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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その270

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俺の攻撃は、小鈴ショウレイの苦し紛れの精度を失った突きをかわし、奴の胸の中心を捉えた。

その箇所には魔力を制御する魔闘石ロワがあって、俺の今の攻撃で明らかにその魔闘石に亀裂の入った感触が手のひらに残った。

ざまあみろ…!

これでお前は、これ以上魔力を蓄える事も、蓄えた魔力を放出して力を増やす事もできない。

お前は…。

もう終わりだ。



「バカな…。あり得ない、だは…!」



ズ…ンッ!



小鈴がバランスを失って片膝をつき、表情を歪めて魔闘石のある胸を押さえている。

どうだ?痛いか!?

そのまま負けを認めるのなら、お前をこの舞台から降ろしてやってもいい。

条件は1つだ。

…謝れよ。

お前が殺した…自分の子供に!

心から謝るんだ!

それ以外は、お前がこのまま闘いの舞台を降りる事を、絶対に許さないぞ!



「まさか、小鈴を追い込むとは…」



「次は儂の番だという事か?無様な小鈴はきちんと倒しておけよ?後で何をしてくるかわからんからな!?」



ハムカンデ、お前は俺を小鈴に殺させる考えに変わったんだよな?

でも、そうはならなかった。

残念だったな。

俺の体に力を宿してくれた東角猫トーニャ族のおかげだ。

この東角猫族は、恐らく他の東角猫族と一線を画すほどの力がある。

まだ十分に扱えていないけど、この小鈴に地面に膝をつかせるほどまで戦えた。

俺は。

状況によっては…。

小鈴の代わりに、今度はお前と戦ってもいいんだぞ?

ハムカンデ。

シブがお前を待っているんだよ。

あの世から、俺とお前との戦いを、今かと待ち望んでいる。






くっ…!



ゼドケフラーの怒りがまた込み上げてきやがる…。



そうだよ、パルンガもあの世で呼んでいる。

お前が余計な事しなかったら、俺はパルンガと闘わなくて済んだ…。

パルンガはおかしくはならなかったはずだ。

全て、お前のせいだ。

憎い。

お前が、憎い…!



ああっ…!



ハムカンデが、父さんに見えてくる。

ゼドケフラーの怒りが、また俺の心を支配してくる。

止めろっ!

もう、父さんとは…戦いたくない。



「ハムカンデ様を見るなよ、小僧。このメベヘと殺し合う約束が果たされておらんぞ?お前はあの夜、儂から因縁を買うたのだ、水に流す事はできんのだからな!?」



うるさい…!



うるさい!うるさい!うるさい!



ああ、体が熱くてたまらない。

ハムカンデが憎くて、たまらない…!



「つるつる赤ちゃんは引っ込んでるだはっ!まだ、私は…戦える!」



俺と戦うつもりか…?

まだ、俺と?

どうしたらいいんだ、この怒りをどうにか抑えないと…。

冷静に戦えないと、勝てる可能性が大きく下がる。



「…!?」



俺に力を宿してくれた人の記憶が…呼んでいる。

行くしかない。

このゼドケフラーの怒りから一時的にでもいい、避けられるのなら!





さあ…連れていってくれ。





さあ…。




















その記憶の中へ。
















またさっきの場所に飛んだのか?

いや、違う。

竹林に囲まれている。でもこの場所だけ少し開けていて、明るい。近くに川が流れているのが見える。

竹の笹に重なりながら明るい色をした花が何種類か咲いている。

とても景色がいい場所だ。



「どどととどっ!」



うおっ!

パルンガ!?

じゃなくて、別のゼドケフラーの幼獣。

俺の体に力を宿してくれた人と仲の良いゼドケフラーだ。

そして、俺に怒りを植えつけた張本人。

まだこの体の人が、目の前のゼドケフラーに嫌われる前の時かな?



「オデ、危なかったな!」



危なかった…?



また、俺は力を宿してくれた人の体に入って、ゼドケフラーを見ている。

目の前のゼドケフラーの言葉に、この人は頷いて返答した。

お互いにここでは死ねない、そんな事を言っているな。



「テテは、きっと大丈夫だど!」



「きっと、思ったとおりになる…!」



…。



この体の人は、お互いに、がんばろうって、そう言ってる。

片手を伸ばして、中指と薬指を横にくっつけて、その指先を親指の先と合わせて、人差し指と小指をピンと上に立てて…。

犬?

キツネ?

コンコン…だって。

キツネを手で表した。

これは俺の世界でも同じだよな。



「どど?オデの事、バカにしたど!」



この人は、冗談みたいに笑ったけど、その後に優しげな声で、立派なゼドケフラーの成獣になれる様、祈ってるよ、だって。

それを聞いて、目の前のゼドケフラーがうれしそうに笑った。

種族が違うのに、この2人は仲良しだ。

目の前のゼドケフラーの表情を見ていてわかる。とてもこの東角猫族を信頼している。

この世界でも、こういう2人はいるんだな。





「テテも、自信を持てば…きっと」



…。



そうだな、そうだよな。



俺は自信がありそうでも、本当はそんな事はない。だから、いけないんだ。

みんなを惑わせてしまうんだよ。

そして、誰も救えないし、誰も幸せになれない。

でも。

これからは、少しでも自信を持つようにしていくよ。






なあ…?







パルンガ…。









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