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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その309

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ゼドケフラーが、長く伸びたたくさんの竹を、苦もなく素早く避けながらこっちに迫ってくる!?

俺が今、視界を共有している人、俺に力を宿してくれた東角猫トーニャ族。

このゼドケフラーの成獣達と戦っている理由は、やっぱり、あの時から始まった因縁の続きか?

目の前のゼドケフラー達は、明らかに顔に怒りのしわを這わせている。

追いつかれたら、終わりだ。

東角猫族も景色が流れている様子を見る限り、相当速く走っている。

ここの地面は草がたくさん茂っていて、走りやすい足場じゃなさそうなのに、ゼドケフラーの走る速さも異常だ。

ゼドケフラーが地面を力強く蹴り、その度に背後から一気に距離を縮め、迫ってくる。

それを東角猫族が、竹を蹴り、高く跳んで空に逃げ、何とかゼドケフラーの攻撃をさせないでいる。

東角猫族は、ゼドケフラー達との距離を取ろうとしているみたいだ。



「往生際の悪い奴だ!我らゼドケフラーを手に掛けた代償を、その身に受けるがいい!」



やっぱり、あの事か…?

理由があるんだ!先に仕掛けたのは、あのゼドケフラーの幼獣なんだ!

何でそんな事をわからずに、ただひたすら東角猫族を狙うんだ!?



「その槍は飾りの様だな?このマガリクをかわしてそのまま去る事など出来はしないぞ!?」



俊敏さは東角猫族も高い。だけど、ゼドケフラーの成獣は俊敏さに加え、地面を蹴った時に変な加速力がある。多分、地面を蹴る力が強いんだ。

このまま逃げ続けても、いつかは追いつかれる。

もう向き合って戦えばいい!

相手は武器を持っていないんだ、手にある槍を使えば、きっと倒せる。



「カァアアアッ!」



「!?」



ゼドケフラーの目の色が変わった!?

何か仕掛けてくるっ!

東角猫族は危険を感じて竹を蹴り、高く跳んで距離を取った!

よしっ、これで取り敢えずは…。



「お前の動きは見切ったぞ、東角猫族!」



ゼドケフラーの体の内側が光り、それが外に放たれた瞬間、ゼドケフラーと同じ形をした姿の奴らが増え出す。

分身か!?

その分身が本体とは違う動きをしながら、襲いかかってくるっ!?

まずいっ!?

何体かの分身は、こっちの次の動きを予測し、先手を打って先回りする様な動きをしている!

逃げられない?

このままだと…。

やられるぞ!



ドォオンッ!



「!?」



ダァンッ!



「ぐぁあ…ッ!」



え?



東角猫族は何もない宙を蹴った。

何もない空を蹴ったのに、まるでそこに壁か何かがあったかの様に、体が一瞬止まる。そして、そこを蹴った反動でゼドケフラーの本体に勢いよく迫り、意表を突かれたゼドケフラーを体当たりで地面に叩き落とした。

あれ…?

俺に力を宿してくれたこの東角猫族の手足が、前よりも随分と長く感じる。

別人なのか?



「!?」



もう1人のゼドケフラーが襲ってくる!?



クルッ!



ビュンッ!!



「ゔッ…ぁ!」



東角猫族はゼドケフラーのもう1人を察知して、槍を回転させ、脇腹の下を突いた!

ゼドケフラーは痛みで片膝を突いて、攻撃された脇腹下を押さえて動けないでいる。

何だ?

このゼドケフラー達は弱いのか?

いや。

この東角猫族が、強いんだ。

強さが格段に増している…。

この東角猫族から伝わる心の温もり、息づかい、ものを見る時の目の動き、間違いなく、別人じゃない。

この東角猫族は、記憶の景色で今まで見せてきた少し幼いあの頃では、死んではいなかったんだ。



「その力…。貴様、桜雅おうがの騎士か?」



ゼドケフラーの成獣は何事もなかった様に倒れた状態から宙返りして、起き上がり、構えを取った。

もう1人のゼドケフラーも脇腹を気にしながらも、傷を負っていない様だ。

こいつらも、やっぱり強いんだ。

東角猫族は、そこに倒れているゼドケフラーはブリザールに襲われて、助けを請われたから、そうしたまでだと言っている。

そうか。

近くに倒れているゼドケフラーがいて、それを東角猫族がやったと勘違いして襲いかかっているのか。



「見苦しい言い訳をするとは、情けない奴だ」



「我らゼドケフラーが幼獣から成獣に変わる時、お前達は成長と呼ぶだろうが、我々は進化と呼ぶ」



「何もかもがまるで違うのだ。思考も身体能力も大きく向上する。そう、この世で選ばれし獣人じゅうにん、神獣人と呼ばれるほどにな」



「その様な権威ある種族を、お前達の様な容姿しか取り柄のない傲慢な種族に穢される訳にはいかない」



「どう意表を突いたのかわからないが、ゼドケフラーの成獣を倒す力があるものを、放置する訳にはいかない。ここで眠ってもらうぞ」



誤解だとしても、有無を言わさず押し通す行為を、傲慢とは言わないのか、って。この東角猫族は言っている。

ちゃんと確かめて…。

でも、倒れているゼドケフラーはもう死んでいるなら、それもできない。



「覚悟を決めて戦うといい。我らも決して容赦をするつもりなどない」



何だ…?

この大きく膨れ上がった威圧感は?

明らかにこのゼドケフラー達の様子が変わった。



それなのに…。



東角猫族から伝わる、この自信は何だ?





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