狂いステータス魔女子

マルメルグの街

「それは、至って普通の事の様に思えるけど、どうなの？」



「そうなの？そんなわけないよ！」



魔法使いの少女は腰掛け椅子を後ろに傾けて、軋む音を響かせて、天井を見る。そして、羽根ペンの羽根部位で自分の鼻先をくすぐる様に撫でる。

少年が言うには、街の中の公園内で同じ年頃の子供達が、見慣れない赤い礼服姿の青年と遊ぶ姿を幾度か目にした後、その子供達が嬉しそうにして自分の家に帰る。すると、その家族も、普段は見られない様な生き生きとした顔をし始めたという。

そして、その家族は街から一人、また一人として姿を消していった。

そこまでの話なら、特別不思議な事はない。

その赤い礼服の青年に遊んで色々な話をしてもらって、興奮して家に辿り着き、自分の家族に話をした。子供の喜ぶ姿を目にした家族は同じ様に喜び、良かったねと声をかけた。その家族が一人、また一人と姿を消したのは、単に出稼ぎに出た商人達ではないだろうか。

この辺りの街で暮らす者の大半は、出稼ぎに行く商人が多いはずだ。

魔法使いの少女は唸りながら、革靴の踵で床をコンコンと二度叩く。



「あんたの、もう知っていて当たり前の事を、まだ私に言っていないのかも知れない。そうじゃないと、私との温度感がこうも違うはずわないわ」



「僕はまだ11才だから、そんな難しい事を言われても、うまく説明できないよ…」



「あんた、私といっこしか変わらないじゃない。よくもさっきは私をババア扱いしたわね…」



「そうだ！ポーラットが、緑色の木の実をもらったって言ってた」



「緑色の木の実を？」



「うん！でも、それは気持ち悪い色をしていたから、すぐに捨てたんだって」



「何なの？捨てたんじゃない。アンタ、私をバカにしてるの？」



「バカにしてないよ！」



じゃあ、お前がバカなんだなとても言うかの様に、一瞬、冷やかな視線を男の子に向けた。それでも、何とか気を取り直して、魔法使いの少女は男の子に質問を始める。