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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その261

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右腕に燃え上がる紫色の炎は徐々に腕に吸い込まれていく。

その度に、俺の中で何かの記憶と力が入り込んでいく様に思えた。

御影三叉霧蔵みかげさんまたきりぞうの様に、右京の様に、誰かが俺に力を貸そうとしてくれている。

俺のこの体は、今もよくわからない。

この世界で生まれたこの体。



「うぉぉぉおっ!」



俺からの攻撃を予測して、カウンターを取ろうとして、小鈴ショウレイは腕を後ろに引いた。

俺の五感は見違える様に研ぎ澄まされた様に感じる。

小鈴が少し足を引いて地面を擦る音、呼吸の音、少し冷や汗をかいた臭い、目の動き、まるで全てがわかる様に。

さあ、戦ってやる!

自分の子を平気で殴り殺す様な、身も心もバケモノに成り果てたクソ女。

女だからって、何でも見逃してもらえると思うなよ!?



「死ねえ!小せえ赤ちゃん!!」



小鈴は待ちきれず、引いた右腕を俺目掛けて、勢いよく打ち下ろしてきた。

その拳を振り下ろす速度は、大柄な体格の割に、速い。

その拳は俺の顔を目掛けて振り下ろされ、その攻撃は当たる寸前で反れ、俺の顔の側面を通過する。

俺は置物じゃねえんだ。

今の俺には、そんな力を込めた単発の一撃は当たりはしない。



バシンッ!



「ぐあっ!がぁあっ!!」



「小鈴!武器を使え!!」



ハムカンデは近くに飾られていた槍を取って、小鈴に投げた。

どうだ、小鈴。

俺の拳は痛えか?

お前の娘は、無防備でお前に殴られて、何倍も痛くて、死んでいった。

特に、心が痛かっただろうよ。

今のお前にはわからない。

いや。

きっと、死ぬまでずっと。



「小せえ赤ちゃんの分際で!この槍でお前を穴だらけにしてやるだはッ!!」



小鈴が投げられた槍を手に取って構えた。構える姿が様になってやがる。槍で戦うスタイルがお前本来のものなのか?



「これで、俺も心置きなく大剣で戦えるぜ!」



小鈴がまた動いた!その槍の矛先の角度、俺の目を狙ってるのか?



「おらあっ!」



ビシュッ!!



「くっ!」



「おらあっ!」



ビシュッ!



「どうした、小鈴。お前の力はそんなもんか?」



「小せえからって、細かく動いて!それしか取り柄ない赤ちゃんが!」



赤ちゃんはてめえだ!

何でも衝動的に行動すればいいってもんじゃねえんだよ!?



「次はどうだはっ!?」



「!?」



槍の矛先がぶれる!

何処だ!?

次は何処を狙っている。



「だははっ!死ねえっ!!」



九鳴猫クメナ槍術、樺仙かせん突き!!」



槍の攻撃が一気に多方向に目掛けてくる!?



「くっ!?」















ん?





何だ、ここは。






竹林に囲まれた場所…。






また飛んだな。

これは、俺に力を貸してくれた人の記憶の中の景色だろう。

霧蔵も右京も同じだったからな。

全てがそうという訳じゃなかったけど。



「どとととどッ!」



うおっ!?



何だ、このブタウサギは!?

…って、おい!パルンガじゃないのか?

お前、生きていたのか!?

いや、違う…。

何となく、目の角度が少し吊り上がっている。

別のブタウサ…、ゼドケフラーだ。



「あっち!あっち側にいたど!見つけたんだど!」



だどって語尾は、ゼドケフラー全般が使うのか?随分とだせえな。

パルンガだけかと思った。

今、俺は誰かの体の中からこのゼドケフラーの幼獣を見てるんだな。

目の前のゼドケフラーの幼獣と目が合っている。

この体は、幼獣の行く場所について行ってる。

しかし、目の前のパルンガもどき。たどたどしい歩き方だな。幼獣ですけど何か?みたいな感じだ。

パルンガよりももっと幼いのかも知れない。


「どとととどッ!ほら、いたど!」



うわっ…!?



巨大なワニ野郎が二足立ちして、人の足を掴んで振り回している。

掴まれている人は死んでるのか?全く反応しない。

ワニの目の瞳孔が縦に細長い、あれを見るだけでも恐いのに…。何だ、このワニ野郎の体の大きさは。

俺が入っているこの体の人が、ワニ野郎に何か言ったな。

えと。

縄張りから出たお前達に対して、手加減はしないぞ、と言っているな。

ワニ野郎がそんな言葉を聞かず、口を開けて手に持っている人を食おうとしている。

この体の人が槍を構えたぞ。

槍使いなのか。

その槍を構えたのが気に入らなかったのか、ワニ野郎は手に持つ人を放り投げて、鼻息を荒げてこっちに向かってくる!?

そして、ワニ野郎が右手を突き出して槍を掴もうとしてきた!



うわっ!?



それを突進しながら左宙回転、ワニ野郎の手をかわしながら、回転の力を利用して槍で下からすくい上げる様にその手を払い除けた。

そして一回転した後、片足を軽くつけて、さらに同じ宙回転で回転の力を利用して、今度は槍の矛先でワニ野郎の体を下から斜めに斬りつけた!?

何て素早い連続技だ!?



「ぐぅうッ!がぁああっ!!」



ワニ野郎の斬られた傷口から緑色の血が吹き出して、ワニ野郎がもがき苦しんでいる!



「さすがだど!さすが、……だと!!」



そうだ、こんな技出せるなんて…!










「はっ!?」



いきなり戻ってきた!

攻撃も、食らう寸前だぞ!?

このままだと、小鈴の槍の技を食らう!?

見たばかりだけど、やるしかねえ!



ダッ!



くっ!?何とかかわしてくれぇっ!



グルンッ!!



「何だぁ…!?」



よし!かわせたぞっ!



「はぁあッ!」



カキィィンッ!!



「だはっ…!?」



タッ!



よし!できたぞ!?

小鈴の槍を上に払い除けた!!

でも、ここで終わりじゃねえ!



「食らえ、小鈴!!」



「何でお前がそれを…!?」




九鳴猫クメナ槍術…!」



食らえ、小鈴!!



突風芽吹斬とっぷうめぶきぎり!!」


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