AZ雫over drive

sayure

文字の大きさ
上 下
17 / 36

高校生活

しおりを挟む
俺は、高校3年の三井竜馬。




可愛い彼女に出会うでもなく、熱い親友を作った訳でもなく、何かの武勇伝を作った訳でもない。




入り口から入って、出口から出る、ただそれだけの事だよ、高校なんか。




バイクに乗って速度出し過ぎて免停だよとか、女子に自慢げに言ってる奴が教室の前の方にいるけど、それは武勇伝でもなんでもないからな。ワイルド感を出そうとしてるみたいだけど、それは単純に運転が下手で、バイクのおあずけ食らってる恥ずかしいチンパンジーっていうだけなんだからな。




女子も話し合わせてあげるなんて、優しいな。将来は保育士希望だろう。





俺の席の後ろで、金髪に染めた袋小路が、女子に通学中に猫が弱ってたから介抱してあげて、遅刻したとか言ってるな。





お前の場合は、猫とか関係なく、今日、単純に遅刻しただけだよ。




お前昔、猫が歩道をゆっくり歩いていたら、腹空かしてると勘違いして余った弁当の残りを猫にあげようとしてたのは知ってるよ。




猫が食わないで通り過ぎたら、お前無理矢理食わそうとしてただろう。普通に動物虐待だからな。お前が猫を見つけたら、見なかったつもりで前を向いて通り過ぎろ。それが一番、猫のためだ。





授業のために教室に入ってきた倉木先生。胸の谷間を大きく開けて何かオイルを塗ってるのか、てかっている。腰をクネクネしながら、授業始めちゃうよ?とか言っているけど、もったいぶってないで、早く始めてくれ。口に激しい動きをつけて、唇に塗ったオイル?の輝きを俺ら生徒に浴びせたいんだろうけど、一番痛いのは、先生が男ということだろう。来世に期待だな。






昼の時間。





将来はプロのサッカー選手と言っている野々山。女子もすごーいとか言っているけど、この間の試合、お前のポジションは応援席だった事を思い出せよ。メガホン越しにお前の気を口から飛ばし、グランドの選手に注入するのがお前の役割だ。









俺だって、カッコいい事は言いたいけど、何もないんだよ。







夜、変質者を撃退し、女子を守ったとか言いたいけど、俺が実際守った事のあるものなんか、机に出しっぱなしだったチーズケーキを、冷蔵庫に仕舞って、ゴキブリから守ったとか、その程度だよ。でも、結局腐ってたな。腐食から守れてなかった訳だ。勿体なくて無理矢理食べたら、お腹を壊したから、お腹も守れなかったし。




どうでもいい、そんなくだらない事を言いたいんじゃない。俺は本当は、この高校生活で何か足跡を残したいんだ。





学校の花壇に強めの歩行をして足跡を残すとか、そんな事でもない。





雨が降ったら、そんな足跡消えるだろう。





いや、物理的な足跡の事じゃないんだ。




この高校生活の間に、何かをしたい。何かを手に入れたい。それも、印象に強く残るものでなくてはならないんだ。






そんな時に女子の佐々木が俺に近づいて、告白してくれたんだ…。







顔を赤らめて、ずっと前からと。








合唱部の楽器を盗み続けて、リサイクルショップに売り続けて金にしてたらしい。







よし、こいつを警察に突き出して、警察から表彰をもらおう。輝かしい高校生活の集大成として、この一手、頂くぞ佐々木!
しおりを挟む

処理中です...