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第8話 龍の玉
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しおりを挟む「わたしはキリ星人最後の生き残り。そしてこれは、いまは亡き惑星キリから脱出した、最後の船なのです」
「きみが……キリ星人……? ばか言うな。彼らは大昔に絶滅している」
「疑われるのも無理はない。……順を追ってお話ししましょう」
ステネコはくるりと背を向け、かすむほどに高い天井を見上げながら話し始めた。
「半年ほど前の話です……。その夜もわたしは、この神殿の上にある丘で空一面に輝く星を眺めながら、いまは亡き故郷の星を思い描いておりました。するとひとつ、銀色に光る星がすーっと動いたのです。ゆらゆらと動きながら、それはしだいに大きくなり、ついにはこの丘に降ってきました。銀色に輝く星から灰色の人影が現れたとき、わたしの身の毛はよだちました。そう、銀河連合のバイオロイドです。
やつらは手にしたセンサーのようなもので、隠してあった洞窟の入り口をいとも簡単に見つけだし、中へと入って行きました。ネコの姿のわたしは何もできずに、ただただ神殿の無事を願うばかり……。やつらが夜空に飛び去るのを見送ってから、一目散に洞窟へ飛び込みました。
神殿に着いたわたしは我が目を疑いました。不思議なことに、神殿もイヴも無事だったのです。わたしはほっと、胸をなでおろしたものです……。
それから半年ほどして、再び銀河連合の宇宙船がやってきました。そう博士、あなたです。わたしは今度こそ神殿が破壊されるのではないかと、びくびくしながら博士の様子をうかがっていましたが、何日たっても、あなたは宇宙船の上から動こうとしません。
もうおわかりでしょう? わたしは博士の目的が知りたくて、あなたに近づいたのです」
ふり返ったステネコの黄緑色に光る目が、じっとわたしの目を見つめる。
思わずわたしは、後ずさりしてしまった。
「わ、わたしの目的は、この地球という惑星にいる外来生物の調査。確認後、母船にもどって報告する。それだけだよ」
「博士、これはわたしの推測ですが、たぶんあなたは利用されたのです。銀河的に有名な、あなたの生物博士としての知名度を……」
困惑しているわたしを見て、ステネコは続けた。
「いいですか? あなたがこの丘に不時着したのは偶然ではない。何日たっても迎えがこないのが証拠です。やつらは、あなたがこの神殿を発見し、銀河連合に報告するのを待っているのです」
「なぜそんな回りくどいことを。すでに銀河連合は半年も前に、この神殿を発見したのだろう?」
「博士、以前あなたは、宇宙生物保護法において、他の星からやってきた外来生物が、この星の生態系に影響を与えるほど繁殖していた場合、月の裏側にいる銀河連合の母船から攻撃船がやってきて、その生物は、すべて駆除されるとおっしゃいましたね」
「確かに言った。が、わたしが知るかぎり、この星の外来生物は、この『全宇宙生物図鑑』の中に捕らえたクモという生物と、キリ星人の最後の生き残りというステネコ、きみだけだ。
クモは隕石などに付着して、自然にこの星へやってきたと思われるし、きみだって意図的にやってきたとはいえ、たったひとりだけなのだから、銀河連合が攻撃船を出すなんてことはありえない!」
そう断言するわたしに、ステネコは小さく首を横にふった。
「残念ですが博士、キリ星人の子孫は、この星のいたるところにいるのです」
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