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クローン
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私は、DK大卒の超エリート科学者である。
私はとある人物のクローンを作り出し、そこに人為的にある特徴の性格を作り出す事に決めた。
人から、徹底的に嫌われる人格を。
「先生、どんな人格をつけましょうか?」
「うん、目黒君、君は人のどういう行動が直感的に嫌いかね」
「え…?そうですね。私の出世の邪魔をする奴は、直感的に嫌いですね」
「うん、例えば、どういう行動の時かね?」
「私が会社のパソコンを売り捌いた時とか、密告された事があります」
「うん、君が駄目だね。完全に悪いよ。犯罪者だ。世間一般が嫌いになりそうなものが聞きたかったんだ。犯罪者限定じゃなくてね」
「人から嫌われる人格形成は、ある意味注目を浴びる。極端な嫌われ者は世間から注目され、行動を逐一監視される事にもなるだろう。その嫌悪感に共感が集まれば、その範囲は拡大する。あらゆるメディアを通して広められていく事になるだろう。そして、この国の緊急時、瞬時に国中に情報を広める必要に迫られた時、常時多くの注目を集めているそのクローンから情報を発信する事によって、一瞬で全国に情報を伝達する事ができる」
「良い事をするという事でも、注目は浴びそうですが」
「人は、良い出来事よりも、悪い出来事の方が、記憶に強く残る。良い人格じゃ、印象が弱いんだよ」
「人格だけでは正確性に欠けるのでは?」
「うん、場面により自動的に行動するパターンを決めてみよう」
クローンとは言え、アンドロイドみたいな感じになってしまうと、最初は注目を浴びるが、次第に興味が薄れ、気にされなくなる。所詮はロボットか、と勘違いされる。そうなると、今回の計画の意味がなさない。ある程度、行動パターンは遺伝子レベルでそういう行動に出やすい程度に収めておくべきだろうか。
「例えば、電車の中で嫌われるための行動パターンとか、どうでしょう先生」
「うん、まずは座席に座り、音楽をイヤホンで聴く」
「その音量は大音量で、イヤホンから音は大量にこぼれ、周囲の人達に不快感を与えるという事ですね?」
「うん、そうだね。それだけだと印象が弱いから、座席で足を組む。その足も、足の裏を見せて組む、足首を反対側の足の膝に乗せる組み方」
「ああ、足の裏を向けた隣りの席には、誰も座れないパターンですね。あれ、服汚したい奴は座りな、っていう脅迫みたいなものを感じますよねぇ?…あー、殺したくなりますよね」
「うん、目黒君。死んじゃ、ダメなんだよ。意味がないから、死なない程度のものを考えないと」
でも、足の裏見せて足組んで、殺される事はないだろうから、このパターンは入れておこう。
「そして、手で太ももを叩き、リズムを取り続ける」
「あ、あの目障りなやつですね。視界に入って、小刻みに動くから気になって仕方がないんですよね。プロのミュージシャンにでもなるつもりか、って思いますよね。そういう裏の努力っていうものを多くの人目に触れる電車でやる時点で、センスがないから、プロには絶対なれなさそうなのに、一番なれなさそうな奴がよくやるんですよね」
「うん、プロになれるなれないはわからないけど、目障りな動作には違いないね。そこも人々の記憶に残る1つのアクセントだね。入れておこう」
そのリズムも、僅かなズレがあり、一定じゃない。自らリズムという概念を変えてしまう様な、負の技術(センスなしかつ、不器用)それを、自惚れた表情で延々とやり続ける。精進するとは全く無縁の男。素晴らしい。素晴らしく、腹立たしいクオリティだ。
「乗客から注意を受けたらどうしますか、先生?」
「例えば、イヤフォンから大音量が出ているクレームに対しては、注意をする乗客がそのクローンに触れなければ、無視だろうね。イヤフォンの音で気付けませんという反応だね。軽い接触があったなら、注意した乗客を睨み、触れられた場所を、汚れを払う様にして、パッ、パッと叩く」
「強い接触があったら?」
「うん。怒り、強がる。強いと思わせる様な嘘を言い並べていく。弱いのが明らかに相手に伝わっているのに、本人はそれに気づいていない。その事が、さらに相手を苛立たせるんだ」
「なるほど、リアリティありますね!」
「うん。モデルは隣人」
「え…。じゃあ、その隣人のクローンを作ります?」
「うん?止めておくよ」
「え!?何で…?」
「腹立つから」
『クローン』…完
私はとある人物のクローンを作り出し、そこに人為的にある特徴の性格を作り出す事に決めた。
人から、徹底的に嫌われる人格を。
「先生、どんな人格をつけましょうか?」
「うん、目黒君、君は人のどういう行動が直感的に嫌いかね」
「え…?そうですね。私の出世の邪魔をする奴は、直感的に嫌いですね」
「うん、例えば、どういう行動の時かね?」
「私が会社のパソコンを売り捌いた時とか、密告された事があります」
「うん、君が駄目だね。完全に悪いよ。犯罪者だ。世間一般が嫌いになりそうなものが聞きたかったんだ。犯罪者限定じゃなくてね」
「人から嫌われる人格形成は、ある意味注目を浴びる。極端な嫌われ者は世間から注目され、行動を逐一監視される事にもなるだろう。その嫌悪感に共感が集まれば、その範囲は拡大する。あらゆるメディアを通して広められていく事になるだろう。そして、この国の緊急時、瞬時に国中に情報を広める必要に迫られた時、常時多くの注目を集めているそのクローンから情報を発信する事によって、一瞬で全国に情報を伝達する事ができる」
「良い事をするという事でも、注目は浴びそうですが」
「人は、良い出来事よりも、悪い出来事の方が、記憶に強く残る。良い人格じゃ、印象が弱いんだよ」
「人格だけでは正確性に欠けるのでは?」
「うん、場面により自動的に行動するパターンを決めてみよう」
クローンとは言え、アンドロイドみたいな感じになってしまうと、最初は注目を浴びるが、次第に興味が薄れ、気にされなくなる。所詮はロボットか、と勘違いされる。そうなると、今回の計画の意味がなさない。ある程度、行動パターンは遺伝子レベルでそういう行動に出やすい程度に収めておくべきだろうか。
「例えば、電車の中で嫌われるための行動パターンとか、どうでしょう先生」
「うん、まずは座席に座り、音楽をイヤホンで聴く」
「その音量は大音量で、イヤホンから音は大量にこぼれ、周囲の人達に不快感を与えるという事ですね?」
「うん、そうだね。それだけだと印象が弱いから、座席で足を組む。その足も、足の裏を見せて組む、足首を反対側の足の膝に乗せる組み方」
「ああ、足の裏を向けた隣りの席には、誰も座れないパターンですね。あれ、服汚したい奴は座りな、っていう脅迫みたいなものを感じますよねぇ?…あー、殺したくなりますよね」
「うん、目黒君。死んじゃ、ダメなんだよ。意味がないから、死なない程度のものを考えないと」
でも、足の裏見せて足組んで、殺される事はないだろうから、このパターンは入れておこう。
「そして、手で太ももを叩き、リズムを取り続ける」
「あ、あの目障りなやつですね。視界に入って、小刻みに動くから気になって仕方がないんですよね。プロのミュージシャンにでもなるつもりか、って思いますよね。そういう裏の努力っていうものを多くの人目に触れる電車でやる時点で、センスがないから、プロには絶対なれなさそうなのに、一番なれなさそうな奴がよくやるんですよね」
「うん、プロになれるなれないはわからないけど、目障りな動作には違いないね。そこも人々の記憶に残る1つのアクセントだね。入れておこう」
そのリズムも、僅かなズレがあり、一定じゃない。自らリズムという概念を変えてしまう様な、負の技術(センスなしかつ、不器用)それを、自惚れた表情で延々とやり続ける。精進するとは全く無縁の男。素晴らしい。素晴らしく、腹立たしいクオリティだ。
「乗客から注意を受けたらどうしますか、先生?」
「例えば、イヤフォンから大音量が出ているクレームに対しては、注意をする乗客がそのクローンに触れなければ、無視だろうね。イヤフォンの音で気付けませんという反応だね。軽い接触があったなら、注意した乗客を睨み、触れられた場所を、汚れを払う様にして、パッ、パッと叩く」
「強い接触があったら?」
「うん。怒り、強がる。強いと思わせる様な嘘を言い並べていく。弱いのが明らかに相手に伝わっているのに、本人はそれに気づいていない。その事が、さらに相手を苛立たせるんだ」
「なるほど、リアリティありますね!」
「うん。モデルは隣人」
「え…。じゃあ、その隣人のクローンを作ります?」
「うん?止めておくよ」
「え!?何で…?」
「腹立つから」
『クローン』…完
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