小柄な男が立っているのに気がついた。
金色の蛇の刺繍がほどこされた、大きな黒いマントを羽織っている。
背丈に合ないのか、マントの下半分を床に引きずっていた。
男が操舵輪で何かを操作すると、ドーム状の広間全体に張りめぐらされたスクリーンが、かなり昔に使われていた古代銀河文字で埋めつくされ、地上で感じたのと同じ地響きが起こった。
「数秒だけだが、空間転移装置も作動できるようになった。これで、きみの大事な緑が丘を破壊せずに地上に出れそうだよ……。ところで、どこへ行ってたんだい、トモミ?」
ふり返った男の顔を見て、わたしは息をのんだ。
「アユム……」
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