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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その267
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何だか一瞬、夢を見ていた様な気分だ。
いくつもの物事が頭の中で融合して、結果、意味のわからないものになる。
俺は何をしていたんだ?
目の前のバケモノ女は膝をついて、顔を紅潮させて俺を睨みつけている。
俺、確か…。
目の前の奴を、思いっきり殴った。
そうか、俺は誇闘会で、街の奴らに囲まれて、小鈴って実の子殺しのバケモノ女と闘っていたんだ。
…父さんに見えていたのは、錯覚だったのか?
「いいぞ、小鈴を倒せ!」
「バケモノを倒しちまえよ、リョウマ族!」
街のオーロフ族は東角猫族を倒して欲しがってる様だ。でも、ハムカンデは何処となく不満そうな顔をしている。
小鈴は城の天守層でハムカンデの側近みたいな扱いだもんな。それがやられたら、おもしろくはないよな。
俺は構わない。対戦相手をしばらくの間、お前に替えてくれても。
シブとパルンガにとっては、お前と戦ってくれた方がうれしいだろうからな。
「小鈴、相手を見くびるな…。そのリョウマ族は少し毛並みが違う様だ。動きをよく見定めよ」
「だははっ!ハムカンデ様、心配いらねえよ。こんな小せえ赤ちゃんに負ける訳ないだはっ!」
大きい赤ちゃんが何を言ってやがる。
見くびるなと言われた忠告も間に受けないのなら、お前は必ず後悔する。
「お前、どうやって私を殴ったんだ?空中で止まった様に見えたぞ?」
空中?
何を訳のわからない事言ってんだ?
空中で止まって殴れたら、それはもう、お前らキチガイどもの仲間入りって事だよ。
でも、俺の放った一撃がお前をそう思わせるくらいに利かせられたんなら、次の俺の攻撃はもっと恐いものになるだろうな。
…!
何だよ…?
また、俺の心の奥底から、怒りが込み上げてきやがる。
そうだ、俺は吹き矢を首に打たれたんだ。
さっきも感じていたこいつの正体。
ゼドケフラーの臭い…。
パルンガじゃない。
お前は、誰だ。
お前は…。
誰だ?
また、景色が変わる…。
雑木林の中に来たな…。
また、俺は誰かの体を通して見ている。
俺の隣りには、綺麗な耳がピンと立つ東角猫族が2人いる。
まだ幼い感じがするな。
多分、男だ。
見た感じ、中学1年くらいの年か?
「どうして…、こんな事を」
どうして、こんな事を?何の事なんだ?
言葉をしゃべったのは、隣りにいる2人じゃない。
目の前にいるゼドケフラー。
幼獣だ。
この幼獣は、俺が先ほど東角猫族の記憶の中で見た幼獣と同じだろう。目つきが同じだ。
パルンガに似ているな。
「オデ達を、敵に回すんだな…?」
オデ…。ますます、パルンガに似てやがる。
幼獣は自分の事、オデって言うんだろうな。
パルンガ限定の言葉じゃなかった訳だ。
まあ、薄々わかってはいたけど。
「敵…?ははっ!東角猫族相手に、お前達なんかが勝てる訳がないだろう?」
「どど…!?」
通訳すると、何だと?って事だろうな。
何の話題で盛り上がってるのか、いまいちわからないな。
東角猫族は丈の短めの高価そうな白い着物の上に、要所で鎧を身につけている。刀の握りに巻かれている金銀の紐が輝いているな。
金持ちとしか思えない。
顔立ちも男に言うのもおかしいけど、妙に綺麗だ。
金だか銀だかよくわからない色の長いまつ毛が、瞬きすると不思議な色気を見せる。
俺もこの世界に転生する時に、こいつら東角猫族の体に生まれたかったな。
「どうした?そんなに睨んだって、状況は変わらないぞ…」
性格は傲慢で悪そうな感じだけどな。
東角猫族は確か、元々貴族階級か?
ティデだったか、そんな事を言っていた様な気がする。
ゼドケフラーは東角猫族に言われて落ち込んでるな。
…!?
ゼドケフラーの落とした視線をたどると、草の中で倒れている他のゼドケフラーの幼獣がいる。
そうか。
この倒れているゼドケフラーの事を言ってるのか。
「オデ達は、東角猫族を助けてあげたのに…」
「ふぅん?お前には、助けてもらった事はないけどな。その必要がないからさ」
隣りの東角猫族が言った事に対して、俺が今、体の中に入っている人が、何か言ったな。
言葉を控えろ、と。
何か誤解があるのか?
「どうかしてるぞ。こんな頭がおかしそうな奴と一緒にいても、何の得にもならないさ」
「そうだ、カダルドの言う通りだ。こんな奴とはもう、口を利くな」
もしかして、今俺が入っている体の人は、さっき別の景色に飛んだ時に入った同じ東角猫族か?
そうだよな。景色が飛んだ時は、大体、俺の過去か、俺に力を宿してくれた人の過去に飛ぶから。
それなら、目の前のゼドケフラーとは仲良しなはず。
しかし、東角猫族は、オーロフ族だけじゃなく、他の種族も見下していたのかな?
今は東角猫族とオーロフ族は立場が逆転してるみたいだけど。
「…大嫌いだ」
地面に横たわって微動だにしないゼドケフラーは、多分死んでいる。
ここにいる東角猫族が殺したのなら、もう仲直りなんかできないだろう。
目の前にいたゼドケフラーは、怒りで体を震わせながら去っていった。
それを見て、2人の東角猫族は笑っている。
ただ1人の東角猫族を除いて。
俺が今、体に入っている東角猫族の心が伝わってくる。
とても悲しい。
もう、関係が戻るはない、と。
このゼドケフラーの死は、どういう理由があったんだろう?
