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第5話 はじめてのツナ缶
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しおりを挟む「ふたりに重大な発表があるんだ」
アユムがわたしの左どなりに座るのを見計らい、ついに例の話を切り出した。
三人の頭がぶつかるぐらいに、とても小さな声でささやく。
「龍の玉が埋まっていそうな、洞窟を見つけたんだよ」
ぽかんとするふたり。
もっと驚いて大騒ぎしてくれると思ったわたしの方が、逆にその反応に驚いてしまった。
「龍の玉だよ? この丘の地下にあるっていう伝説の……。聞いてる?」
いきなりトモミが、おなかを抱えて笑いだした。
アユムはただ呆然としている。
「やめてよハカセ! 普段まじめな人がいきなり冗談言うから、アユムがパニくってるじゃない」
「本当なんだよ! この丘のええと……あそこらへんに、地下に通じる穴を見つけたんだ」
目の前にひろがる草原のどこを指すでもなく、ふらふらと指先を泳がせた。
「どこどこ! どこで見つけたの? 案内して、早くっ!!」
我に返ったアユムが、わたしの両肩をつかんで、がくがくとゆらした。オカルト的な話となると、とにかくアユムは人が変わる。
「待ってアユム! 洞窟の中は広いみたいだけど、入り口は小さな穴なんだ。穴を掘る道具がいるんだよ」
「なによハカセ、見つけたのは穴だけ?」
トモミが肩をすくめた。
アユムの興奮もおさまったようだが、その目はまだ輝いている。
「とにかく、その穴を掘ってみようよ。道具はうちで用意するからさ」
アユムが言った。
「まあ、夏休みの思い出づくりにはいいかもね」
トモミものってきた。
「よし。じゃあ各自用意して、一時間後に、この小型宇宙……じゃない。いつもの、この銀の玉の上に集合しよう!」
「らじゃあ!」とアユム。
「おっけい」とトモミ。
「にゃあ」とネコの声。
ネコの声……?
タイミングよく聞こえたネコの鳴き声に、わたしたちは笑った。
わたしには声の主はわかっていた。ステネコが、しっかり計画を聞いていたのだ。
*
一時間後、最初に現れたのはトモミだった。
いつも通り小型宇宙船をかけ上がったトモミの姿に、わたしは見入ってしまった。
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