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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その313

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目を覆いたくなる。

酷い…。

神獣とも呼ばれた、ゼドケフラーの成獣が、まともに抵抗できなくなった東角猫トーニャ族を後ろから、前から爪と何の手加減もなく、ただひたすら体を貫いていく。

そして炎に包まれたゼドケフラーから炎が東角猫族に燃え移り、生きたまま焼かれている…。

こんなの…。

こんな風に死んでいくなんて、あまりにも、酷い。

この東角猫族は、ゼドケフラーであるお前達に手加減をしていたんだ。

それに気づいていたよな?

それを変な解釈をして、媚びようとしているとか訳のわからない事を言っていたよな?

お前達が神獣だなんて、認めねえ。

こんな…。

こんな奴らの様になりたかったのか?

なあ、パルンガ。

こんな奴らになるくらいなら、いっその事…。

幼獣のままで、体の限界がくるまで、生きられるだけ生きた方が、

マシだったんじゃないのか?

ゼドケフラーが神獣なんて、ウソだ。

こんな奴らが神獣だなんて、言われる訳がない!

こんな奴は悪魔と変わらない。

ただの、悪魔だ。



…。



早く、あのメベヘの戦いに戻してくれ。

俺は、アンタの様にはならない。

そうだよ、俺は言ったよな?

覚悟を見せてやるって。

やると言ったら、やってやる。

正直言って、俺はこの世界が嫌いなのは変わらない。

だけど、ここに住む全ての奴らが嫌いだなんて、もう思わない。

思う資格がない…。

それは、俺自身が別に人から好かれる様な人間じゃないからだ。

それを、実感したよ…。

俺はもう、元の世界に戻る資格がないのかも知れない。

俺の住む世界から、戻ってくるなって、言われてる様な気がするんだよ。

俺は、あそこで何の役にも立たなかった。

そして、この世界にいて、俺は気づかないうちに、どっちの世界にも合わない奴になっちまったのかも知れない。

それでも。

もう一度、俺の住んでいた街を見たい。

また、俺を友達と呼んでくれた仲間達と、話をしたいんだ。

どんなにくだらない事でもいいから。

あいつらの声を聞きたい。

もう、今はそれだけでいいんだ。

それ以上、望めない。

ただ。

その前に、俺はアンタに覚悟を見せてやる。

見ててくれよ。

俺は…。

アンタの代わりだ。

きっと、同じ様な間違いは犯さない。

さっきは、アンタの仲の良かったゼドケフラーの幼獣が、生きてるんじゃないかって、そう思えたけど。

実際はわからない…。

もしかしたら、そう思いたかっただけなのかも知れない。

だけど、今はそれを考えない。

俺は、メベヘを倒すって決めたんだ。

あいつは、ただ人殺しが好きななんだ。あいつの出番でもねえのに、いきなり後ろからクラファミースを殺しやがった。

そんな事をしやがるから…。

メルシィーニの心も、死んじまったじゃねえか。

メベヘは俺と戦って、俺が死ぬ事も望んでいる。

しかも、酷い死に方を望んでいる。

メベヘなんかがいるから、この世界はいつまで経っても報われないんだよ!

そんなに戦いが好きなら、お前に合わせてやる!

お前の好きな、

真剣勝負の、再開だ!
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