25 / 38
朝目覚めたら…So
しおりを挟む
いつもと変わらない朝。
目覚まし時計のベルを止め、気怠さを感じながらも、日々のサイクルに突き動かされる様に、体をベッドから起こした。
部屋が少し明るい。
遮光性のあるカーテンを買ったつもりが、外の陽の光を遮光できていない。それでも眠れているから、そのまま使ってはいる。
俺は、顔を洗い、歯を磨くため、寝室から洗面台へと移動したんだ。
そして洗面台で鏡に映る自分の姿を見て、驚愕したんだ。
あたい、女になってるじゃなーい!
冷静になれ、俺は30才のダンディな男のはずだ。少し生やした顎髭に会社にバレない程度に色を抜いて、決め顔を出会い系アプリに登録してるんだぞ?
プロフィールを更新して、写真を今のこの女の顔にした方が良いか?でも、女好きだから、恋愛対象は変えたくないから、引き続き女募集にしておこう。
大変態じゃないか。
「…そ、ぅ…」
あれ?声が出にくいな。どうなってる?
「So good(とてもいいね)!」
うっ!口から、思いもしない言葉が出たぞ?何でだ!?何で、英語で、とても良いなんて言葉が!
まずい、仕事に行かなければならない。まずは歯を磨いて顔を洗って、髭を…。髭は生えていないな。じゃあ、顎に付け髭をした方が良いな。面長の顔、目がぱっちりと大きく見開いていて、鼻先は可愛く丸まっている。唇はふっくらとしていて色っぽい。セクシーな女顔だ。そこにダンディさをアピールするため、顎髭のアレンジを加えて、新人類としてエントリーか?完全に水と油だ、合わないだろう。付け髭は止めておこう。
「So good(とてもいいね)!」
ちなみに、今、口を濯ぐコップを落としてしまい、ちくしょう、と言おうとしただけなんだ。声を出そうとすると、全て、英語で、とてもいいね、になってしまう。
リリリリ…ン!
あ?スマホの着信音!誰から電話だ?
先輩から電話だ、何だろう?朝から…。
『倉敷?ごめんな、朝から。昨日、うちの嫁が家出ちゃってさ…。それで今日…』
「So good(とてもいいね)!」
反射的に電話出ちゃったのが間違いだった!しかもタイミング悪く、不幸話!先輩、いいから、そのまま休んで下さいよ!
『…あれ?倉敷?今、何て…。まぁいいか。ついでに、俺の車のタイヤ、誰かに4つ共、盗まれちゃってさ…』
「So good(とてもいいね)!」
今日は休むから、今度の会議の資料作成を1人で進めていて欲しいとか、そんな事を言いたいんでしょ?嫁が出て行って、そしてタイヤ盗まれた話とか、絶悪なタイミングで不幸話を立て続けに告知してくるのは止めて欲しいな!
「…俺、お前に怨まれてんの?正直言ってくれよ。俺、お前の事気に入ってんのにさ。俺の今の悲しい気持ち、どう思ってるのか、教えてくれよ!」
「So good(とてもいいね)!」
あれれれ?俺、何で声を出そうとしちゃうのかな?黙っていれば、意に反したSo good(とてもいいね)は口に出ないんじゃないの?先輩の言葉に反応しなきゃいいのに、なぜ反射的に反応しちゃうのかな??いちいち聞いてくるこいつが一番悪いな!
「俺の事、主任から降格すればいいとか、そんな事思ってるんじゃないだろうな!?もし降格したら、お前、俺の事どう思うんだよ!?」
「So good(とてもいいね)!」
バカかこいつは。いちいち聞いてくんなっていうんだよ。今は、電話切ってそのまま枕に頭突っ込んで一日中寝とけって思ってるよ!
『ああ、そうかよ!お前にはもう何も話したくねぇ!』
じゃあ、今すぐに電話切って下さいよ。アナタと同等か、それ以上のレベルで不幸に陥ってる相手に電話してきてるのが、間違いなんだよ。
よし!電話切れたぞ。
さて…。
俺、何処に行けばいいのかな?
病院かな?
朝起きたら、女になってましたって言うのか?
女に整形手術をした病院を思い出させようとするだけかな?
So goodはどう説明するんだ?