いくつもの物事が頭の中で融合して、結果、意味のわからないものになる。
俺は何をしていたんだ?
目の前のバケモノ女は膝をついて、顔を紅潮させて俺を睨みつけている。
俺、確か…。
目の前の奴を、思いっきり殴った。
そうか、俺は誇闘会で、街の奴らに囲まれて、小鈴って実の子殺しのバケモノ女と闘っていたんだ。
…父さんに見えていたのは、錯覚だったのか?
「いいぞ、小鈴を倒せ!」
「バケモノを倒しちまえよ、リョウマ族!」
街のオーロフ族は東角猫族を倒して欲しがってる様だ。でも、ハムカンデは何処となく不満そうな顔をしている。
小鈴は城の天守層でハムカンデの側近みたいな扱いだもんな。それがやられたら、おもしろくはないよな。
俺は構わない。対戦相手をしばらくの間、お前に替えてくれても。
シブとパルンガにとっては、お前と戦ってくれた方がうれしいだろうからな。
「小鈴、相手を見くびるな…。そのリョウマ族は少し毛並みが違う様だ。動きをよく見定めよ」
「だははっ!ハムカンデ様、心配いらねえよ。こんな小せえ赤ちゃんに負ける訳ないだはっ!」
大きい赤ちゃんが何を言ってやがる。
見くびるなと言われた忠告も間に受けないのなら、お前は必ず後悔する。
「お前、どうやって私を殴ったんだ?空中で止まった様に見えたぞ?」
空中?
何を訳のわからない事言ってんだ?
空中で止まって殴れたら、それはもう、お前らキチガイどもの仲間入りって事だよ。
でも、俺の放った一撃がお前をそう思わせるくらいに利かせられたんなら、次の俺の攻撃はもっと恐いものになるだろうな。
…!
何だよ…?
また、俺の心の奥底から、怒りが込み上げてきやがる。
そうだ、俺は吹き矢を首に打たれたんだ。
さっきも感じていたこいつの正体。
ゼドケフラーの臭い…。
パルンガじゃない。
お前は、誰だ。
お前は…。
誰だ?
また、景色が変わる…。
雑木林の中に来たな…。
また、俺は誰かの体を通して見ている。
俺の隣りには、綺麗な耳がピンと立つ東角猫族が2人いる。
まだ幼い感じがするな。
多分、男だ。
見た感じ、中学1年くらいの年か?
「どうして…、こんな事を」
どうして、こんな事を?何の事なんだ?
言葉をしゃべったのは、隣りにいる2人じゃない。
目の前にいるゼドケフラー。
幼獣だ。
この幼獣は、俺が先ほど東角猫族の記憶の中で見た幼獣と同じだろう。目つきが同じだ。
パルンガに似ているな。
「オデ達を、敵に回すんだな…?」
オデ…。ますます、パルンガに似てやがる。
幼獣は自分の事、オデって言うんだろうな。
パルンガ限定の言葉じゃなかった訳だ。
まあ、薄々わかってはいたけど。
「敵…?ははっ!東角猫族相手に、お前達なんかが勝てる訳がないだろう?」
「どど…!?」
通訳すると、何だと?って事だろうな。
何の話題で盛り上がってるのか、いまいちわからないな。
東角猫族は丈の短めの高価そうな白い着物の上に、要所で鎧を身につけている。刀の握りに巻かれている金銀の紐が輝いているな。
金持ちとしか思えない。
顔立ちも男に言うのもおかしいけど、妙に綺麗だ。
金だか銀だかよくわからない色の長いまつ毛が、瞬きすると不思議な色気を見せる。
俺もこの世界に転生する時に、こいつら東角猫族の体に生まれたかったな。
「どうした?そんなに睨んだって、状況は変わらないぞ…」
性格は傲慢で悪そうな感じだけどな。
東角猫族は確か、元々貴族階級か?
ティデだったか、そんな事を言っていた様な気がする。
ゼドケフラーは東角猫族に言われて落ち込んでるな。
…!?
ゼドケフラーの落とした視線をたどると、草の中で倒れている他のゼドケフラーの幼獣がいる。
そうか。
この倒れているゼドケフラーの事を言ってるのか。
「オデ達は、東角猫族を助けてあげたのに…」
「ふぅん?お前には、助けてもらった事はないけどな。その必要がないからさ」
隣りの東角猫族が言った事に対して、俺が今、体の中に入っている人が、何か言ったな。
言葉を控えろ、と。
何か誤解があるのか?
「どうかしてるぞ。こんな頭がおかしそうな奴と一緒にいても、何の得にもならないさ」
「そうだ、カダルドの言う通りだ。こんな奴とはもう、口を利くな」
もしかして、今俺が入っている体の人は、さっき別の景色に飛んだ時に入った同じ東角猫族か?
そうだよな。景色が飛んだ時は、大体、俺の過去か、俺に力を宿してくれた人の過去に飛ぶから。
それなら、目の前のゼドケフラーとは仲良しなはず。
しかし、東角猫族は、オーロフ族だけじゃなく、他の種族も見下していたのかな?
今は東角猫族とオーロフ族は立場が逆転してるみたいだけど。
「…大嫌いだ」
地面に横たわって微動だにしないゼドケフラーは、多分死んでいる。
ここにいる東角猫族が殺したのなら、もう仲直りなんかできないだろう。
目の前にいたゼドケフラーは、怒りで体を震わせながら去っていった。
それを見て、2人の東角猫族は笑っている。
ただ1人の東角猫族を除いて。
俺が今、体に入っている東角猫族の心が伝わってくる。
とても悲しい。
もう、関係が戻るはない、と。
このゼドケフラーの死は、どういう理由があったんだろう?
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