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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その282

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俺の言葉に、小鈴ショウレイは不思議そうな顔をして、そしてすぐにまた好戦的な顔を浮かべる。

ムダだった。こいつはハムカンデの手下、小鈴なんだ。クラファミースには戻らない。

俺は覚悟を決めて、戦うしかないんだ。

大剣は俺の斜め後側、5m先にある。いざとなったら、あの大剣を取って、やるしかない。

右手の痛みはあまり引いていかないな。

中指を動かすと、まだ結構痛い。

あの魔闘石ロワは直接叩くのは危険だ。あの魔闘石自体、別の生き物として考えないと、思わぬところからやられる。

小鈴、次はどう出るんだ?

俺は小鈴の出方を見た。

中々、攻めにこない、そう思って小鈴の顔を見た時、何故すぐに攻めてこないのか、何となくわかった様な気がした。

俺を通して、何かを見ようとしている。
記憶の片隅に、魔法の花火の事が少しでも浮かんだのか?



「小鈴、その者はお前を惑わせ、隙を衝いて命を取ろうと画策している事だろう。確固たる意思がないものには、常に死が付き纏う。お前もその様な凡人に成り下がるか、小鈴よ」



イヤなタイミングで、ハムカンデの言葉。そのおかげで、また不敵に笑う小鈴が戻ってきやがった。

もう戻りはしない。少なくとも、この街にいる限りは。

でも、お前みたいな野蛮な奴は、この街以外では生きていけないだろうな。特にお前の生まれ故郷は、受け入れてくれないだろう。



「戦うしかないんだよ、サイクロス。お前の歩む道は細い綱を渡るが如く、絶妙なバランスを要求される。突発的な不運などあってはならない…。そうだろう?」



横でいらないプレッシャーをかけてきやがるな。グラッチェリ、お前はこの小鈴を倒したら、その後はどう出るんだ。

俺を逆恨みしやがって。

メベヘだけでも恨まれていい迷惑なのに、その上、こいつまで。

2人とも古球磨ごくま族だ。変に協力されて攻撃してきたら、俺の生き残る可能性は限りなくゼロに近くなる。

例え、俺に力を宿してくれた東角猫トーニャ族がどんなに優れていたとしても。



「その手で私と戦えるのか?だははっ!無理しねえで、かんたんに死んじまえばいい…!それが一番いいだはっ!」



バカか、てめえは。利き足はまだ生きてんだぞ。そのバカげたつらを原形留めないくらいに蹴りまくってやろうか?



「おらっ!死んじまえっ!!」



小鈴が手を大きく空に掲げた。全力でぶん殴る事しか考えてねえんだな。普段の俺ならまだしも、今は動体視力も身体能力も格段に上がってんだぞ。

今は体の中のゼドケフラーの怒りも完全におさまっている。

邪魔をするものなんて、何もないんだよ。



「おらあっ!!」



ブゥウウンッ!!



「!?」



バキィッ!



「な、何だあ?」



「どうした?目でも回したのか?」



「お、お前、何をしたあ!?」



「お前の大振りの攻撃をかわしたんだよ。そして、その顔を蹴った。ただそれだけだ」



随分と怒った顔をするんだな。顔を蹴られた事が気に入らなかったのか?それとも、ご自慢のパンチだか平手打ちだかが決まらなかったからか?

だいぶこの東角猫族の人の力が体に馴染んできた。こうなれば悪いけど、俺の勝ちは目に見えている。

メルシィーニはお前をまだ母親だと期待しているみたいだ。

敵討ちのつもりだったけど、でももういい。

お前を起き上がれなくなるまで叩きのめして、次にいってやるよ。

俺がこの舞台に引きずり出したいのは。

壇上の真ん中でふんぞり返っているハムカンデ、あいつなんだから。
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