380 / 441
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その270
しおりを挟む
俺の攻撃は、小鈴の苦し紛れの精度を失った突きをかわし、奴の胸の中心を捉えた。
その箇所には魔力を制御する魔闘石があって、俺の今の攻撃で明らかにその魔闘石に亀裂の入った感触が手のひらに残った。
ざまあみろ…!
これでお前は、これ以上魔力を蓄える事も、蓄えた魔力を放出して力を増やす事もできない。
お前は…。
もう終わりだ。
「バカな…。あり得ない、だは…!」
ズ…ンッ!
小鈴がバランスを失って片膝をつき、表情を歪めて魔闘石のある胸を押さえている。
どうだ?痛いか!?
そのまま負けを認めるのなら、お前をこの舞台から降ろしてやってもいい。
条件は1つだ。
…謝れよ。
お前が殺した…自分の子供に!
心から謝るんだ!
それ以外は、お前がこのまま闘いの舞台を降りる事を、絶対に許さないぞ!
「まさか、小鈴を追い込むとは…」
「次は儂の番だという事か?無様な小鈴はきちんと倒しておけよ?後で何をしてくるかわからんからな!?」
ハムカンデ、お前は俺を小鈴に殺させる考えに変わったんだよな?
でも、そうはならなかった。
残念だったな。
俺の体に力を宿してくれた東角猫族のおかげだ。
この東角猫族は、恐らく他の東角猫族と一線を画すほどの力がある。
まだ十分に扱えていないけど、この小鈴に地面に膝をつかせるほどまで戦えた。
俺は。
状況によっては…。
小鈴の代わりに、今度はお前と戦ってもいいんだぞ?
ハムカンデ。
シブがお前を待っているんだよ。
あの世から、俺とお前との戦いを、今かと待ち望んでいる。
くっ…!
ゼドケフラーの怒りがまた込み上げてきやがる…。
そうだよ、パルンガもあの世で呼んでいる。
お前が余計な事しなかったら、俺はパルンガと闘わなくて済んだ…。
パルンガはおかしくはならなかったはずだ。
全て、お前のせいだ。
憎い。
お前が、憎い…!
ああっ…!
ハムカンデが、父さんに見えてくる。
ゼドケフラーの怒りが、また俺の心を支配してくる。
止めろっ!
もう、父さんとは…戦いたくない。
「ハムカンデ様を見るなよ、小僧。このメベヘと殺し合う約束が果たされておらんぞ?お前はあの夜、儂から因縁を買うたのだ、水に流す事はできんのだからな!?」
うるさい…!
うるさい!うるさい!うるさい!
ああ、体が熱くてたまらない。
ハムカンデが憎くて、たまらない…!
「つるつる赤ちゃんは引っ込んでるだはっ!まだ、私は…戦える!」
俺と戦うつもりか…?
まだ、俺と?
どうしたらいいんだ、この怒りをどうにか抑えないと…。
冷静に戦えないと、勝てる可能性が大きく下がる。
「…!?」
俺に力を宿してくれた人の記憶が…呼んでいる。
行くしかない。
このゼドケフラーの怒りから一時的にでもいい、避けられるのなら!
さあ…連れていってくれ。
さあ…。
その記憶の中へ。
またさっきの場所に飛んだのか?
いや、違う。
竹林に囲まれている。でもこの場所だけ少し開けていて、明るい。近くに川が流れているのが見える。
竹の笹に重なりながら明るい色をした花が何種類か咲いている。
とても景色がいい場所だ。
「どどととどっ!」
うおっ!
パルンガ!?
じゃなくて、別のゼドケフラーの幼獣。
俺の体に力を宿してくれた人と仲の良いゼドケフラーだ。
そして、俺に怒りを植えつけた張本人。
まだこの体の人が、目の前のゼドケフラーに嫌われる前の時かな?
「オデ、危なかったな!」
危なかった…?
また、俺は力を宿してくれた人の体に入って、ゼドケフラーを見ている。
目の前のゼドケフラーの言葉に、この人は頷いて返答した。
お互いにここでは死ねない、そんな事を言っているな。
「テテは、きっと大丈夫だど!」
「きっと、思ったとおりになる…!」
…。
この体の人は、お互いに、がんばろうって、そう言ってる。
片手を伸ばして、中指と薬指を横にくっつけて、その指先を親指の先と合わせて、人差し指と小指をピンと上に立てて…。
犬?
キツネ?
