緑の丘の銀の星

ひろみ透夏

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第10話 御前会議

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「あなた方は、本当に地球人を知っているのですか……?」

 貴族院たちのけげんな視線が、一斉にわたしにそそがれる。

「キリ星人についても、本当に知っていると言えますか? わたしは本当のキリ星人を知らない。知っているのは、銀河連合の歴史に出てくる、野蛮やばんに描かれたキリ星人だけです」

 貴族院たちの顔が青ざめていく。
 反対にジランダ議長の赤黒い顔は、さらに赤く染まっていった。

「きさま……! 女王陛下の御前ごぜんで、銀河連合の歴史を愚弄ぐろうするのか!」

 ジランダ議長が席を立ち、わたしに詰め寄ってきた。近くで見ると、その体はわたしの背丈せたけの二倍はあろうかというほど大きい。

 思わず後ずさりしてしまった、そのとき――。


「おやめなさい」


 喧噪けんそうのなかを、するどくも透明感のある、ダイヤモンドのような声が走った。

 瞬間、みな凍りついたように動きを止め、あわてて顔をふせた。耳にするはずがない女王の声に驚き、緊張しているのだ。


「オラキル博士」

 一転して、女王はやわらかいきぬのようにしなやかな声色こわいろで続けた。

「あなたは地球人とキリ星人に、関係がないと言い切れますか?」

「それは調べてみないとわかりません。仮にあったとしても、彼らはすでに地球人として生きているのです。駆除くじょすべきではないかと!」

 わたしは顔をふせながらも力強く進言しんげんした。すると、ジランダ議長が鬼瓦おにがわらのような顔を上げて怒鳴った。

「生物博士でありながら、宇宙生物保護法を破るつもりか!」

 しかし女王の会話をさえぎったことに恐れをなしたのか、両手で口を押さえ込み、まっ赤に染まった顔を再びふせた。

「では博士、地球にもどって調査を続けてください。銀河連合議会を三日後に開きます。そのときに報告を。判断は議会にゆだねます。
 貴族院も、それでよろしいな?」

 貴族院たちが顔をふせたまま何度も大きくうなずくと、うすい幕の奥にいる人影がゆっくりと立ち上がり、しずしずと会議室をあとにした。


「これにて、会議を終了する!」

 親衛隊長の号令と同時に、緊張からとかれた会議室が大きなため息に包まれた。


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