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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その302

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俺には、覚悟が足りなかったのかな…。

この世界は、俺の世界じゃない。

俺は、ここの世界の奴らからしたら、部外者だ。

そんな俺が、この世界を否定している。

この世界の人からしたら、いい迷惑なのかも知れない。俺にとっては最悪な世界、でも、ここに住んでいる人らはこれが当たり前?

それなら、早くこの世界から出ていけと、思っているんじゃないかな…。

その通りなのかも知れない。

でも。

さっき、俺に力を宿してくれた東角猫トーニャ族が言っていた。

俺の事が、好きだ、って。



その言葉が、くすぐられたみたいに恥ずかしいものでもあったけど。



そうか、と。



その言葉は。



少しだけ…。



いや、少しだけじゃない。



俺はうれしかったんだ。



何故だか、俺がまだ生きていてもいいんだ、そう言われた様な気がして。



うれしかった。



だから、ちゃんと俺の存在を伝えたいって、思った。



そんな言葉をかけてくれた、あんたに…。



俺の名前を…。



言ってみたいと思ったんだ。



母さんが幼い頃に同じくらいの年の子と揉めた時、ちゃんと自分の名前を、存在を知らせるべきだと、言っていたよな。



俺は、あまりはっきりと意思表示をしなかったんだ。



俺は次に会った時、はっきりと自分の名前を言った。お互いに名前を教えて、そして、お互いに認め合ったのか、俺はその子と仲良くなって、一緒に遊ぶ様にもなった。



この世界には、俺がもう1人いたんだ。



もう、死んでしまったけど。



この世界での評価は、すごく高くて。



自分が恥ずかしくなった。同じ人間なのに、こうも差ができるものなのかって。



でも、俺にも名前がある。



だから、俺に力を宿してくれた東角猫族に伝えたんだよ。



もう1人の俺を知っていたら、驚かれるかも知れない。



あの切り株街の連中みたいに、偽物と思われるかも知れない。



それでも、俺は…自分の事を気に入ってくれた人に、どうしても名前を伝えたくなった。



あの東角猫族は、きっと…いい奴の様な気がする。



俺は騙されやすい男だけど、この直感ははずれない。



だから、伝えたんだ。



俺の名前は…。



矢倉郁人やぐらいくと



俺、矢倉郁人なんだ…。



そして、俺が俺でいるために、その覚悟を伝えた。



そうしたら、俺に力を宿してくれた東角猫族が、その時に、急に後ろから抱き締めてきて、自分もまた、俺を完全に信用していなかったから、真実を伏せている部分があった事を伝えてきた。



当然だよな…。



俺は信用に足る男じゃないんだから。



でも、俺は…例え、東角猫族、あんたの力を借りなくても、やってやる。



メベヘ、お前は俺との決着を望んだ。



お前は、とても悪い奴だ。殺しが好きで堪らない奴なんだ。



俺がもう少し戦いを早く、命を奪う事なく終わらせていれば、小鈴ショウレイはクラファミースに戻れたんじゃないのか?



そして、メベヘには殺されていなかったのかも知れない。



そうしたら、戦いの途中からクラファミースを倒さない様に伝えてきたメルシィーニの思いも、救われていた。



俺の失態だ。



その責任は、お前との戦いを受けて、きっちり白黒つけてやる!



俺は、さっき東角猫族と離れて、今はずっと白い霧の中を漂っている。


いつ、あの誇闘会ことうかいに戻るかはわからない。



だけど、もう俺の覚悟は決まっている。



俺が持つ全ての力を使って、メベヘ、お前を必ず倒してやる!



真剣勝負、それがお前の望みでもあるはずだ。



そのお望み通り、やってやるよ。




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