紙に書いて先生に伝えたところで、精神病院に収容されるだけだろうな。
じゃあ…。
取り敢えず、会社行くか。
『朝目覚めたら…So』…完
目覚まし時計のベルを止め、気怠さを感じながらも、日々のサイクルに突き動かされる様に、体をベッドから起こした。
部屋が少し明るい。
遮光性のあるカーテンを買ったつもりが、外の陽の光を遮光できていない。それでも眠れているから、そのまま使ってはいる。
俺は、顔を洗い、歯を磨くため、寝室から洗面台へと移動したんだ。
そして洗面台で鏡に映る自分の姿を見て、驚愕したんだ。
あたい、女になってるじゃなーい!
冷静になれ、俺は30才のダンディな男のはずだ。少し生やした顎髭に会社にバレない程度に色を抜いて、決め顔を出会い系アプリに登録してるんだぞ?
プロフィールを更新して、写真を今のこの女の顔にした方が良いか?でも、女好きだから、恋愛対象は変えたくないから、引き続き女募集にしておこう。
大変態じゃないか。
「…そ、ぅ…」
あれ?声が出にくいな。どうなってる?
「So good(とてもいいね)!」
うっ!口から、思いもしない言葉が出たぞ?何でだ!?何で、英語で、とても良いなんて言葉が!
まずい、仕事に行かなければならない。まずは歯を磨いて顔を洗って、髭を…。髭は生えていないな。じゃあ、顎に付け髭をした方が良いな。面長の顔、目がぱっちりと大きく見開いていて、鼻先は可愛く丸まっている。唇はふっくらとしていて色っぽい。セクシーな女顔だ。そこにダンディさをアピールするため、顎髭のアレンジを加えて、新人類としてエントリーか?完全に水と油だ、合わないだろう。付け髭は止めておこう。
「So good(とてもいいね)!」
ちなみに、今、口を濯ぐコップを落としてしまい、ちくしょう、と言おうとしただけなんだ。声を出そうとすると、全て、英語で、とてもいいね、になってしまう。
リリリリ…ン!
あ?スマホの着信音!誰から電話だ?
先輩から電話だ、何だろう?朝から…。
『倉敷?ごめんな、朝から。昨日、うちの嫁が家出ちゃってさ…。それで今日…』
「So good(とてもいいね)!」
反射的に電話出ちゃったのが間違いだった!しかもタイミング悪く、不幸話!先輩、いいから、そのまま休んで下さいよ!
『…あれ?倉敷?今、何て…。まぁいいか。ついでに、俺の車のタイヤ、誰かに4つ共、盗まれちゃってさ…』
「So good(とてもいいね)!」
今日は休むから、今度の会議の資料作成を1人で進めていて欲しいとか、そんな事を言いたいんでしょ?嫁が出て行って、そしてタイヤ盗まれた話とか、絶悪なタイミングで不幸話を立て続けに告知してくるのは止めて欲しいな!
「…俺、お前に怨まれてんの?正直言ってくれよ。俺、お前の事気に入ってんのにさ。俺の今の悲しい気持ち、どう思ってるのか、教えてくれよ!」
「So good(とてもいいね)!」
あれれれ?俺、何で声を出そうとしちゃうのかな?黙っていれば、意に反したSo good(とてもいいね)は口に出ないんじゃないの?先輩の言葉に反応しなきゃいいのに、なぜ反射的に反応しちゃうのかな??いちいち聞いてくるこいつが一番悪いな!
「俺の事、主任から降格すればいいとか、そんな事思ってるんじゃないだろうな!?もし降格したら、お前、俺の事どう思うんだよ!?」
「So good(とてもいいね)!」
バカかこいつは。いちいち聞いてくんなっていうんだよ。今は、電話切ってそのまま枕に頭突っ込んで一日中寝とけって思ってるよ!
『ああ、そうかよ!お前にはもう何も話したくねぇ!』
じゃあ、今すぐに電話切って下さいよ。アナタと同等か、それ以上のレベルで不幸に陥ってる相手に電話してきてるのが、間違いなんだよ。
よし!電話切れたぞ。
さて…。
俺、何処に行けばいいのかな?
病院かな?
朝起きたら、女になってましたって言うのか?
女に整形手術をした病院を思い出させようとするだけかな?
So goodはどう説明するんだ?
紙に書いて先生に伝えたところで、精神病院に収容されるだけだろうな。
じゃあ…。
取り敢えず、会社行くか。
『朝目覚めたら…So』…完
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

声劇・シチュボ台本たち
ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。
声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。
使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります)
自作発言・過度な改変は許可していません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる