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第8話 龍の玉
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しおりを挟む「博士、ゆかいな仲間たちとの楽しい洞窟探検も、ここが終点です」
とつぜん聞こえた声にふり返る。暗闇に、黄緑色に光る目が浮かんでいた。
「楽しい洞窟探検って……。わたしは死にかけたんだぞ! 説明しろステネコ!」
わたしの怒鳴り声が暗闇の中をこだまする。ここはとても広いようだ。
「ですから、ここが伝説の龍の玉が眠る地。……五千年前に作られた、我らの神殿です」
バンッと、弾けるような音とともに、わたしはまぶしい光に包まれた。
暗闇になれた目のせいで、辺り一面まっ白に光って何も見えない。
それでも少しずつ、まっ白な世界に輪郭が浮かんでいく。
少しずつ、少しずつ……。
神殿の姿が、わたしの目の前に現れていった。
果てしなく続く大理石の白い床。
かすむほど高い天井に向かってそびえ立つ、二本の太い石柱。
その石柱にはさまれて、まっすぐにのびる長い階段――。
そして、その階段のさきに、それはあった。
祭壇にまつられるように置かれた『龍の玉』は、わたしの想像とはまったく別のものだった。
視界を埋めつくすほどの圧倒的な大きさで、遠く離れたこの場所にいてさえ、押しつぶされそうなほどの威圧感を放っている。
ルビーのように紅く輝く球状の船体に埋め込まれた、金色に輝く蛇の紋章。
それを見たとき、わたしは頭から急激に血の気が引いていくのを感じた。
「これは、もしや……」
「そうです博士。これが、かつてこの星を焼きつくした龍の玉の正体。そして、銀河連合をも壊滅寸前にまで追いやった悪魔の一族、キリ星人の攻撃船です」
キリ星人――。
銀河連合でも神話になりつつある、古い歴史に出てくる一族だ。
銀河の果てにありながら、急速に科学力を発展させたキリ星人。その発展は止まることを知らず、ついには銀河連合をもしのぐ、銀河一の軍事大国にのしあがった。
その力を背景に銀河連合への加盟をのぞんだキリ星人は、同時に銀河系の頂点である女王の退陣を迫り、その座を明け渡すよう要求する。
これに激怒した銀河連合は聖戦と称してキリ星人に宣戦布告。
しかし、のちに銀河大戦と呼ばれるその戦いで、銀河連合軍の星々は、キリ星人の圧倒的な力の前に、次々と降伏させられてしまう。
そのときに使用された、キリ星人の最強兵器……。
「攻撃船イヴです」
いつのまにかステネコは、わたしのとなりに二本足で立ち、船を見上げていた。
「直径一キロメートル。高速に回転しつつ、船体にあいた無数の穴から強力な火炎を放ち、船ごと突進して攻撃します。この船一隻で、小さな惑星の文明ひとつくらいなら容易に壊滅できるでしょう」
圧倒されているわたしを見て、ステネコは笑うように続けた。
「博士、ご安心を。この船は反重力装置が壊れていて、いまは飛べません」
「きみは何者なんだ? なぜ、地球にこんなものが……」
「やはり、博士は何も知らされていないようですね」
ステネコはわたしに向き直り、真剣な面持ちで言った。
「わたしはキリ星人最後の生き残り。そしてこれは、いまは亡き惑星キリから脱出した、最後の船なのです」
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