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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その300

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『カダルド、こいつ…』



『ベルダイザーに負けた腹いせとは大した根性だな。貴族階級にある東角猫トーニャ族に、お前如きが』



『ガルルルルッ!』



この戦いに何の意味もない。ゼドケフラーの幼獣はベルダイザーとの戦いで意識が朦朧としているだけなんだ。

そんな事、戦いを見ていたこの東角猫族ならわかるはずじゃないか。



『ガルルルルッ!!』



止めろ、それ以上威嚇をするんじゃない!お前の敵は、ここにはいないんだ。

落ち着けよ…!



「!?」



人影が…?



『2人とも、落ち着くんだ…』



『俺達は別にゼドケフラーとは敵対関係にない。何かで気が立っているんだろう…』



もう1人、俺よりも少し若そうな東角猫族が現れた。こいつはゼドケフラーとの戦いを望んでいない。そして、この2人よりも冷静そうな感じがする。よし、いいぞ。

さあ、このまま戦いをしないで、引いてくれ。



『こいつ、ベルダイザーと戦って負けたんだ。俺達がいなかったら、死んでいただろうに、今度は俺達に矛先向けやがって』



『そうか…』



『さあ、下がるんだ、ゼドケフラー。俺達に恨みがないのなら、この戦いは無用だ』



そうだ。この戦いに意味なんかない。

この戦いにどちらが勝っても、それが何の意味がある?何もないんだ。

どっちも、引け。



『ガルルルルッ!!』



ゼドケフラー!?

何で、威嚇を続けるんだ?

ベルダイザーに負けたその姿を見られたからなのか?少なくとも、この2人の東角猫族には負けないって、それを証明したいのか?

この2人に盾突いても、お前がベルダイザーに負けてしまったって事実は変わらないんだ。

それとも、ベルダイザーとの戦いの邪魔をされたと思っているのか?確かに、この2人が目についたから、ベルダイザーは目の前のゼドケフラーに止めの攻撃をせず、去っていった。

それなのか?

だから、怒っているのか?



『ガルルルルアッ!!』



「!?」



ゼドケフラーの幼獣は抑えられない怒りのまま、地面を蹴り、1人の東角猫族の首元に向かって牙を剥き出しにした!?

ゼドケフラーの突進にその東角猫族は反応が遅れて、相手の勢いに気圧されたのか、腕が鉛にでも変わった様に、重そうに槍を少し上に持ち上げただけだ。

ダメだ、このままだとやられる…!



バシィッ!!



『グァオッ!?』



さっき現れた東角猫族が、噛みつかれそうな仲間を助けようと、跳ねて体を浮かし、襲いかかるゼドケフラーの横顔を両足で蹴り飛ばした。

反応がいい。

この東角猫族は、他の奴らより力が上だ。



『ガウアウ…ッ。こ、殺してやるドッ!』



『バカな事を。お前がそんな行動を取ると、問題になるぞ』



ザザザザザッ…!!



ゼドケフラーが背を低くして、東角猫族3人の周りを、草の茂みから体を見え隠れさせながら、四つ脚で駆け回り始めた!



『こいつ…!?』



『ガハハハッ!ベルダイザーが無理なら、魔力のあるお前達を試してやるドッ!』



このゼドケフラーの幼獣は、獲物をベルダイザーから東角猫族に変えたのか?

確かに東角猫族に魔力はありそうだけど、それでゼドケフラーは本当に成獣になれるのか?

何の確証もないのに、ムダな戦いを…!?



『ゼドケフラーはベルダイザーの持つ特殊な魔力を以って、成獣になると聞く。獣型と人型でも魔力は違うのだ。だから、俺達が敵対する必要もない。今すぐに、ここから立ち去れ!』



『ガハハハッ!食べてみなくちゃ、わからねぇえドッ!』



このゼドケフラーの幼獣は、これ以上、自分の幼獣の体が保てないとわかっているのも知れない。死ぬくらいならと、冷静さを保てなくなっているのか?

3人の東角猫族が互いを背にして死角をなくし、槍を構えた。

顔つきが、険しくなっている。明らかに倒しにかかるつもりだ。



…。



そうか。

3人目の東角猫族は、俺に力を宿してくれた東角猫族だったな。

きっと、あんたと仲が良かったゼドケフラーの幼獣は、この事を知らなかったんだ。

そして、事が起きた後に、この場所に来てしまった。

話をしようにも、近くにベルダイザーはいないし、戦ったゼドケフラーの幼獣は死んでしまっていた。

他の2人の東角猫族は、ゼドケフラーに襲われた事に怒っていたから、変に理由を話そうともしていなかったはず。

この光景の後、俺が前に見た場面に繋がるんだ。

もういい…。

もう、見たくない。



ああ…。



周りの景色が消えていく。



良かった。



これで、見なくて済む…。



白く続く空間。



…。



そこにいるんだろう?



俺に力を貸してくれた、東角猫族。





『…』





なあ、聞かせてくれよ。



何で、俺に力を貸してくれたんだ?



もう気づいているんだろう…。



俺。



お前達の事。



心の底では…。



嫌ってるんだぜ?

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