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夏休み

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高校になって、初めての夏休みに突入、8月に入った時に、僕は同じ高校に通う同級生の友達、葉山に呼ばれ、トラップバーガーに行ってみた。

店の中に入ると、サングラスをして、足を組む葉山が目についた。

「ずいぶん焼けたね、何処行って来たの?」

「ホワッツ?ああ…何?」

葉山の第一声に、若干の苛つきを感じながら、僕はもう一度同じ事を言ってみた。

「ハワイアンリゾートさ、ブラザー」

ハワイに旅行しに行ったんだね、ブラザー。いや、ブラザーでも何でもない、ただのお友達だよ、葉山。

「ハワイはどうだったの?」

「ナイス、テイストなスカイアンドスカイだったよ。実にグッジョブだったし、お馬ビジョン、オープンザトライだったかな」

全く何言っているかわからないけど、英語はうまく喋れてないみたいだから、死ぬほど恥ずかしい事になっているよ、と伝えるべきかどうか。いや、そのまま放置して、夏休み終わった2学期の始まりに、教室のみんなから指を差され、思いっきり恥かいてもらおう、と思った。

「ココナッツ飲んだ?」

「ココナッツは、何かな?」

ココナッツは、ココナッツだ。飲まなかったんだな、残念な奴だ。

「ハワイにどの位いたの?」

「6年間!」

バカかこいつは。それだったら、僕と君はほぼ初めましてレベルだよ。

「現地の人と話した?」

「ああ、毎日が強いサンライズにやられて、ボディがヒートアップして大変らしいぞ。だからさ、日焼け止め塗ってあげたらさ、ゲットアウエイって、感激されたぞ!」

サンライズは日が昇るだと思うけど、それで体が火照るのかな?日焼け止めを塗ってあげるに限らず、いきなり訳わからない奴に体触られたら嫌がられるだろう。それで頂いた言葉がゲットアウエイ。感動したところ申し訳ないが、あっち行けという意味だぞ、葉山。

「おい、ブラザー。お前にお土産、持って来たぞ?」

「あ、そうなの?何を買って来てくれたの?」

「プレゼントフォーユー!」

おお、ようやくまともに英語を使えた様だな葉山。夏休み明けの2学期に、それは使ないでくれ。全てが間違った英語を使ってくれた方が、より完全な嘲笑を受けられる。笑いを減らすな、葉山。

「マカダミアナッツ!」

ありがとう、葉山。そのパッケージは定番だね。ちなみにそのメーカーのマカダミアナッツは今や日本で至る所で販売されているから、全く珍しくないんだけど、僕にお土産を買って来る気持ちがうれしいよ。ありがとう。

「…あれ?箱開けたの?」

「イエス。宇佐美と半分こだ」

じゃあ、いらないという話を切り出して、この気の回らないおバカちゃんが傷つかないだろうか。いや、傷つくに違いない。わかった、わかった。とりあえず、持ち帰るとしよう。しかし、30個入り1箱を半分ずつより、10個入りを2箱買って来た方が、僕も宇佐美も、気持ちよく受け取れたはずだけど。

「ちなみに、時野は何処に行って来たんだ?」

「磯部温泉だよ」

「え?何処の国?」

「日本だよ」

「あ、日本が良かったんだ。時野って、日本好きだよな」

「まあね…」

「ハワイ、行かなかったんだ?」

「去年、行ったんだよ」

「…」

「嘘だよ」




『夏休み』…完
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