コンコン…だって。
キツネを手で表した。
これは俺の世界でも同じだよな。
「どど?オデの事、バカにしたど!」
この人は、冗談みたいに笑ったけど、その後に優しげな声で、立派なゼドケフラーの成獣になれる様、祈ってるよ、だって。
それを聞いて、目の前のゼドケフラーがうれしそうに笑った。
種族が違うのに、この2人は仲良しだ。
目の前のゼドケフラーの表情を見ていてわかる。とてもこの東角猫族を信頼している。
この世界でも、こういう2人はいるんだな。
「テテも、自信を持てば…きっと」
…。
そうだな、そうだよな。
俺は自信がありそうでも、本当はそんな事はない。だから、いけないんだ。
みんなを惑わせてしまうんだよ。
そして、誰も救えないし、誰も幸せになれない。
でも。
これからは、少しでも自信を持つようにしていくよ。
なあ…?
パルンガ…。
その箇所には魔力を制御する魔闘石があって、俺の今の攻撃で明らかにその魔闘石に亀裂の入った感触が手のひらに残った。
ざまあみろ…!
これでお前は、これ以上魔力を蓄える事も、蓄えた魔力を放出して力を増やす事もできない。
お前は…。
もう終わりだ。
「バカな…。あり得ない、だは…!」
ズ…ンッ!
小鈴がバランスを失って片膝をつき、表情を歪めて魔闘石のある胸を押さえている。
どうだ?痛いか!?
そのまま負けを認めるのなら、お前をこの舞台から降ろしてやってもいい。
条件は1つだ。
…謝れよ。
お前が殺した…自分の子供に!
心から謝るんだ!
それ以外は、お前がこのまま闘いの舞台を降りる事を、絶対に許さないぞ!
「まさか、小鈴を追い込むとは…」
「次は儂の番だという事か?無様な小鈴はきちんと倒しておけよ?後で何をしてくるかわからんからな!?」
ハムカンデ、お前は俺を小鈴に殺させる考えに変わったんだよな?
でも、そうはならなかった。
残念だったな。
俺の体に力を宿してくれた東角猫族のおかげだ。
この東角猫族は、恐らく他の東角猫族と一線を画すほどの力がある。
まだ十分に扱えていないけど、この小鈴に地面に膝をつかせるほどまで戦えた。
俺は。
状況によっては…。
小鈴の代わりに、今度はお前と戦ってもいいんだぞ?
ハムカンデ。
シブがお前を待っているんだよ。
あの世から、俺とお前との戦いを、今かと待ち望んでいる。
くっ…!
ゼドケフラーの怒りがまた込み上げてきやがる…。
そうだよ、パルンガもあの世で呼んでいる。
お前が余計な事しなかったら、俺はパルンガと闘わなくて済んだ…。
パルンガはおかしくはならなかったはずだ。
全て、お前のせいだ。
憎い。
お前が、憎い…!
ああっ…!
ハムカンデが、父さんに見えてくる。
ゼドケフラーの怒りが、また俺の心を支配してくる。
止めろっ!
もう、父さんとは…戦いたくない。
「ハムカンデ様を見るなよ、小僧。このメベヘと殺し合う約束が果たされておらんぞ?お前はあの夜、儂から因縁を買うたのだ、水に流す事はできんのだからな!?」
うるさい…!
うるさい!うるさい!うるさい!
ああ、体が熱くてたまらない。
ハムカンデが憎くて、たまらない…!
「つるつる赤ちゃんは引っ込んでるだはっ!まだ、私は…戦える!」
俺と戦うつもりか…?
まだ、俺と?
どうしたらいいんだ、この怒りをどうにか抑えないと…。
冷静に戦えないと、勝てる可能性が大きく下がる。
「…!?」
俺に力を宿してくれた人の記憶が…呼んでいる。
行くしかない。
このゼドケフラーの怒りから一時的にでもいい、避けられるのなら!
さあ…連れていってくれ。
さあ…。
その記憶の中へ。
またさっきの場所に飛んだのか?
いや、違う。
竹林に囲まれている。でもこの場所だけ少し開けていて、明るい。近くに川が流れているのが見える。
竹の笹に重なりながら明るい色をした花が何種類か咲いている。
とても景色がいい場所だ。
「どどととどっ!」
うおっ!
パルンガ!?
じゃなくて、別のゼドケフラーの幼獣。
俺の体に力を宿してくれた人と仲の良いゼドケフラーだ。
そして、俺に怒りを植えつけた張本人。
まだこの体の人が、目の前のゼドケフラーに嫌われる前の時かな?
「オデ、危なかったな!」
危なかった…?
また、俺は力を宿してくれた人の体に入って、ゼドケフラーを見ている。
目の前のゼドケフラーの言葉に、この人は頷いて返答した。
お互いにここでは死ねない、そんな事を言っているな。
「テテは、きっと大丈夫だど!」
「きっと、思ったとおりになる…!」
…。
この体の人は、お互いに、がんばろうって、そう言ってる。
片手を伸ばして、中指と薬指を横にくっつけて、その指先を親指の先と合わせて、人差し指と小指をピンと上に立てて…。
犬?
