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始まり
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「という事なんだよ…」
「何がよ?」
赤いレンガ壁に黒い屋根、煙突が二つ。この辺りでは珍しくもない何の変哲もない普通の家…に見えるが、戸を開ければ、釜で茹でられた動物や虫等の異臭が鼻をつき、部屋の至る所に大小の動物達の骨組み、煤で汚れて亡霊模様を描く壁、机の上に並べられた不気味な輝きを放つシリンダー、それらを目の当たりにして、正気を保つのは難しい。
しかし、その得体の知れない家の戸を叩き、室内の光景を見ても顔色一つ変えず、中の少女に声をかける少年が現れた。
「それが、僕の望みなんだ…」
「だ・か・ら、何がなのよ!?」
「何がって…」
「何?私がボケてるって言いたいの?あんた、私の家の戸を叩いて、私を見るなり、いきなり『という事なんだよ…』って言ったのよ!?そんなんで、意味わかる?」
「はい?」
「耳遠いわねー。身なりは私と姿が変わらないけど、中身はおじいちゃんなの?誰かと入れ替わった?大丈夫?おじいちゃん!」
「ああ、ごめん。ちょっと、驚いちゃって」
少年は不気味な家の中を見て、実は気絶寸前までしっかり驚いていた。そのため、序盤で言うはずの話の内容をすっ飛ばしてしまったのだ。当然と言えば、当然である。この少年は、髪型服装と身なりをしっかりと整えて、育ちの良さが窺える。その少年が、魔界にある様な一室を目の当たりにしたのだから。
「僕の街が、変なんだ」
「ふぅん。それで、私の家に来たの?街からそれなりに離れてるはずよ。もしかして、他の家と間違えていない?」
「合ってるよ。魔法使いのババアに会いに来たんだから」
「合ってないわよ!!あんた、ぶっ飛ばすわよ!?」
「もう、街に戻りたくない…」
少年が意気消沈して、口から重々しく声を吐く。しかし、魔法使いの少女は、片眉を神経質そうにピクピクと痙攣させ、苛つきは最高潮に達しようとしていた。
彼女はまだ12才程度、ババアと呼ばれるには後何十年とかかるだろう。
「君は、本当に魔法使いなの…?」
「こんな黒いマントしてる女の子、あんたの街で見た事ないでしょ?これ、黒魔牛の皮を剥いで作ってるのよ」
「ただの不気味ババアじゃないって事でいいよね?」
「どういう事!?さっきからババアをセットで話す意味が全くわからないわ。しかも、不気味ババアって。何に対しても、ババアはセット不要なのよ、わかる?坊や!?」
「僕は、坊やじゃない!!」
「私だって、ババアじゃないわ!?」
「わかったよ、ババアじゃない人。僕の話を聞いてほしい」
「な、何なの、その言い方!?あんたをこの場で灰にしてやってもいいのよ??」
二人とも悪気がない様だが、極めて口が悪い。これは性なのだろうか。無駄なやり取りが続いた後、魔法使いの少女が折れて、しぶしぶ話を聞く事になった。
「何がよ?」
赤いレンガ壁に黒い屋根、煙突が二つ。この辺りでは珍しくもない何の変哲もない普通の家…に見えるが、戸を開ければ、釜で茹でられた動物や虫等の異臭が鼻をつき、部屋の至る所に大小の動物達の骨組み、煤で汚れて亡霊模様を描く壁、机の上に並べられた不気味な輝きを放つシリンダー、それらを目の当たりにして、正気を保つのは難しい。
しかし、その得体の知れない家の戸を叩き、室内の光景を見ても顔色一つ変えず、中の少女に声をかける少年が現れた。
「それが、僕の望みなんだ…」
「だ・か・ら、何がなのよ!?」
「何がって…」
「何?私がボケてるって言いたいの?あんた、私の家の戸を叩いて、私を見るなり、いきなり『という事なんだよ…』って言ったのよ!?そんなんで、意味わかる?」
「はい?」
「耳遠いわねー。身なりは私と姿が変わらないけど、中身はおじいちゃんなの?誰かと入れ替わった?大丈夫?おじいちゃん!」
「ああ、ごめん。ちょっと、驚いちゃって」
少年は不気味な家の中を見て、実は気絶寸前までしっかり驚いていた。そのため、序盤で言うはずの話の内容をすっ飛ばしてしまったのだ。当然と言えば、当然である。この少年は、髪型服装と身なりをしっかりと整えて、育ちの良さが窺える。その少年が、魔界にある様な一室を目の当たりにしたのだから。
「僕の街が、変なんだ」
「ふぅん。それで、私の家に来たの?街からそれなりに離れてるはずよ。もしかして、他の家と間違えていない?」
「合ってるよ。魔法使いのババアに会いに来たんだから」
「合ってないわよ!!あんた、ぶっ飛ばすわよ!?」
「もう、街に戻りたくない…」
少年が意気消沈して、口から重々しく声を吐く。しかし、魔法使いの少女は、片眉を神経質そうにピクピクと痙攣させ、苛つきは最高潮に達しようとしていた。
彼女はまだ12才程度、ババアと呼ばれるには後何十年とかかるだろう。
「君は、本当に魔法使いなの…?」
「こんな黒いマントしてる女の子、あんたの街で見た事ないでしょ?これ、黒魔牛の皮を剥いで作ってるのよ」
「ただの不気味ババアじゃないって事でいいよね?」
「どういう事!?さっきからババアをセットで話す意味が全くわからないわ。しかも、不気味ババアって。何に対しても、ババアはセット不要なのよ、わかる?坊や!?」
「僕は、坊やじゃない!!」
「私だって、ババアじゃないわ!?」
「わかったよ、ババアじゃない人。僕の話を聞いてほしい」
「な、何なの、その言い方!?あんたをこの場で灰にしてやってもいいのよ??」
二人とも悪気がない様だが、極めて口が悪い。これは性なのだろうか。無駄なやり取りが続いた後、魔法使いの少女が折れて、しぶしぶ話を聞く事になった。
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