34 / 63
第10話 御前会議
05
しおりを挟む「あなた方は、本当に地球人を知っているのですか……?」
貴族院たちのけげんな視線が、一斉にわたしに注がれる。
「キリ星人についても、本当に知っていると言えますか? わたしは本当のキリ星人を知らない。知っているのは、銀河連合の歴史に出てくる、野蛮に描かれたキリ星人だけです」
貴族院たちの顔が青ざめていく。
反対にジランダ議長の赤黒い顔は、さらに赤く染まっていった。
「きさま……! 女王陛下の御前で、銀河連合の歴史を愚弄するのか!」
ジランダ議長が席を立ち、わたしに詰め寄ってきた。近くで見ると、その体はわたしの背丈の二倍はあろうかというほど大きい。
思わず後ずさりしてしまった、そのとき――。
「おやめなさい」
喧噪のなかを、鋭くも透明感のある、ダイヤモンドのような声が走った。
瞬間、みな凍りついたように動きを止め、あわてて顔をふせた。耳にするはずがない女王の声に驚き、緊張しているのだ。
「オラキル博士」
一転して、女王はやわらかい絹のようにしなやかな声色で続けた。
「あなたは地球人とキリ星人に、関係がないと言い切れますか?」
「それは調べてみないとわかりません。仮にあったとしても、彼らはすでに地球人として生きているのです。駆除すべきではないかと!」
わたしは顔をふせながらも力強く進言した。すると、ジランダ議長が鬼瓦のような顔を上げて怒鳴った。
「生物博士でありながら、宇宙生物保護法を破るつもりか!」
しかし女王の会話をさえぎったことに恐れをなしたのか、両手で口を押さえ込み、まっ赤に染まった顔を再びふせた。
「では博士、地球にもどって調査を続けてください。銀河連合議会を三日後に開きます。そのときに報告を。判断は議会にゆだねます。
貴族院も、それでよろしいな?」
貴族院たちが顔をふせたまま何度も大きくうなずくと、うすい幕の奥にいる人影がゆっくりと立ち上がり、しずしずと会議室を後にした。
「これにて、会議を終了する!」
親衛隊長の号令と同時に、緊張からとかれた会議室が大きなため息に包まれた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
【完】ことうの怪物いっか ~夏休みに親子で漂流したのは怪物島!? 吸血鬼と人造人間に育てられた女の子を救出せよ! ~
丹斗大巴
児童書・童話
どきどきヒヤヒヤの夏休み!小学生とその両親が流れ着いたのは、モンスターの住む孤島!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
夏休み、家族で出掛けた先でクルーザーが転覆し、漂流した青山親子の3人。とある島に流れ着くと、古風で顔色の悪い外国人と、大怪我を負ったという気味の悪い執事、そしてあどけない少女が住んでいた。なんと、彼らの正体は吸血鬼と、その吸血鬼に作られた人造人間! 人間の少女を救い出し、無事に島から脱出できるのか……!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
家族のきずなと種を超えた友情の物語。
宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~
橘花やよい
児童書・童話
宝石店の娘・ルリは、赤い瞳の少年が持っていた赤い宝石を、間違えてお客様に売ってしまった。
しかも、その少年は吸血鬼。石がないと人を襲う「吸血衝動」を抑えられないらしく、「石を返せ」と迫られる。お仕事史上、最大の大ピンチ!
だけどレオは、なにかを隠しているようで……?
そのうえ、宝石が盗まれたり、襲われたりと、騒動に巻き込まれていく。
魔法ファンタジー×ときめき×お仕事小説!
「第1回きずな児童書大賞」特別賞をいただきました。
小さな王子さまのお話
佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』……
**あらすじ**
昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。
珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。
王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。
なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。
「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。
ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…?
『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』――
亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。
全年齢の童話風ファンタジーになります。
イブの夜に、ひとりきり
みこと。
児童書・童話
ニコラス少年は、クリスマスの夜にひとりおうちでお留守番。"毎年こうだ。みんなクリスマス・イブは楽しい日だって言うけれど、僕にはそう思えないな!"
家族が出かけてしまって取り残された少年の、将来の夢とは?
低年齢層向け、ほのぼのほっこりしたお話です。
※ノベルアップ+様にも私の別名、チーム ホワイトミルクで投稿しています。
猫のお知らせ屋
もち雪
児童書・童話
神代神社に飼われている僕、猫の稲穂(いなほ)は、飼い主の瑞穂(みずほ)ちゃんの猫の(虫の)お知らせ屋になりました。
人間になった僕は、猫耳としっぽがあるからみずほちゃんのそばにいつもいられないけれど、あずき先輩と今日も誰かに為に走ってる。花火大会、お買い物、盆踊り毎日楽しい事がたくさんなのです!
そんな不思議な猫達の話どうぞよろしくお願いします
心晴と手乗り陰陽師
乙原ゆん
児童書・童話
小学五年生の藤崎心晴(ふじさきこはる)は、父親の転勤で福岡へ転校してきたばかり。
引っ越し荷物の中から母親のハムスターの人形を見つけたところ、その人形が動き出し、安倍晴明と言い出した。しかも、心晴のご先祖様だという。
ご先祖様は、自分は偉大な陰陽師だったと言うものの、陰陽師って何?
現世のお菓子が大好きなハムスター(ハムアキラと命名)と共に、楽しい学校生活が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる