AZ雫over drive

sayure

文字の大きさ
上 下
8 / 38

崖っぷち芸能人

しおりを挟む
怪談話のお仕事、これをものにしなければ、私は芸能界から干される。絶対に成功させよう!

3。

2。

1。



「皆様、小林拓でございます。これからお話しする出来事は、私が高校1年の時…」



カメラが回っている後ろに確認のモニターがある。そこで、私の姿が確認できるのだが、目は虚ろ、顔色は悪いし、声は死にかけ、完全に怪談話に相応しい状態だ。テレビ関係者の皆さん、小林拓をよろしくお願いします。



「私が高校の同級生2人と国際競技場で行われたサッカーを観戦した夜の帰り道、道が混んでいたため、少しでも近道をしようと、脇道に入っていきました。その時、私の直感で嫌な予感がしたんですよね。何か、私が選ばない選択肢を誰かに誘われる様に選んでしまった、後悔の念。それは、この薄暗くしんと静まったこの細道を歩き進める度、深まっていきました」



「ほう…!?」




その『ほう』いるか?でも、ディレクターに反感を持っても仕方がない、集中、集中。



「その細道は10m毎に明かりの弱い街灯が1つ。それが15mに1つ、20mに1つと、距離が開き、街灯の明かりの届かない暗い場所が増えていき、周辺の物もはっきりと確認しづらくなっていったんです。家々の間隔も開き、その家の明かりも消えたまま。カラスの鳴き声が増え、まるで山奥へ向かっているかの様で、恐くなりました。ここは都心からそう離れていない場所、街も栄えているので、こんな場所、有り得ない。何かに取り憑かれ、とてつもなく恐い場所へ引っ張られているのではないか、そう思って引き返そうかという思いが強くなっていたその時、遠くの方で、消防の赤い電球が薄気味悪くポツンと光っているのに気づきました。その先に、小さな公園らしきものが見えたんです」



「眠い!」



眠い、じゃないよ。つまらない発言の広告塔か、貴方。テレビを観た人が一斉に最後まで聴かずにつまらないと判断するだろう。逆に、恐いな…本当かい…?で、何があった?とか気の利いたコメントはないものかね。



「カット!」



「あ、あれ…?」



「もっと簡単に言おうよ、恐さは二の次でいいからさ。さ、言ってみて」

3。

2。

1。



「皆様、小林拓でござ…」



「カット!」



「あ、あれ…?」



「簡単に言って」

3。

2。

1。



「みな、私、小林拓。これから話す出来事、高校…」



「カット!」



「あ…あれ?」



「来日したばかりの中国人か、お前!はい、もう一度!」

3。

2。

1。



「皆様、小林です。高校1年の時の話です」



「私が高校の同級生2人と国際競技場で行われたサッカーを観戦した夜の帰り道、道が混んでいたため、少しでも近道をしようと、脇道に…」



「カット!」



ぬぁにぃぃ??



3。

2。

1。



「皆様、小林です。高校1年の時の話です」



「私を含めて3人でサッカー観戦した帰りに近道しようと脇道に入っていきましたが、嫌な予感したんです」



「じゃあ、入るな!すぐに戻れ!」



それは、貴方の言葉に対して言いたいね。私の『恐い話』という領域に入ってくるんじゃないよ。今すぐに出ていけ!



いけない、ディレクターに反感を持ってはいけないな。落ち着かないと。





「ちなみに、これ生放送だからな…」







「え…!?」




『崖っぷち芸能人』…完

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

コントな文学『パンチラ』

岩崎史奇(コント文学作家)
大衆娯楽
春風が届けてくれたプレゼントはパンチラでした。

声劇・シチュボ台本たち

ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。 声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。 使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります) 自作発言・過度な改変は許可していません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

河童村

ごむらば
大衆娯楽
河童村という視聴者参加型のゲーム番組に参加した大学生はその番組である親子と出会う。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...