キツネ?
コンコン…だって。
キツネを手で表した。
これは俺の世界でも同じだよな。
「どど?オデの事、バカにしたど!」
この人は、冗談みたいに笑ったけど、その後に優しげな声で、立派なゼドケフラーの成獣になれる様、祈ってるよ、だって。
それを聞いて、目の前のゼドケフラーがうれしそうに笑った。
種族が違うのに、この2人は仲良しだ。
目の前のゼドケフラーの表情を見ていてわかる。とてもこの東角猫族を信頼している。
この世界でも、こういう2人はいるんだな。
「テテも、自信を持てば…きっと」
…。
そうだな、そうだよな。
俺は自信がありそうでも、本当はそんな事はない。だから、いけないんだ。
みんなを惑わせてしまうんだよ。
そして、誰も救えないし、誰も幸せになれない。
でも。
これからは、少しでも自信を持つようにしていくよ。
なあ…?
パルンガ…。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する
竹井ゴールド
ファンタジー
スキル授与の日、【殺虫スプレー】という訳の分からないスキルを授与された貧乏男爵の令息アラン・ザクであるオレは前世の大園耕作の記憶を思い出す。
その後、「ウチは貧乏なんだ。有益なスキルでもない三男をウチに置いておく余裕はない。籍はこちらで抜いておく。今後は平民として生きるように」と口減らしの為に死んだ母親の実家の商家へと養子に出されるが、それは前世の記憶を得たオレからすれば渡りに船だった。
貧乏男爵家なんぞに未来はない。
この【殺虫スプレー】で、いや、あえてここはかっこよくファンタジー風に言い直そう。
【虫系モンスター専用即死近距離噴射ガス】と。
これを使って成り上がってやる。
そう心に決めてオレは母方の実家へと向かうフリをして貧乏男爵家から旅立ったのだった。
異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!
本条蒼依
ファンタジー
主人公 山道賢治(やまみちけんじ)の通う学校で虐めが横行
そのいじめを止めようと口を出した瞬間反対に殴られ、後頭部を打ち
死亡。そして地球の女神に呼ばれもう一つの地球(ガイアース)剣と魔法の世界
異世界転移し異世界で自由に楽しく生きる物語。
ゆっくり楽しんで書いていけるといいなあとおもっています。
更新はとりあえず毎日PM8時で月曜日に時々休暇とさせてもおうと思っています。
星マークがついている話はエッチな話になっているので苦手な方は注意してくださいね。
魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!
三原みぱぱ
ファンタジー
ある日、剣と魔法のファンタジー世界に放り込まれた竜ヶ峰清人(リュウガミネ キヨト)。
美少女レイティアが嫁として現れる。
しかし、そんな甘い事ばかりではない。
強力な魔法が使えるのは女性のみ!
使える魔法の数がステータス(社会的地位)となる女性が強い世界。
男は守られるべき存在のこの世界で、魔法も剣も使えない主人公。
モンスターと戦えば足手まといと怒られ、街中で暴漢を止めようとするとぼこぼこにされる。
そんな俺Yoeee主人公は、金髪美少女のレイティアに恋人として認められるのか?
師匠である剣豪ムサシマル助けられながら、恋のライバル、アレックスやソフィアを交えて進む、ラブコメファンタジー!
感想、心よりお待ちしております。
完結しました!
ノベルアッププラスで「ゼロの転移者」としてリニューアル連載していますよ。
冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!
ユウ
ファンタジー
トリアノン公爵令嬢のエリーゼは秀でた才能もなく凡庸な令嬢だった。
反対に次女のマリアンヌは社交界の華で、弟のハイネは公爵家の跡継ぎとして期待されていた。
嫁ぎ先も決まらず公爵家のお荷物と言われていた最中ようやく第一王子との婚約がまとまり、その後に妹のマリアンヌの婚約が決まるも、相手はスチュアート伯爵家からだった。
華麗なる一族とまで呼ばれる一族であるが相手は伯爵家。
マリアンヌは格下に嫁ぐなんて論外だと我儘を言い、エリーゼが身代わりに嫁ぐことになった。
しかしその数か月後、妹から婚約者を寝取り略奪した最低な姉という噂が流れだしてしまい、社交界では爪はじきに合うも。
伯爵家はエリーゼを溺愛していた。
その一方でこれまで姉を踏み台にしていたマリアンヌは何をしても上手く行かず義妹とも折り合いが悪く苛立ちを抱えていた。
なのに、伯爵家で大事にされている姉を見て激怒する。
「お姉様は不幸がお似合いよ…何で幸せそうにしているのよ!」
本性を露わにして姉の幸福を妬むのだが――。
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
魔術師セナリアンの憂いごと
野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。
偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。
シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。
現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。
ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。
公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。
魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。
厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる