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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その312
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2人のゼドケフラーを倒したのか?
俺に力を宿してくれた東角猫が、最後に放った技…。
桜雅何とかって言っていたな。
桜雅の騎士から教わった技なのか、それとも、桜雅の騎士になって、自分で習得したのかは分からないけど。
俺の目が覚えているのか、少しずつ。じわりじわりと視界の記憶が、俺の頭の中に降りてくる。
全く無駄のない動きから繰り出された技は、空気抵抗も何も無視した様な、光速とも思える速さで、力強く正確無比で、あらゆるものを貫く様な…技だった。
しかも、2人同時にだぞ?
圧倒的じゃないか…。
今の俺よりも年上には感じるけど、せいぜい5、6才年上程度だろう。
その技は洗練されていて、まるで達人レベルと思わせる。
ただ…。
また、槍の矛先を相手に向けなかった。
…。
起き上がる前に、この場を離れるんだ。
ここでやられる必要はないんだから。
さあ…。
東角猫族。
そうだ、動くんだよ。さあ、こいつらを眺めていても仕方がないんだ、どんどん歩いていこうぜ。
ザッ…。
ザッ!
ザッ!
こいつらに真実なんか見えていないんだ、相手にしちゃいけない。
話が通じないんなら、話す事はないって、そんな事、あんたも言っていただろう?
そう…。
こいつらは、相手にしちゃ、いけない。
でも、良かった。
ここで、死ななくて。
きっと、アンタはいい奴なんだ。
この世界は腐っているからこそ、アンタみたいなのが必要なんだろ?
だから、生きなくちゃいけないんだ。
もっと。
もっと。
「!?」
何だ?
何かが、この空間を歪めた?
でも、いつの間にか元通りだ。
水面に何かを落としたかの様に、一瞬、この景色に波紋が広がった。
記憶の景色だから、曖昧なのかもな。
よくわからないけど、さっさと離れよう。
「何廬、ガッた…ま!」
何だ?
今、誰か、何かを言ったのか?
言葉になってなかったぞ。
…。
気味が悪いな。
さあ、早く行こうぜ。
「!?」
…何だ?
噴き上がる様に、背中が熱くなってくる。
熱くて、たまら…ねぇ…。
ぐ…ぐくっ!
ザシュッ!
あ…?
あ…。
お、俺。
息ができねえ。
い、痛く…て。
胸の中に、何か…仕込んで…きた、な。
「ガフッ!」
空に赤い霧が舞う。
それは、風に流されて、消えていく。
それでも、錆びた鉄の臭いがしつこく鼻を突いた。
ぎこちなく回る首を、必死に後ろ側に向ける。
すると、そこに片目を痙攣させながら、苦悶の表情を浮かべたゼドケフラーがいて、今にも倒れそうな体を立て直しながら、右腕をこっちに真っ直ぐに伸ばしていた。
ゼドケフラーの拳は、この東角猫族の背中に到達している。
そうか。
この、胸から何本か白く伸びるものは、ゼドケフラーの、爪…。
ザシュッ!
ザシュッ!
視界が揺れる。
もう、俺とこの東角猫族とは、途中で痛みを共有されなくなった。
これが…。
これが。
アンタの。
最期。
この2人のゼドケフラーが神獣らしく、真実を見極め、行動を正してくれる事を期待したのか?
それで。
それで、さっき肝心な時にまた、手加減しやがったって、言うのかよ!?
そんなんで、命を落として、お前は何の後悔もないのか?
あの仲の良かったゼドケフラーの幼獣は、もう死んでいたから、もういいって、そう思っていたのか?
いや、多分、まだ生きていたんだ。
この戦いの間、アンタから流れる感情を一瞬、拾ったんだ。
この戦いよりももっと先に、何かを期待するものだった。
ゼドケフラーを一瞬、思い浮かべただろう?
あの仲の良かったゼドケフラーだったんじゃないのか?
死んじまったら、何も変えられないだろうが。
バカ野郎…。
この2人のゼドケフラーは、同じじゃねえんだよ。
アンタの仲の良かったゼドケフラーじゃなかったのに。
本当に…。
本当に、無駄死にだった…。
何も期待が持てねえ奴相手に、戦いながら、相手を生かす方法なんて、探してんじゃねえよ。
アンタは生きなきゃいけなかったんだ。
もっと。
もっと。
俺と仲の良かった、あいつは。
死んだんだから…。
俺に力を宿してくれた東角猫が、最後に放った技…。
桜雅何とかって言っていたな。
桜雅の騎士から教わった技なのか、それとも、桜雅の騎士になって、自分で習得したのかは分からないけど。
俺の目が覚えているのか、少しずつ。じわりじわりと視界の記憶が、俺の頭の中に降りてくる。
全く無駄のない動きから繰り出された技は、空気抵抗も何も無視した様な、光速とも思える速さで、力強く正確無比で、あらゆるものを貫く様な…技だった。
しかも、2人同時にだぞ?
圧倒的じゃないか…。
今の俺よりも年上には感じるけど、せいぜい5、6才年上程度だろう。
その技は洗練されていて、まるで達人レベルと思わせる。
ただ…。
また、槍の矛先を相手に向けなかった。
…。
起き上がる前に、この場を離れるんだ。
ここでやられる必要はないんだから。
さあ…。
東角猫族。
そうだ、動くんだよ。さあ、こいつらを眺めていても仕方がないんだ、どんどん歩いていこうぜ。
ザッ…。
ザッ!
ザッ!
こいつらに真実なんか見えていないんだ、相手にしちゃいけない。
話が通じないんなら、話す事はないって、そんな事、あんたも言っていただろう?
そう…。
こいつらは、相手にしちゃ、いけない。
でも、良かった。
ここで、死ななくて。
きっと、アンタはいい奴なんだ。
この世界は腐っているからこそ、アンタみたいなのが必要なんだろ?
だから、生きなくちゃいけないんだ。
もっと。
もっと。
「!?」
何だ?
何かが、この空間を歪めた?
でも、いつの間にか元通りだ。
水面に何かを落としたかの様に、一瞬、この景色に波紋が広がった。
記憶の景色だから、曖昧なのかもな。
よくわからないけど、さっさと離れよう。
「何廬、ガッた…ま!」
何だ?
今、誰か、何かを言ったのか?
言葉になってなかったぞ。
…。
気味が悪いな。
さあ、早く行こうぜ。
「!?」
…何だ?
噴き上がる様に、背中が熱くなってくる。
熱くて、たまら…ねぇ…。
ぐ…ぐくっ!
ザシュッ!
あ…?
あ…。
お、俺。
息ができねえ。
い、痛く…て。
胸の中に、何か…仕込んで…きた、な。
「ガフッ!」
空に赤い霧が舞う。
それは、風に流されて、消えていく。
それでも、錆びた鉄の臭いがしつこく鼻を突いた。
ぎこちなく回る首を、必死に後ろ側に向ける。
すると、そこに片目を痙攣させながら、苦悶の表情を浮かべたゼドケフラーがいて、今にも倒れそうな体を立て直しながら、右腕をこっちに真っ直ぐに伸ばしていた。
ゼドケフラーの拳は、この東角猫族の背中に到達している。
そうか。
この、胸から何本か白く伸びるものは、ゼドケフラーの、爪…。
ザシュッ!
ザシュッ!
視界が揺れる。
もう、俺とこの東角猫族とは、途中で痛みを共有されなくなった。
これが…。
これが。
アンタの。
最期。
この2人のゼドケフラーが神獣らしく、真実を見極め、行動を正してくれる事を期待したのか?
それで。
それで、さっき肝心な時にまた、手加減しやがったって、言うのかよ!?
そんなんで、命を落として、お前は何の後悔もないのか?
あの仲の良かったゼドケフラーの幼獣は、もう死んでいたから、もういいって、そう思っていたのか?
いや、多分、まだ生きていたんだ。
この戦いの間、アンタから流れる感情を一瞬、拾ったんだ。
この戦いよりももっと先に、何かを期待するものだった。
ゼドケフラーを一瞬、思い浮かべただろう?
あの仲の良かったゼドケフラーだったんじゃないのか?
死んじまったら、何も変えられないだろうが。
バカ野郎…。
この2人のゼドケフラーは、同じじゃねえんだよ。
アンタの仲の良かったゼドケフラーじゃなかったのに。
本当に…。
本当に、無駄死にだった…。
何も期待が持てねえ奴相手に、戦いながら、相手を生かす方法なんて、探してんじゃねえよ。
アンタは生きなきゃいけなかったんだ。
もっと。
もっと。
俺と仲の良かった、あいつは。
死んだんだから…。
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