緑の丘の銀の星

ひろみ透夏

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第5話 はじめてのツナ缶

02

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「ふたりに重大な発表があるんだ」

 アユムがわたしの左どなりに座るのを見計みはからい、ついに例の話を切り出した。

 三人の頭がぶつかるぐらいに、とても小さな声でささやく。

「龍の玉が埋まっていそうな、洞窟どうくつを見つけたんだよ」

 ぽかんとするふたり。

 もっと驚いて大騒ぎしてくれると思ったわたしの方が、逆にその反応に驚いてしまった。

「龍の玉だよ? この丘の地下にあるっていう伝説の……。聞いてる?」

 いきなりトモミが、おなかをかかえて笑いだした。
 アユムはただ呆然ぼうぜんとしている。

「やめてよハカセ! 普段まじめな人がいきなり冗談言うから、アユムがパニくってるじゃない」

「本当なんだよ! この丘のええと……あそこらへんに、地下に通じる穴を見つけたんだ」

 目の前にひろがる草原のどこを指すでもなく、ふらふらと指先を泳がせた。

「どこどこ! どこで見つけたの? 案内して、早くっ!!」

 我に返ったアユムが、わたしの両肩をつかんで、がくがくとゆらした。オカルト的な話となると、とにかくアユムは人が変わる。

「待ってアユム! 洞窟の中は広いみたいだけど、入り口は小さな穴なんだ。穴を掘る道具がいるんだよ」

「なによハカセ、見つけたのは穴だけ?」

 トモミが肩をすくめた。
 アユムの興奮もおさまったようだが、その目はまだ輝いている。


「とにかく、その穴を掘ってみようよ。道具はうちで用意するからさ」

 アユムが言った。


「まあ、夏休みの思い出づくりにはいいかもね」

 トモミものってきた。


「よし。じゃあ各自用意して、一時間後に、この小型宇宙……じゃない。いつもの、この銀の玉の上に集合しよう!」


「らじゃあ!」とアユム。
「おっけい」とトモミ。
「にゃあ」とネコの声。

 ネコの声……?

 タイミングよく聞こえたネコの鳴き声に、わたしたちは笑った。

 わたしには声の主はわかっていた。ステネコが、しっかり計画を聞いていたのだ。



         *



 一時間後、最初に現れたのはトモミだった。

 いつも通り小型宇宙船をかけ上がったトモミの姿に、わたしは見入みいってしまった。


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