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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その257

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パルンガは鼻息を荒げて、体のバランスを崩しながらも、何度も突進してきた。

もう、少しの余裕もないみたいだ。

あいつには俺がベルダイザーに見えている。

そのベルダイザーの役になりきるには、どんな感情であいつにぶつかるべきなのか、よくわからなかった。

俺はパルンガを憎んでなんかいない。

お前を倒したい訳じゃない。

でも、パルンガの向かうべき道は、ベルダイザーを倒して、成獣になる事。

もう体がもたなくて、力尽きようとしているのなら、せめて…。

俺を倒しに来い!

ただ、俺も手加減はするつもりはない。

宿敵のベルダイザーだって、実際に出くわしたら、手加減はしないだろう。

あいつを苦しみから解放してあげよう。

だから、この闘いは長引かせてはいけないんだ。

だけど、頭ではわかっていても、心の奥底は空っぽだ。

俺が剣を振れば、あいつの声が遠のいていく。

そして、最後にはその声も聞こえなくなる。

もう二度と。

お前がいなくなったら、俺はどうすればいい。

もう二度と、この世界でお前みたいなお人好しには出会えない。

お前とは姿形も違うのに、お前は俺に優しかったな。

俺は最初にお前と出会った時、俺はあの赤ちゃんみたいなバケモノからお前を助けたつもりはなかった。その逆で、赤ちゃんをお前から守るつもりで、お前に石を投げたんだ。それをお前は勘違いして、お前を助けたんだと思っていたんだよな。

だから、俺に対して優しかったのか?

ずっと。

長い間、優しかった。義理堅い奴なんだよな、パルンガは。

俺が道中、メルシィーニに襲われて殺されそうになった時、お前が俺にくれた伝言魔法でお前を呼んだら、お前は俺にベルダイザーを探してくれてるのかって聞いたよな?

探してなんかいなかった。

それをお前もわかっていたけど、お前は助けに来てくれた。

俺はお前に恩返しなんか、少しもできていない。

だから、これが俺にできる小さな恩返し。

俺がベルダイザーに見えているお前と、向き合って闘う事。

あいつと真剣に向き合わずにかわし続けて、力尽きるのを待つのは、あいつにとって屈辱以外に何ものでもないだろう。

だからと言って、何度もパルンガを斬りつけたくはない。

一瞬でけりのつく方法。

それは、全てのものの隙間がほんの一瞬、重なるその瞬間を逃さず、その隙間を高速のひと振りで掻い潜り、相手の心臓のみを斬り裂く剣技。

次元斬。

俺の覚悟が定まらないのが原因かわからないけど、剣の通り道の境界線がまだ見えてこない。

周りの声も騒がしいし、冷静になれていないせいなのかも知れない。

でも。



「ベルダイザーァアアッ!!」



パルンガの心からの叫びが、俺を少し突き動かした様な気がした。

よし…。

やろうぜ、パルンガ。

俺達、最初で最後の大喧嘩だ。



「いくぞ、パルンガ!」



パルンガは地面を蹴り、宙で回転を加えて電動ドリルみたいな突進をしてきた。

剣で受けたら強い回転で俺がバランスをス崩したり、剣が壊れ、パルンガの回転に巻き込まれてやられる可能性がある。

俺は横に飛び退く事に専念した。



「!?」



まるで予感していたかの様に、パルンガの突進が俺の避ける方向に曲がってくる。もっと、もっと遠ざかる様に避けろ!



「ガァアアアッ!!」



パルンガは俺を本気で倒しにきている。命が賭けているんだ、当然だ。



「はぁぁあっ!」



バキィインッ!



ズザザザッ…!



パルンガの回転の突進攻撃で、俺の肩の鎧をかんたんに貫いていった。

肩の端をやられたけど、打撲の様な感じの鈍い痛みで、血が出ている感じはしない。でも、アドレナリンが出ているせいでよくわからない。この後、血が流れ出すのかも知れない。

でも、指はまだ動く。

きっと大丈夫。

パルンガはバランスを崩して、体の痛みにわずかに悲鳴を上げた。

さあ、そこでくつろいでる暇はないぞ、パルンガ。

成獣を目指しているんだろ?誰もが成獣になれる訳じゃない、前にお前はそう言っていたよな?

本気で成獣になる気があるのなら。

それなら、その根性を俺に見せてみろ!



「行くぞ、神獣!!」



「ガァアア…ッ!」



「ガァアアアッ!!」



パルンガが俺を見つけると、足がもつれそうになりながら、鬼の形相で突進してきた。

俺もこの攻撃にかける。

お前の体を横切って伸びる、境界線。

今なら見える。

ここで俺が怯んだら、お前の苦しむ時間が伸びるだけだ。

だから。

俺は本気でやるぞ。

必ず…

ここで、決める!


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