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メイド喫茶

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「お帰りなさいませ、ご主人様…」










ここ、メイド喫茶で間違いないよな?ネットで調べたら、ここのメイドでツインテールの女の子が可愛いので有名だったから、バイトの帰りに寄ってみたんだけど…。







可愛いハートが描かれたドアのすぐ隣りにいるのは、この場所に似合わない様ないかつい男…。









眉間に縦筋入れたサングラスの男…。多分、見た目40代だろうな。口髭を生やしている。頭は丸坊主で、何か龍の入れ墨が入っている様な…。口はまるで笑っていない。












「あの…、失礼します…」









恐れのあまり、つい、目の前の不可思議なメイド?のサングラスを外してしまった。












サングラスの奥は、人殺し専用の目ん玉が2個ついているな…。完全に俺を殺す気で睨んでいるじゃないか。もしかして、俺が先に、ご主人様ってこの人に言わなくちゃいけなかったのかな?俺とこの人の構図だと、俺は格下だから、この人の手下…みたいな立場になるのかな。











でも、この人、メイド服着てるんだよな…。だったら、やっぱりこの人が俺にご主人様というべき立場で間違いないな。









「すみません…」











サングラスを戻さないと、殺されるから、取り敢えず、戻しておこう。









「さぁ、中へどうぞ…。席へご案内しますね?」












ようやく笑ってくれたところ申し訳ありませんが、歯が全て金歯になっているのが、非常に恐いんですが。まさか、全ての歯が虫歯になって、金歯に変わった訳じゃないよね。けじめを取らされて、歯を抜かれたか、修羅場を幾度も経験して、その歯が次第に金歯に変わっていったとか。











店内は、明るく、学校の教室みたいな空間が広がっている。お客さんはいるし、普通の女の子のメイドもいるみたいだけど、何で俺だけ、このむさ苦しい男が出迎えてくるんだ。ひたすら、ついてないな…。











さて、席はここか。学校の机と椅子、そのままだな。










あ、メニューを開いてくれた、いかついメイドさん。何か勧めようとしているな。















「えぐりたての海鮮の上に、真っ赤なケチャップを、ドボドボと垂らした『ハート、きゅんきゅん』がお勧めですぜ?」











えぐるという言葉を使うな、貴方を完全にヤクザとしか思えなくなるだろう。もはや真っ赤なケチャップも、真っ赤な血と言われたとしか思えないな。ドボドボの表現も全く美しくないし、可愛くもないし。『ハート、きゅんきゅん』も心臓を締めつけて殺してやろうか、と言われた様な気がしてならない。









後、メイドという役に徹してくれ。ですぜ?じゃなくて、ですわ、とかにしておいて欲しい。











俺、間違ってるか?











もはや、何が正しいかわからないな。












ただ、俺の返答を待っているのか、このヤクザメイドが、俺に圧をかけ続けているのは間違いない。











「すみません、それを1つ」












頼まないと、殺される気がしたから、最初から俺に選択肢はないんだ。














「一緒に、牛の乳から搾り倒した牛乳、『アイラブにゅうにゅう』はいかがかな?」










搾り倒したという言語は、正しい言語か?搾ったでいいだろう。恐いな。牛から乳を搾った後、その場で殺処分したかと思うじゃないか。しかし、『アイラブにゅうにゅう』とか、何となくイラつく名前の飲み物を、俺は頼まなければいけないんだよな。







いかがかな?とか、完全にオヤジだぞ、その言い方。













「すみません、それも下さい」


 









「ご主人様、食後のデザートに、全ての皮を剥ぎ倒したバナナ、『ゾウさん』も頼んでみてね?」









名前が完全にアウトだぞ。しかも、デザートに皮を剥いたバナナだけか?今どき、小学生でも、給食に出されたら、ゴミ箱へゴーだぞ。









いや、言い過ぎだな…。ちなみに、また倒したを使ったな?剥ぎ倒すとかいらない言葉をつけ加えないでくれ。恐いじゃないか。見せしめとして、身ぐるみ剥がすって言ったのかと勘違いしてしまう。










「あ、すみません。それも下さい」













「ありがとう♡ご主人様!」











うっ!俺、今、思いっ切り殴られてないよな?意識が遠のいた様な気がしたが…。










今注文した食べ物が出されたら、秒で食べて、この監獄からの脱出を試みよう。金と時間のムダとは、正しくこの事だ。

















『メイド喫茶』…完
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